NormCore Fümiが語る、れるりり共作秘話と認知される難しさ「選択肢の中に入らないといけない」

NormCore、れるりりとの共作秘話

「“CRY MAX!!”は決してハッピーではない心の悲鳴」

ーーそういう部分がクリエイティブの原動力にもなってるんでしょうね。話を少し戻して、『デュエル・マスターズ』とのタイアップということで意識した部分はありますか?

Fümi 今回はエンディングテーマではあるんですけど、番組の放送が日曜の朝の時間帯ということもあって、一日の始まりという意味では、あまりしめっぽくならないほうがいいんじゃないか、というところから始まって。それと『デュエル・マスターズ』は主に少年たちが観るアニメなんですけど、個人的には少年時代、子どもに対して「よしよし」という感じで接してくる大人よりも、「おう、元気?」みたいに周りの大人に話しかけるのと同じ調子で接してくれる大人のほうが、信用できるし仲良くなりたいと思ってたんですよ。だから歌詞に関しても、「元気にいこう」とか「夢を掴もう」みたいに、子ども相手だと思ってわかりやすくするのではなくて、ちゃんと自立したものにしようと思いました。

ーー主な視聴者層である少年を子ども扱いするのではなく、ひとりの人間と捉えて歌詞を書かれたと。それで少年向け作品の歌詞には珍しく、〈エビデンス〉〈自問自答〉といったやや難しい言葉を使われてるんですね。

Fümi:そうですね。僕も子どもの頃、CASCADEの〈夕暮れの かなたから蜃気楼〜♪〉というフレーズが、よくわからないながらも頭から離れなかったですもん(TVアニメ『学校の怪談』のエンディングテーマ「Sexy Sexy」)。当時は「なんで『Sexy Sexy』なんだろう?」と思って(笑)。まあ、今回はそこまでは振り切らなかったですけど、 たったひとりでもいいので興味を持ってくれた少年が掘り下げてくれればいいなあと思って作りました。

ーー成長したあとに振り返って気づくこともありますからね。Fümiさんはこの曲の情報解禁時にTwitterで「主人公のジョーの心情を描くのは大前提として、単なる"応援歌"としてチープにならぬようにれるさんと共に一言一句気を抜かずつくりました」とつぶやかれてましたが、具体的にどんなメッセージを込めようとされたのでしょうか?

Fümi:そもそも「CRY MAX!!」というタイトルの単語が気に入ってて、前からいつか使いたいと思ってたんですよ。この言葉には、決してハッピーではない心の悲鳴みたいな意味合いを込めていて、基本的には悲しいんだけど、でも前向きに行こう、というときに使いたかったんです。で、この曲もただのハッピーソングや応援ソングではなく、〈ひどく湿った臆病風〉とか〈便利な言葉で飾られた世界〉という歌詞があるように、光ばかりじゃない世界を描きたかったので、この“CRY MAX!!”という言葉が浮かんできて。それでれるさんと話してるときにこのタイトルのことを言ったら「めっちゃいいじゃん!」と言われて、そこでサビのフレーズが出来たんですよね。だから、最初から「こういうことが伝えたい!」と思って作ったというよりかは、いろんな点と点を線で繋ぎながら逆算して書いていった感じですね。

ーーいま「心の悲鳴」とおっしゃいましたけど、Fümiさんはそのように心の限界点を迎えて叫びたくなる瞬間はある?

Fümi:それは365日感じてることかもしれませんね。世の中とか、周りの人間関係とか、すべてに対して。誰もがある程度のネガティブなパワーを感じずに生きることは無理だと思うんですけど、僕はそれを感じやすいところがあるんです。なので、その質問のアンサーとしては、僕は本当に365日が“CRY MAX!!”という感じです。

ーーでも、この曲の歌詞にもあるように〈限界突破してく ワンランク上の場所へ〉をめざす気持ちもあるわけで。この先に自分自身が充足できる瞬間が訪れると思いますか?

Fümi:うーん、どうなんだろう……ないかもしれない(笑)。まあ求めることを辞めれば、一時休憩という意味での充足はあるかもしれないですけど、表現するうえで満足することはないと思いますね。そんなに大それたことを言うわけではなくて、自分が思い描いたことを全部具現化するには、相当なネームバリューとお金がないとできないわけですから(笑)。でも、みんなそれをめざして頑張ってると思うんですよ。だから先は長そうですね。

ーー個人的にはラスサビ前の〈生まれた意味もわからぬまま 動き続けてた心臓だ どうせ1度のチャンスならば 最後まで足掻いてみようぜ〉というフレーズが好きですね。これはFümiさんの心情でもあるだろうし、この歌詞を受け取る子どもたちにとっても意味のある言葉になるんじゃないかと思って。

Fümi:ここもあえて「最後まで頑張ろう」という言葉ではなく、「足掻く」という言葉にしたので、そう捉えてもらえるとうれしいですね。「足掻く」や「悪あがき」というのは一見ダサい行為だと思うんですけど、それをしなくちゃいけないときは人生に必ずあると思うし、それを軽い感じで「足掻いてみようぜ」と言うことが、大人から子どもに伝えるカッコよさなのかなと思うので。

ーーれるりりさんに曲を作ってもらうにあたって、Fümiさんから何か具体的な注文はしたんですか?

Fümi:僕はずっとれるさんの作る曲が好きだったので、曲作りに関してはれるさんのことを全面的に信頼して、れるさんらしいものを作っていただくようにお願いしました。歌詞はまず僕があらかたを作って、それを元に一緒に作業してもらえるようにお願いして。

ーーでは、サウンドに関しては基本お任せだったんですね。

Fümi:ただ、最初のデモを上げてくれたときは、その8時間ぐらい前まで一緒に飲んでて、れるさんが「こういう曲を作ろうと思ってる」というのを口で楽器の音をマネしてずっと説明してくれたんですよ。「イントロはLRにPANして、ン、チャカ、ン、チャカ♪みたいなギターで、サビはこんな感じで」「いいっすね! じゃあ間奏はもう少しファンク感を出したいです」「ああ、わかるわかる」みたいな感じで、めっちゃテンションが上がって。その後、僕は終電で帰ったんですけど、翌日の昼頃には音源が送られてきて、本当にその会話でイメージしてた通りのものだったんです。だかられるさんが勝手に作ったものを受け入れたというよりかは、ある程度意見して理解したものが出てきた感じでした。

ーー音的にはファンキーかつジャジーなお洒落感もあって、どこかソウルやディスコっぽい雰囲気もあります。Fümiさん的にも、今こういう音楽に取り組みたい気持ちはあった?

Fümi:今がどうというわけではなく、僕は基本的に前からJamiroquaiとかジェームス・ブラウンが好きなので。この曲ではれるさんがそういう要素を日本におけるポップスとして昇華してくれているので、れるりり節があってカッコいいですよね。今回はドラムもキーボードも全部生音で録ったので楽しかったです。やっぱり生のグルーヴ感はいいなあと思って。

ーー前作の「カウントダウン」が初めて生ドラムを入れた曲だったので、今回はさらに生演奏の割合が増したと。ハモンド系のオルガンもソウル〜ファンク要素が感じられて素晴らしいです。

Fümi:あのオルガンがすごくいいんですよね。弾いてくださったスタジオミュージシャンの方がすごく上手かったんだな、というのは聴くたびに思います(笑)。オルガンって音色的に使いどころが難しいと思うんですよ。でも、この曲ではその塩梅もすごくいい感じで、れるさんの曲の構築も素晴らしいなと思いました。

ーーAメロではラップ調の歌い方をされてたり、歌唱面でも新しい挑戦があったのでは?

Fümi:Aメロの部分は、れるさんが納得するまで何十通りも録ったので、自分としては思い出深いセクションですね。今回の楽曲は、れるさんの要望に100パーセント応えられるように取り組むのがこだわりだったんです。普段れるさんがボカロの調声をしてるように、僕もれるさんの思い描く声にできたらと思って。れるさんとは一緒に音を作っていく過程で仲良くなれたので、本当に良かったです。

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