SETAが語る、芸術や文学で形成された創作の原点「欲しいものは自分で作らなければ手に入らない」

SETAが語るクリエイティブの原点

村上春樹さんは一生に一度でいいから会いたい

ーーちなみに、普段はどんな作家の本を読みますか?

SETA:私は完全にミーハーですよ。どういうの読まれます?

ーー僕は古典が好きで、谷崎潤一郎さんや三島由紀夫さんとか。

SETA:古典はあまり読まないんですけど、谷崎潤一郎さんは『卍』が好きです。本を読み始めたきっかけが中学生時代の親友で。その彼女は古典がすごい好きだったんですけど、これは親友あるあるというか、仲が良いからこそライバル心が芽生えるんですね。例えば得意教科の国語のテストがあれば点数を競ったり、小説のコンクールでどっちが賞をとれるか、みたいな。でも、だんだん彼女のテリトリーを尊重したほうが、お互いの関係性が上手くいくんじゃないかって考えるようになって。近いからこそ、一歩引いてあげたほうが良いことってありますよね。だから彼女が古典を読むなら、私はそれ以外を読もうって思うようになったんです。

ーー中学生ですごく大人な考え方ですね。

SETA:今でも古典を読むとその子の顔が思い浮かぶんですよ(笑)。でも、一番をあげるとしたら村上春樹さんですね。

ーーちなみに、何が好きですか?

SETA:……選べないですね。昔の作品が好きで、『1973年のピンボール』、『羊をめぐる冒険』とか。村上春樹さんのエッセイも読むんですけど、レコードの本とかはわからないなりに読んでますね。村上さんの好きなところは、それこそ描写に惹かれるんです。自分が興味がある部分で、特に秀でた方だったから興味を持ちはじめたのかもしれません。村上春樹さんは一生に一度でいいから会いたい人リストに入ってます。

ーー村上春樹さんは文体にも特徴がありますが、そういう部分での好き嫌いもありますか?

SETA:あります。村上春樹さんの小説はすごく描写が綺麗だから、ジブリ映画を観たような後味があるというか。文字を読んでいるのに、なんで匂いや風、自然の動きが鮮明に伝わってくるんだろうって。物語に結論が用意されているわけではないんですけど、それをちゃんとアートとして成立させていて、まるでジェットコースターに乗っているような新しい体験を感じさせてくれるところが好きですね。でも、あのスタイルは村上春樹さんにしかできないな、とは思います。

ーーそこに惹かれる人と、そうではない人が出てくるんでしょうね。

SETA:たぶんついてこれない人も出てくると思うんですけど、そこもすごいとも思います。自分の作品に見合う人を選別してるんだって私は思ってるんですけど。そのオーディションに落ちたくないから読むんです(笑)。

ーー新刊を読むこともありますか?

SETA:基本的には新刊をたくさん買います。自己啓発の本とかはあまり読まないんですけど、そこに物語があればどんなジャンルでも。小説を書くことになった時は、今どんな本が流行ってるのかをリサーチする目的もありましたね。村上春樹さんみたいな好きな作家さんは自然と追いかけますけど、それ以外はお店ごとのランキングやポップを参考にして、気になったものをランダムに読んでますね。最近だと、アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の後藤(正文)さんが書いた『凍った脳みそ』とか、三浦しをんさんの『愛なき世界』が面白かったです。

ーーなるほど。ここまで小説のお話を伺いましたが、音楽についても聞かせてください。SETAさんの歌声は楽曲によって様々な色を表現するような魅力があるなと感じました。歌を始めたきっかけは?

SETA:3歳の頃から声楽はやっていて、もともと聖歌とかを歌ってました。子どものころから目立ちたがり屋で人前で歌を歌うのが好きだったことも、今につながっていると思います。

ーー歌い方は声楽で学んだことが活きているんですね。

SETA:そうですね。ボイストレーニングよりも声楽の方が長いので、合唱団っぽい歌い方になることが多いかもしれないです。あと小田和正さんへの憧れもあって、抑揚をあまりつけない、すっと通るような声を意識して歌っています。あとは、佐橋(佳幸)さんにアレンジをしていただいているんですけど、アドバイスをもらう中で変えていくこともあります。

ーー佐橋さんとの制作はいかがですか?

SETA:音楽が好きだなって心から思える瞬間があって。佐橋さんは年齢も上だし、素晴らしいキャリアを持ったミュージシャンなんですけど、年齢や経験に関係なく同じ目線の高さで話してくれるというか。佐橋さんとは音楽を作るときは、一緒に手を繋いで歩いているような感覚で。たまに私が悪い方に引っ張ちゃうこともあるんですけど、お互いに引っ張りあって、行ったり来たりしているうちに作品が出来上がっていくことが、音楽の楽しいところだと思っていますし、そういうモノづくりが好きです。誰かの顔色を窺いながら作るのは得意じゃなくて。

ーーもともと一人で作っていたものが、今では沢山の人と関わりながら作っている。その差は大きいですよね。

SETA:やっぱり私自身も少しずつ大人になっている感覚はあります。たった一人で誰にも認められなくてもいいと思いながら作っていた時期から、少しずつみんなが手を差し伸べていただけるようになって、円がちょっとずつ大きくなってきているなと感じますね。本当に感謝してます。

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