『最後のPiece feat. シェネル & Beverly』インタビュー

SPICY CHOCOLATEがラブソングで大切にしていること シェネル&Beverlyとの制作秘話を語る

SPICY CHOCOLATE「最後のPiece feat シェネル & Beverly」

 6月4日にSPICY CHOCOLATEの新曲「最後のPiece feat シェネル & Beverly」が配信リリースされる。その10日後の6月14日には同曲に加え、新曲「どんなあなたも… feat RAY & Leola」、「ずっとマイラブ feat. HAN-KUN & TEE」と「あなたと明日も feat. ハジ→ & 宇野実彩子(AAA)」のSC Remixを収録したデジタルEPの配信もスタートする。

 日常に寄り添ったリアルなラブソングと、様々なアーティストをフィーチャリングするスタイルでシーンを疾走し続けるSPICY CHOCOLATEは、今年で結成25周年を迎える。その歩みの中にはどんな変遷があったのか。そして、彼らの存在感を後押しする独自のスタイルはどのように形作られていったのか。リーダーのKATSUYUKI a.k.a.DJ CONTROLERにこれまでの軌跡を振り返ってもらいながら、稀代のヒットメーカーである彼らのクリエイティビティの秘密と、新作にまつわる話をじっくりと聞いた。(もりひでゆき)

ハッピーエンドで終わらせたい気持ちが常にある 

――SPICY CHOCOLATEは今年で結成25周年を迎えます。

KATSUYUKI:はい。結成した当初は、まさか25年もやれるとは思っていなかったので、本当にありがたいなと思いますね。だからこそ、ここからもより良いものを残していきたいと思っています。

――活動してきた時間の中で、ご自身から生み出される音楽に何か変化はありましたか?

KATSUYUKI:かなり大きく変わってきたとは思います。僕がレゲエに魅了されたのは、そこで歌われるレベルな部分ーー「反逆」の精神からだったんですよ。だから活動の最初の頃はレベルミュージックを主にやっていました。ただ、レゲエにはもうひとつ「ラブ」な要素もあるから、そちらにも目を向けるようになっていきました。30歳を過ぎた頃かな、大切な人との別れを何度か経験したことで愛の大切さをより感じるようになり、それまでは恥ずかしくて使えなかった“愛”という言葉を使ったラブソングも作るようになったんですよね。

――今やSPICY CHOCOLATEのラブソングは多くの人たちを虜にしていますが、実際“愛”をメッセージする曲を作るようになってみて感じたことはありましたか?

KATSUYUKI:“愛”ってすごく簡単な言葉だとは思うけど、その意味はすごく深くて大事なものだなって改めて実感しました。愛の形には本当にいろいろなタイプがあるから、音楽に関しても多彩な表現ができるんですよね。

――年齢を重ねていくごとに、愛への向き合い方には広がりも生まれるでしょうしね。

KATSUYUKI:そうそう。僕にしても最初は男女間の恋愛を曲にするところからスタートしてますけど、それだけじゃないなって年々強く思うようになった。家族をはじめ、友達や仲間、上司、恩師など、愛を向ける対象は本当に様々ですからね。だから、一見男女の恋愛を描いた内容に聴こえる曲であったとしても、深く噛みしめることで幅広い視点を持って受け取ってもらえるような仕掛けをすることは昔以上に多くはなってます。

――ラブソングを作る上で大事にしているSPICY CHOCOLATEなりの流儀は他にもありますか?

KATSUYUKI:音楽と一緒に僕自身も成長させてもらっているので、そこで得た気づきを作品に込め、たくさんの人に届けることは意識していますね。その上で、間違ったことではなく、「それってやっぱ正しいことだよね」ってみなさんが思えることを形にしていきたい。テーマはもちろん、歌詞の言葉使いなんかも含めて、そこを大事にすることは自分たちにとっての大前提なんですよ。

――これまで様々なタイプのラブソングを作られてきていますけど、ドロドロした内容の曲は皆無ですもんね。失恋を描いた悲しい曲であっても、主人公はしっかり前を向いている曲が多いですし。

KATSUYUKI:曲の作りとして、できればハッピーエンドで終わらせたい気持ちは常にあって。聴き手の心に何かわだかまりのようなものを残して終わるのではなく、「いろいろあったけど良かったよね」っていう終わらせ方は意識してやっているところですね。例えば下世話なテーマの曲が瞬間的に流行ることも世の中には確かにあるんですよ。でも僕たちはそうではなく、世のため人のため、そして自分のために正しい曲を生み出し続けたいと思っている。そういう考え方になり、メジャーで「ずっと feat. HAN-KUN & TEE」(2012年リリース)を出したあたりからは、自分たちに吹く風の向きも変わったような気がしますね。僕らの曲を聴いた人たちに「ほんとに救われました」って言われることも多くなったので。

アーティストのフィーチャリングはレゲエ文化からの発想

――また、SPICY CHOCOLATEの楽曲の大きな特徴と言えば、多種多様なアーティストをフィーチャーするスタイルだと思います。レゲエをルーツとする出自でありながらも、そこにとらわれない多ジャンルの方と積極的にコラボしていく柔軟さはどう培われていったものなのでしょうか?

KATSUYUKI:そこはね、いろんなシンガーやラッパーとコンビネーションして自分だけにしかないアンセムを作るスペシャルダブプレートっていうレゲエ文化からの発想なんですよね。いかに誰も想像できない組み合わせを提示して、いかに盛り上げられるかっていう。だから僕らが今回リリースする新曲ののシェネルとBeverlyだったり、HAN-KUNとTEEだったりっていう聴き手にサプライズを感じてもらえるような組み合わせをしていくのはすごく自然なことなんです。逆に言えば、ルーツがレゲエじゃなかったらこういうスタイルにはなってなかったとは思いますね。その上でジャンルの垣根や壁を壊して、ボーダレスに音楽でひとつになりたいとも思っているので、R&Bシンガーからダンス&ボーカルグループの方まで、いろんな方々と一緒に曲作りをさせてもらっている感じで。タイミングが合えば、まだやったことのないロックや演歌の方なんかともご一緒してみたい気持ちもありますから。

――では、SPICY CHOCOLATEがフィーチャーするアーティストに共通している部分はなんだと思いますか?

KATSUYUKI:表現にブラックミュージック的な黒い部分を感じさせてくれる方が基本的には多いかなとは思います。あとは実際にライブを観せていただいて、そこで何か響くものがあった方々ですかね。

――「響くもの」とは?

KATSUYUKI:声の良さはもちろんなんですけど、やっぱり情熱ですかね。伝えたいもの、表現したいと思っていることが明確な方には惹かれますから。その上でこちらは、じゃこの人にどういう表現をしてもらったらおもしろいかなってイメージしていくので。

――SPICY CHOCOLATEは、複数のアーティスト同士を組み合わせるスタイルも含め、その方の可能性をより広げる楽曲作りを意識されている印象がありますからね。

KATSUYUKI:そうですね。例えばソロとしては表現できなかったことを、あえてSPICY CHOCOLATEではやってもらおうとか、他の方とのコンビネーションによって新たな引き出しを開けてもらおうとか、そういう狙いは常にあります。実際、「自分の活動では歌えないテーマに挑戦できました」とか「1人では絶対このキーで歌うことはなかったと思います」なんて感想をもらうことも多いですね。複数のアーティストに参加してもらうときは、そこで生まれる奇跡のコラボを提示できることが純粋に僕らもうれしいし、そこでの化学反応はきっとお客さんにも喜んでもらえるものだと思うんですよね。

――先ほど出た「ずっと feat. HAN-KUN & TEE」も斬新な組み合わせでしたもんね。

KATSUYUKI:はい。ソロの“男性×男性”で恋愛ソングを歌う曲って、それまでになかったと思うんですよ。そういった新しい挑戦ができるのはSPICY CHOCOLATEならではの醍醐味だと思います。

――次のフィーチャリング候補は常に探している感じですか?

KATSUYUKI:常にアンテナは張っています。ただ、実際にコラボが実現できるかどうかは、タイミングも含めて出会いであり、“縁”だとは思うんです。なので、今までの壮大な出会いの数々に感謝しつつ、ここからも“縁”は大切にしていきたいですよね。

――ちなみに今、コラボを狙っているアーティストはいますか?

KATSUYUKI:これはもうずっと言い続けてることではあるんですけど、松田聖子さんと福山雅治さんのコラボレーションをSPICY CHOCOLATEでやるのが夢なんですよ。無茶なことだとは自覚してますけど(笑)、でも言霊って絶対にあると思うんですよね。だから口にしていかないと実現することはないだろうなって。そう言えば、Beverlyちゃんがどこかのインタビューで「シェネルさんとコラボしてみたい」って言ってたそうなんですよ。それを僕は全然知らなかったんだけど、今回実現したわけですからね。それもやっぱり言葉の力、言霊なのかなって思いますね。

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