1stアルバム『Communication』インタビュー

“カラオケバトル”で話題 海蔵亮太が語る、シンガーとして探求した音楽を介するコミュニケーション

「原点に立ち返ることができるアルバム」

海蔵亮太「愛のカタチ」✕「ペコロスの母に会いに行く」コラボ MV

ーー今作で、個人的に一番入れたかった曲は?

海蔵:槇原敬之さんの「LOVE LETTER」です。僕が学生時代の曲で、当時どういうことがあって自分の気持ちとリンクしたのかは覚えていませんが、初めて歌でウルッときた曲です。

ーーレコーディングでも、思い出して泣いてしまったそうですけど。

海蔵:当時の感情が甦ってしまい、知らないうちに涙が溢れてしまいました。逆にそれが良かったみたいで、実際に涙を堪えて歌っているテイクが、そのまま採用されています。上手く歌うことよりも、その時の感情にまかせて歌えた曲です。

ーーデビュー曲「愛のカタチ」も収録されていて、今回新たに岡野雄一さん原作のアニメ映画『ペコロスの母に会いに行く』とのコラボMVを制作。とても心が温まるMVですね。

海蔵:『ペコロスの母に会いに行く』も「愛のカタチ」と同様に、認知症をテーマにした作品で、「愛のカタチ」という楽曲を違った角度から表現してくれるんじゃないかと思いました。アニメならではのファンタジックな表現も出てきますが、だからこそ考える余白を与えてくれるところがあって。それが、また新たな曲の魅力に繋がると思っています。例えばおじいちゃんがおばあちゃんを迎えにくるシーンがあるんですけど、それを悲しいと捉える方もいれば、「やっと一緒にいられるようになったんだな」と幸せな気持ちになる方もいらっしゃると思います。観てくださった方によっていろいろな感想が生まれるのは、アニメーションの力だなと感じました。

ーーデビュー曲として「愛のカタチ」を選んだのは、当時はどんな気持ちだったのですか?

海蔵:先ほどお話しした通り、僕の中ではカバーもオリジナルも等しく大切ですし、カラオケ世界大会で歌わせていただいて、日本語の歌詞の素晴らしさを肌で感じるきっかけになった曲です。そういう意味では、デビューにあたって「この曲を歌わないわけにはいかない」と思いました。これ以外の曲でデビューしても、「自分が納得するのかな?」という想いもありました。それに僕自身も数年前に祖父が認知症になった経験があるので、歌詞と気持ちがとてもリンクしていましたし、そういうところもあってこの曲を選んだんです。

ーー今回、再録はされていなんですね。

海蔵:していません。デビューの時の気持ちは、あの時にしか出せないもので、あのときのまま収録したいという気持ちがありました。当時は、デビュー曲なのでとにかく感謝の気持ちが大きく、「これからも大事に歌っていきます」という意思表示の気持ちも込めて歌っていて。その時の気持ちも、時間が経てば少しずつ薄れていってしまうものですが、何年か経った時にこのアルバムを聴いて、原点に立ち返ることができるものになればいいなと思いました。

ーーアルバムに収録のカバー曲で、中島みゆきさんの「銀の龍の背に乗って」も秀逸でした。

海蔵:これは、ドラマ『Dr.コトー診療所』の主題歌でそのドラマが好きだったんですけど、毎回印象的に流れていて、それで楽曲も好きになりました。それに母も中島みゆきさんのファンで、家族カラオケでよく歌っていて、僕も歌うようになりました。中島みゆきさんは声が特徴で、あの声だからこそこの曲が映えるという部分があるんです。なので今回は、カバーすることで新たな表現が生まれるんじゃないかと思って、原曲より重めのアレンジで、気合いを入れて歌うことを意識しました。

海蔵亮太 「接吻」MV

ーー歌とピアノだけの前半は、ボーカルの存在感にグッと引き込まれました。ファルセットも特徴ですね。

海蔵:地声で声を張ろうと思えば張れるんですけど、僕はファルセットを使いがちです(笑)。ファルセットや裏声って、地声で出せない音を出す時の逃げと捉えられることもありますが、そうではなく「敢えてのファルセットもあるんだぞ」って。地声でも出せるけど出さないという、大人の余裕的なものも歌の表現として出せたらいいなと思いました。それもあって最近は、敢えてファルセットを使うことがけっこうあります。

ーー「君と僕の挽歌」には、カラオケ世界大会に出た仲間が参加していて。こういうのは、心強いですね。

海蔵:「ウィ・アー・ザ・ワールド」感が、すごく出ていると思います。同じ夢を持ってカラオケ世界大会に臨んで、フィールドは違えど一緒に頑張っていきたいという気持ちがあったので、コーラスを誰にオファーするか考えた時に最初に浮かんだのがこの3人でした。無理を承知でお願いしたのですが、みんな快く引き受けてくださって、本当に自分は助けられているんだなって、この曲を通して再認識できました。また会えたことだけでもうれしくて、デュエットで一緒に出場した齊藤伶奈さんからも「また会えたね。ありがとう!」と言っていただいて。同窓会みたいな雰囲気で、みんなでワイワイしてすごく楽しいレコーディングになりました。

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