南條愛乃、TVアニメ『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』EDテーマが映す人とネコの“理想的な関係”

 あわせて、2016年5月リリースの5thシングル表題曲「ゼロイチキセキ」にも触れておきたい。同楽曲は、TVアニメ『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』エンディングテーマ。ここでも南條は作詞を務めており、ネットゲームの世界を題材に、彼女自身の経験をアニメヒロインの玉置亜子(CV:日高里菜)の目線で、恋愛的な歌詞に置き換えたとのことだ(参考:別冊CD&DLでーた My Girl vol.10”VOICE ACTRESS EDITION”)。

 また、南條は『ファイナルファンタジーXIV』などをこよなく愛する、大のゲーム好きでもある。前述の雑誌インタビューでは、自身のネットゲーム観を「いろんな職業の方がプレイしてる。リアルにどんな立場や環境であれ、みんな平等の立場で遊べるからこそ、童心に返れるというか」と語っている。人々が相対するような、リアルな空間での出来事ではないからこそ、そこで生まれる想いはより“リアル”に訴えかけてくる。それこそ、彼女が「ゼロイチキセキ」に込めたメッセージなのだろう。

 「NECOME」と「ゼロイチキセキ」は、どちらも南條のプライベートや趣味趣向があったからこそ生まれた楽曲だ。「君のとなり わたしの場所」にもまた、南條の経験を基にした描写が含まれているのかもしれない。

 アニメ『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』内では、自身の名前を“ご飯の合図”と勘違いするネコのハル。当然ながら、人間の言葉や文化を正確に理解するのは難しいだろう。それと同じく、ハルの不可解にも思える行動を見て、時には頭を悩ませる素晴。たしかに、両者の認知には少しずつズレが生じていることもある。しかし、最後には彼らが互いを想い合う関係性にあることは間違いない。実際に、素晴が寝食を忘れて仕事に打ち込む、亡き両親を思って涙した際などに、ハルはいつでも彼のことを優しく気にかけてきた。言葉なくとも、思いやりで繋がれる間柄は、人とネコの理想的な関係ではないだろうか。

【南條愛乃】ニャーシングル「君のとなり わたしの場所」MV -short ver.-

 南條が歌う「君のとなり わたしの場所」の中で、そんな素晴とハルの結びつきを端的に表したのが、冒頭の〈たよりない君だけど そばにいてあげる〉というワンフレーズだろう。この表現に類似したセリフは、これまでにアニメ内でも発されている。また、〈そっとおいた手に 伝わるなにか/ほっとするにおい うとうとする 不思議な気分よ〉なども、アニメの世界観に対して最大限に寄り添った内容だ。

 南條の愛猫家としての一面が見られるのはもちろん、過去のリリース楽曲とも地続きにある「君のとなり わたしの場所」。アニメにおける次の展開も気になるが、まずはリリースされたばかりの同楽曲をじっくりと聴き込みたい。

(文=青木皓太)

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