星野源、ライムスター宇多丸の『アトロク』に登場 独自の楽曲制作や現在の音楽シーンを語る
『POP VIRUS』を聴いた宇多丸は「(星野は)“2018年に売れた作品はこれです”ってなったときに、後になって恥ずかしくないものを作ろうとしたに違いない」と思ったとのこと。星野は「年代っていうよりも、“海外進出”ってあるじゃないですか。日本でやってることは海外では受けないとか。だから海外用に、場所なり歌詞なりアレンジを全部変えなきゃいけないっていうのはとっても古いことだと思っていて……」と国内の音楽シーンについてふれる。
続けて「音楽に関しては、国境はなく地域だと思うんですよね。“あの地域ってダサいよね”ってぐらいの感覚。そういう感覚になったときに、どこの地域に行っても自信を持って鳴らせる音楽を作りたいと思ったんですよね」「今回のアルバムは、東京という地域で育ってそのままの空気を含めた“俺の生活のアルバムなんだ”っていうものを作った。それは、生活を描くことで、どこへ行っても“これが君の生活なんだね”って思ってもらえるであろうという確信のもと作った感覚なんですよね」とアルバムへの思いも語った。
数年前、宇多丸は星野から”グルーヴィな譜割にしたくなるサビを、あえてベタにしている”という話を聞いたと明かす。宇多丸から「まだそういった意識がある?」と聞かれると、星野は「単純に歌の技術がないんですよ。音程を早く移動できないんです。ゆっくりした歌しかなかなか歌えなくて。それを楽しい曲するために、コード進行をめちゃくちゃ凝って工夫してたんですよ」と答える。さらに譜割について「めちゃくちゃ速い曲なんだけど歌の譜割は遅い/広いとか。そういうポップさが僕は好きだったりもするので、そういう曲を作ろうとは思っていたんですけど、段々そういう気持ちはなくなっていて。自分が歌える限界の範囲は、きっとカラオケでみんなが歌える範囲なのではないかっていう感覚もあるので、ポップなのではないか」と自らの考えを述べた。
番組では「Get a Feel」(『POP VIRUS』収録)を流すことに。同曲について宇多丸は「(歌詞が)ブラックミュージック論じゃないですか。そう思って書いてるんじゃないの?」と聞くと、星野は「なんとなくっす」と即答。宇多丸が「前半はブルーズについてというかさ。“黒人音楽的な情感を普遍化するとこうなる”みたいな」と歌詞についてふれると、「どちらかというと、この感覚ってどの国にもあるんじゃないかなって思いですね」と答えた。
宇多丸はまだまだ時間が足りない様子で、“ライミングの上手さにもふれたかった”と悔しさをにじませる場面も。宇多丸ならではの先鋭的な考察をふまえつつ、星野の『POP VIRUS』制作への思いや裏側も明らかとなった同放送。星野の発言の所々からは、国籍や性別を超えた普遍的な感情を歌おうとしていることがひしひしと伝わってきた。『POP VIRUS』という作品に改めて向き合いたくなる放送回だったように思う。
(文=北村奈都樹)