EMPiRE、YUKA EMPiRE脱退から5人体制でリスタート 『ピアス』&ライブに表れた“帝国の未来”

 以前のEMPiREのステージは、セットリストに左右されていたことは正直否めない。言ってしまえば「Buttocks beat! beat!」「EMPiRE is COMiNG」頼みだったところがあった。問答無用に盛り上がるキラーチューンをどの場面で投下するか? そこ次第でライブのテンションが決まっていたように思う。オーディエンスもそれを求めていた。9月リリースのミニアルバム『EMPiRE originals』にはライブ映えを意識した曲が用意されていたし、とくに「S.O.S」は新たにライブ定番となり得る曲だ。しかし、彼女たちが選んだのは楽曲に頼らないライブ運びだった。あえて定番を外し、表現力で勝負する……気がつけば、どんなセットリストであろうが、確固たる自信に溢れたEMPiREのステージを毎回魅せつけるようになっていた。

EMPiRE / S.O.S【NEXT EDiTiON TOUR FiNAL at マイナビBLITZ赤坂】

 毎度異なっていたのはセットリストだけではない。楽しそうな面持ちで歌っている日もあれば、スタミナが心配になるほど初っ端から飛ばしている日もあった。セットリストやイベントのカラーに合わせ、「今日はこういうライブを演ろう」といったテーマのようなものを決めて臨んでいたのだと思う。そうやって各々の力とグループとしての力を高めていったわけだが、同様に楽曲も大事に育まれていった。「MAD LOVE」を筆頭に、初期メンバー時代の『THE EMPiRE STRiKES START!!』の楽曲たちは確実に6人のものとなり、新たな息吹を吹き込まれたようにこれまでと違った表情で聴こえてくるようになった。

 そして「EMPiRE originals」。もがくように不自由な手を出し、覚醒しながら未来へと立ち向かっていく様は毎回毎回、違う変化を見せながら完成へと進んでいった。あのとき〈完全にオリジナル作りたい〉と切実に願いながらアイナ・ジ・エンド(BiSH)の振りを踊っていた6人はいま、「ピアス」で〈いざ行け!行け!行け!〉と自分たちの思うがまま、力強く舞っている。

EMPiRE / EMPiRE originals [NEXT EDiTiON TOUR FiNAL at マイナビBLITZ赤坂]

 「ピアス」のレコーディング時期は、去年の夏頃だったという。(参考:ナタリー EMPiREインタビュー)その頃はYUKA EMPiREの脱退の話は出ていなかったというのだから、「楽曲の持つ意味が大きく変わった」といちばん感じたのは、誰よりもメンバー本人たちだろう。何より変わったのは「ピアス」だけではない。脱退話が出たという昨年11月頃は、ライブが格段に良くなっていった時期と重なっているのである。

 今年1月、インフルエンザによって休養したYUKA EMPiREを除く、5人のステージを新宿LOFTで観た。昼間より様々なグループが出演していたイベントのトリを務めた彼女たちのただならぬ気迫を感じたステージだった。あのとき、あの空間だからこそ生まれたもの、ロックバンドでいう“バンドマジック”のようなものを感じた瞬間が確かにあった。誰に対してというわけではないが、観ている側ですら“勝ち”を掴んだ感覚に見舞われたのだ。もちろん脱退の事情など知る由もなく「レアな5人編成」という割り切った気持ちで観ていたのだが、違和感どころか惹きずり込まれてしまった。歌割りやフォーメーションなど、急遽変更したであろう適応力に感嘆したのだが、当人たちにとってみれば、近々来たる“5人のEMPiRE”が予定より早く来た、というところもあったはずだ。そうした複雑な思いが絡み合って、あの異様な気迫が込められたステージになっていたのかと思うと感慨深い。見方を変えれば、あのときの5人を観たからこそ、この先の5人に不安などはない。

 感情の赴くまますべてをさらけ出すように叫び、その存在はグループの支柱であるMAYU EMPiRE。屈託のない性格が飾らない表情と晴れやかな歌声に滲み出ているYU-Ki EMPiRE。どこか大人びていて一歩引いた素振りを見せながら、時にカミソリのような切れ味で斬り込んでくるMiDORiKO EMPiRE。その豊潤な声はすっかり歌唱面の顔といえるほど核となったMAHO EMPiRE。アンニュイで蠱惑的で歌でもクールなポジションを確立したMiKiNA EMPiRE。

 2019年3月4日、オリジナルメンバーであり、歌の面での存在も大きく、精神的な安心感という意味で父親ポジションと言われたYUKA EMPiREは脱退した。彼女は「ERASER HEAD」でMAYU EMPiREが書いたような“負の部分”を1人背負って去っていったのかもしれない。この度リリースされた24時間限定フリーダウンロードの新曲「SELFiSH PEOPLE」のデジタルビートに乗せて叫ぶ5人の女帝の辛辣な言葉と、感情にならない咆哮の裏に隠されたものを想像しながら、そんなことを考えてみる。これから築き上げられる帝国の未来、4月からの全国ツアーに想いを馳せて。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログTwitter

■リリース情報
EMPiRE 「SELFiSH PEOPLE」フリーダウンロード
ダウンロード期間:2019年3月4日(月)13:00 ~ 2019年3月5日(火)12:59

■ライブ情報
NEW EMPiRE TOUR
1 2019年4月21日(日) 福岡 DRUM SON
2 2019年4月27日(土) 広島 HIROSHIMA BACK BEAT
3 2019年5月3日(金・祝) 大阪 OSAKA MUSE
4 2019年5月5日(日) 仙台 enn2nd
5 2019年5月12日(日) 名古屋 RAD HALL
6 2019年5月18日(土) 札幌 札幌KLUB COUNTER ACTION
7 2019年5月19日(日) 札幌 札幌KLUB COUNTER ACTION
8 2019年6月9日(日) 東京 SHINJUKU BLAZE

・EMPiRE CORE先着先行:3月4日(月)22:00 〜 3月5日(火)22:00
・WACK FAMiLY CLUB先着先行:3月5日(火)22:00 〜 3月6日(水)22:00
・EMPiRE CORE/WACK FAMiLY CLUB抽選先行:3月7日(木)18:00 〜 3月12日(火)23:00
・EMPiRE DROiD抽選先行:3月13日(水)18:00 〜 3月18日(月)23:00
・HP抽選先行受付:3月19日(火)18:00 〜 3月25日(月)23:00
チケットはこちら

チケット一般発売日: 3月30日(土) AM10:00〜
チケット料金:4,000円

EMPiRE 公式サイト

関連記事