社会学者 古市憲寿がヒットソングから読み解く平成史 『平成ヒット avex』レビュー

古市憲寿、ヒットソングから読み解く平成史

 考えてみればエイベックス自体、平成という時代と共に歩んできた企業グループである。

 自社レーベル<avex trax>を設立したのは平成の始まった1989年。10代から20代の団塊ジュニアが消費市場を盛り上げた平成ゼロ年代にヒット曲を連発、平成10年代にはいち早くネット文化やLGBT市場に親和性の高い曲で注目を集め、平成の終わりには「PPAP」(ピコ太郎)や「U.S.A.」(DA PUMP)で社会現象を巻き起こす。

 エイベックスとは、平成そのものなのである。

 楽しみなのは、彼らが新しい時代にどんな進化を遂げていくのか。平成の31年間でCDは全盛期と衰退期を経験し、着メロ・着うたなど過渡期の文化を挟んだ後、音楽は配信とサブスクリプションが中心の時代になった。

 新曲の価値は相対的に下がり、代わりに『平成ヒット avex』に収録されたようなヒット曲は、10年後にも20年後にも、地道にファンを増やしていくのだろう。エイベックスが平成の間に築いた遺産は、そのまま令和の時代にも引き継がれる。

 その膨大なアーカイブは、これからも僕たちの応援歌になってくれるはずだ。平成のヒット曲は、それぞれの曲が呼び起こす思い出と共に、平成が終わってからも続いていく日々を支えてくれる。『平成ヒット avex』を聴きながら、そうやって未来をあれこれ考えてみるのは楽しい。

■古市憲寿(ふるいちのりとし)
1985年東京都生まれ。社会学者。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)、小説『平成くん、さようなら』(文藝春秋)などで注目される。日本学術振興会「育志賞」受賞。最新刊は『誰の味方でもありません』(新潮新書)。

■リリース情報
『平成ヒット avex』
配信中
配信限定(※全40曲):¥1,200(税込)
詳細はこちら
収録アーティスト:絢香,大塚愛,倖田來未,三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE,東京スカパラダイスオーケストラ,中村中,浜崎あゆみ,平井大,ピコ太郎,福井舞,三浦大知,矢島美容室,ロードオブメジャー,和楽器バンド, AAA, BIGBANG, BoA, DA PUMP, Dream5, E-girls, EXILE, EXILE THE SECOND, Every Little Thing, GENERATIONS from EXILE TRIBE, girl next door, globe, JAMOSA, Janne Da Arc, lecca, m-flo, May J., MEGARYU, MONKEY MAJIK, moumoon, Nissy(西島隆弘), O-ZONE, SKE48, SPEED, TRF

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