SETAが語る、芸術や文学で形成された創作の原点「欲しいものは自分で作らなければ手に入らない」

SETAが語るクリエイティブの原点

SETAの根源にある聖書の存在

ーー歌詞は普段どういうときに考えるんですか?

SETA:コピーくらいのキラーワードになりそうな言葉が思いついたらそれをメモしてます。小説を書くようになってから起承転結を考えるようになったんですけど、やっぱり曲にも設計図は必要だと思うようになって、今は最初に曲のイメージを決めてから歌詞も考えるようにしてますね。物語の流れや聞き手の気持ちも想定して、大体固まったらメモから言葉を選んで。Aメロやサビの最初に持ってくる一行目が決まったら、そこから書き進めていくみたいな流れです。

ーー頭から書いていくというよりも、伝えたいものの軸を決めてから埋めていく感じですね。

SETA:例えば恋愛の曲でも、ひどい振られ方をした時はその悔しい思いをその場で書いたりしていたんですけど、それって自己満足でしかないなって思ってしまったんです。もちろん、そういう勢いで良い作品を作れる方もいると思うんですけど、私の場合は実際に歌詞を読み返しても何が言いたいのかわからない言葉の羅列だったりして。

ーー『いちじく』(1stアルバム/2017年10月発売)に入っている曲はどれも物語性を感じるというか、俯瞰的に歌詞を書かれている印象を強く受けました。

SETA:童謡みたいに大人から子どもまで口ずさめる曲って素晴らしいなって思うんです。主観的な部分を削って自分を出し切らないものだったり、距離をとることで普遍的な歌詞になるというか。年齢が上がるにつれて書きたい曲も大きく変わってきているのかもしれないです。

「サンデー」

ーー年齢を重ねることで表現の形も変化しているんですね。

SETA:いい意味で色んなことに諦めがつくようになったんです。例えば、子どものころはキラキラした芸能人に憧れることもあったんですけど、途中で気付いてしまったんです。自分にはそういう風にはなれない、でも歌は好きだから続けていきたかった。良い意味で大人になったのか、冷静な考え方になれたというか。何をやっても意味はないかもしれない、という考え方がベースにあって。でも、それってなんなんだろうと考えたときに、子どもの頃に読んだ聖書がそうだったかもしれないって思うんです。自己犠牲、何かしてあげても見返りを求めない、とか。「サンデー」や「私のせいで」という曲を聴いてもらうと私の根底にあるのも聖書だったのかなって感じてもらえるような気がします。

ーー〈もらうよりもずっと与えることができて よかったよかったよかった〉〈無駄に与え続けては 見返りは求めずに〉といった歌詞が入っている「あと一ミリ足りない人生」には今話してもらったことが反映されていますよね。

SETA:そうですね。これは、小説に出てくるアイちゃんをモチーフにした曲です。

ーー小説と音楽のつながり、みたいな部分は今後も意識されていきますか?

SETA:おそらく、意識しなくても自然と繋がってしまうのかもしれません。ずっと小説を書いていると無性に曲が書きたくなるんです。小説を書いている合間を縫って曲を作っていると、小説の匂いがする曲になりますよね、やっぱり。『東京地下2階』のおかげで「あと一ミリ足りない人生」という曲ができたように、このテンポが今の私にとってのベストな流れだなって思います。

ーー相互作用的に音楽と小説が力を与え合う関係性は面白いですね。

SETA:あと、まだまだいろんな人に出会っていきたいと思っているので、小説から曲を聴いていただいたり、その逆のパターンだったり、そういう風に輪を広げていけたらなって。

ーー小説と音楽に求めるものに違いはありますか?

SEAT:音楽は快感に近くて、小説は仕事というか、鍛錬に近いですね。向き合っている時の体感がまったく違うので、そういう違いはやっぱりありますね。

ーー小説にせよ、音楽にせよ、何も出てこないっていうタイミングはありますか?

SETA:ありますね。それこそ佐橋さんや今の事務所の方々に出会って、これから始めていこうっていうタイミングで何も書けなくなったんです。でも、その時に学んだんですけど、何か悪いこと、例えば車で事故にあった時に力むと怪我しちゃうけど、力まない方が傷が浅いこともある。だから、私も悪いことが起きた時は抗わないって決めていて。当時は色んな場所に出かけたり、インプットに時間を割いたりしたんですけど何も起きなくて、半年後くらいに「普通の女の子」という曲ができて、スランプから抜けられたんです。その時に悪いことが起きても焦らず、きっと大丈夫さっていう気持ちのまま流されていこうみたいな考え方になりました。

「普通の女の子」

ーースランプはあるんですね。

SETA:でも、今はありがたいことに小説があるから。曲ができなければ文章を書くようにしてます。

ーーでも、小説と音楽を並行して作っていると、休みとかはないんじゃないですか?

SETA:時間はたくさんあるんですよ。締め切りはあるけど、それまでの時間の使い方は自由だから。でも、音楽や小説、美術以外にほとんど趣味がなくて。大学時代は友達とSNS映えするスポットを巡る遊びみたいなことをやっていたんですけど個人的にはしっくりこなかったですし、金魚やハムスターを育ててみたり……色々やってみようとは思うんですけど、なにより友達が少ないから(笑)。一人遊びだと社会と交わらない時間が長くなっちゃうから、だから、今は友達を探せる場を探したいなって。

ーー交流の場所ですね。

SETA:昔バイトをしていた時は、周りにも夢に向かって頑張っている人がいて、そこでできた友達は今も仲良くしているんですけど、友達も私とは別の方向に少しずつ向かって歩いているわけで。輪ゴムみたいに、端と端が別の方向に行けばプチって切れちゃう時がありますしね(笑)。

ーー最後に、今後の予定や目標などを聞かせてください。

SETA:自分で自分の首を絞めるようなことでもありますが、自分を忙しくしみようと思っています。6月13日にnoteで開催するワンマンライブ『塩こしょう少々vol.2』を皮切りに、毎週水曜19時から『SETAのオールナイトニッポン i 』というインターネットラジオを始めます。あとは、約1年続けてきている、渋谷にある「コスモプラネタリウム渋谷」でのミニライブも、新しい演出にして、もっと深く関わらせてもらおうと思っています。新しいことに挑戦し続けて、いつかどこかで皆さんの目に触れられるよう頑張るのが……今年の目標です(笑)。

(取材・文=折田侑駿/写真=伊藤惇)

■ライブ情報
『塩こしょう少々vol.2』
日時:6月13日 (木)18:00 開場 18:30 開演
会場:ピース オブ ケイク イベントスペース
料金:2,160円
1部:ライブ with 佐橋佳幸、有賀啓雄
2部:「SETAのオールナイトニッポンi」生配信
チケットの詳細はこちら

■リリース情報
「あと一ミリ足りない人生」
6月13日(水)配信リリース

タワーレコード限定「あと一ミリ足りない人生」
「あと一ミリ足りない人生」MV ダウンロードコード付Tシャツ発売(特典映像付き)
詳細はこちら

SETA公式note
SETA公式Twitter

取材協力:スプラッシュ サウンド スタジオ

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