ちゃんみな、ライブで垣間見えた全身表現者としての強さ Zepp Tokyoワンマンを振り返る
ひときわオーディエンスとの一体感を生み出していたのは「Princess」。〈世界一 Microphone が似合うプリンセス〉というオーディエンスの合唱に、ちゃんみなが〈C.H.A.N.M.I.N.A みんな知ってるでしょう?〉と答える。その強い信頼関係は、新時代のロールモデルとしての彼女の姿を感じさせられるし、会場のオーディエンスの多くが女性ファンだったことの意味とも繋がるだろう。
続くMCでは「この会場に来てくれた小学校の時の担任の先生、家族、友達、本当に愛しています。そして自分が音楽をやってきたことは間違ってなかった、そのおかげでこれだけの天使がいる」と、オーディエンスに呼びかける。そして「失敗してもいい。私も沢山失敗してきたから。自分が間違ってるところにいるかもしれないって思ってる人も大丈夫。でも自分は何者かを分かって欲しい。そのための曲を歌います」という言葉に続いて「WHO ARE YOU」。彼女を取り囲むように動く5枚の鏡と、ビデオカメラによる演出で、「自分とはなにか」を歌とともにパフォーマンスでも表現していく。
そしてステージ後方中央に設えられたグランドピアノに座り、弾き語りで「PAIN IS BEAUTY」を丁寧に歌い上げ、そのまま「昔話をしようと思います」と宣言して「She's Gone」。様々なインタビューでも語られている通り、決して平坦ではなかった彼女の人生が、この流れの中で昇華されて、「人々の歌」になり、誰かの心に浸潤し、慰撫していく。そんな感触を覚えるようなドラマティックな展開だ。
黒のレオタードスーツに着替えたちゃんみなは、「BEST BOY FRIEND」で、ダンサーと共にエロティックとも言えるパフォーマンスでも魅せる。その決着となる体勢が女性上位だったことも、彼女のパーソナリティを反映しているだろうし、全身表現者としてのちゃんみなの「強さ」を感じさせる。そこからは一気呵成に「FXXKER」や「Sober」、そしてラストの「LADY」では会場の大合唱と共に、ステージを降りた。
アンコールではTシャツ姿という、これまでのステージとは一転してフレンドリーな衣装で登場したちゃんみな。その口ぶりも軽く、アーティストとしてのちゃんみなから、一個人としてのちゃんみなへ、ある意味では「降りた」ようにも感じられた。
その「降りた」彼女だから語れる言葉が、アンコールでのMCだろう。「これから暑苦しい人間になるよ」と前置きしつつ、「私がみんなに伝えたいのは、夢を持って欲しいということ。どんな人にも、夢を諦めないで欲しい」と、客席にしっかりと語りかけるちゃんみな。そして会場の一人から、「夢あるよ!」という声が上がる。「それは何?」というちゃんみなの言葉に、「ちゃんみなと一緒のステージに立つこと!」と返すオーディエンス。ちゃんみなは「待ってるよ、いつでも」と答える。その光景は、非常に美しい希望に溢れていた。
そして「私も夢が見えなくなったときがあったけど、このライブで新しい夢が出来ました。絶対にここにいる人たちみんなを幸せにしたい。だから絶対に心が汚れたくない。夢をまっすぐ追っかけて、こうなるんだよ、って教えてあげたい。だからみんなも、次のワンマンライブまでに、夢にもう一歩近づくって約束してください」と語り、会場からは大きな歓声と拍手が起きる。「みんなで手を繋いで!」という言葉から「FRIEND ZONE」、「もう一曲やっちゃおうか」と、「OVER」を披露し、ハッピーな空気に会場を包み、20曲を2時間に凝縮したタイトかつタフ、そして未来への希望を満載したちゃんみなのライブは、こうしてフィナーレを迎えた。
(文=高木 "JET" 晋一郎)