クリスマスシングル「Sally」インタビュー

LOVE PSYCHEDELICOが再確認した曲作りの面白さ「音楽を目一杯楽しまなきゃ」

 LOVE PSYCHEDELICOが、12月5日にクリスマスシングル「Sally」を配信リリースした。今作は、KUMIの結婚、妊娠、出産を経てリリースされた作品。人生の大きな出来事を経験する中で制作された今作だが、改めて音楽を作る喜びを感じる作品になったという。小野田雄が、昨年リリースされたアルバム『LOVE YOUR LOVE』から今作の制作に至るまでの経緯、これからの活動についてじっくりと話を聞いた。(編集部)

音楽はやってくるべき時にやってくる(KUMI) 

ーー今回のクリスマスシングル「Sally」はLOVE PSYCHEDELICOが大きな変化を迎えた作品だと思うんですけど、まず、現時点から昨年7月のアルバム『LOVE YOUR LOVE』を振り返っていただけますか?

NAOKI:今まで出した作品の中で、あのアルバムが一番好きかもしれない。というのも、曲が生まれてから初めて自分たちで手がけたミックス作業を経て、完成するまでに、商品化するための作為性がなく、生まれたままにアウトプットされたような感覚があるんですよ。だから、自分たちにとっては記録としての作品でもあったのかなと思いますね。

KUMI:自然体なんだよね。それでいて音楽的で豊かな作品かな。

NAOKI:その後、新メンバーで臨んだツアーにしてもエンターテインメントを提供するにも関わらず作為的なものがなく、肩の力が抜けた状態で自然と演奏することができたんですよ。それは年齢も関係しているのかもしれないし、自分たちが歩んできた道がそこに連れていってくれたのかもしれないけど、必死で追いかけなくても音楽がどこかにいってしまうことがなくなりましたね。

ーーそのお話を受けると、長く音楽活動していると出てきた音楽をそのまま作品にするのは難しいことなんでしょうか? そして、そもそも、作為性を排除した音楽が音楽本来のあるべき姿なのか? といった問いも浮かんでくるわけですが、そうした点はいかがでしょうか?

NAOKI:そこで目標を立てたり、意識してしまうと、自分たちの活動の仕方をカテゴライズしてしまうことにもなるでしょ?

KUMI:無作為的な音楽こそが素晴らしいということではなく作為的な音楽にも素晴らしいものは沢山あるよね。

NAOKI:コンセプトアルバムという言葉があるくらいですからね。

ーーということは、意図せずして、去年のLOVE PSYCHEDELICOは自然に音楽が生まれる状況にあったということになるんですかね?

KUMI:昨年のアルバムとツアーがたまたま自然に音楽が生まれる状況で単にラッキーだったということではなく、自分たちにとっては非常に大きいことだったんです。

NAOKI:というのも、初期のLOVE PSYCHEDELICOはラッキーなことに、自分たちで何かを考える前に作った音楽を受け入れる周りの状況ができあがってしまって。その後は、例えば、頑張ろうとする前に「頑張ってるね」って言われたり、自分たちと周りの状況にズレが生じて。だから、なんとか音楽が逃げないように、そのズレを合わせようと毎日を生きていたところがあったんですよ。でも、今は朝起きて、すぐ音楽を作ることもあれば、2週間ぶりに連絡を取って、作業したり、状況に関係なく、音楽が常に自分の傍にいる。そういう境地に至ったことは自分たちにとって大きなことでしたね。

KUMI:だから、さっきの質問に答えると、純粋に作為的でない音楽を作るのは以前の自分たちにとっては難しい時もあったんです。

NAOKI:振り返ると、誰も期待なんかしていないのに、期待に応えなきゃって、気負ってしまったり、話し合ったことはないけど、「このリフはイケるんじゃないか」っていうような物差しが2人の心のどこかにあった気もするし、世間に対して、カウンターパンチを打たなきゃと考えていたのかもしれないなって。でも、ここ最近、レコードを聴くのにハマっていて、過去の素晴らしい作品の数々を聴いていると、そんなことは考えずに溢れ出てしまった最高の音楽を納めたレコードが無数にあるんですよ。どうして、こういう日常的な音楽を自分たちには鳴らせないのだろうと、そういうコンプレックスが若い頃の自分たちにはあったんですけど、『LOVE YOUR LOVE』は所謂、気負いから解き放たれたアルバムなんだと思いますね。

ーーそして、昨年末にBILLBOARD LIVEでのアコースティックライブを終え、2018年元旦にKUMIさんのご結婚の発表、その後、妊娠、出産という人生における大きな出来事が続いたわけですが、LOVE PSYCHEDELICOのその後の音楽活動に関してはどのようなことを考えていましたか?

NAOKI:いつものようにすぐに音楽を作れる状況ではなかったんですけど、『LOVE YOUR LOVE』で日常的な音楽を手に入れたわけだから、慌てて何かを計画したり、作為的に動く必要もなく……。

KUMI:だから、次はどうしよう? って、考えてはいなかった。また、音楽はやってくるべき時にやってくるんだろうなという気持ちでいたら、その通りに今回の曲「Sally」ができたという。できたというか、今回はNAOKIが書いたんですけど(笑)。

ーー出産を経験したことで、音楽の捉え方や心境に変化はありますか?

KUMI:私にとっては地続きの出来事なので、変化は意識しにくかったりもするんですけど……これまでは、音楽をやる時には何かを求めていたし、何かしなきゃって思いもあったんですけど、出産を経験してみて、ああ、これでよかったんだって思ったかな(笑)。作品を作ることやコンサートをすることにはある種の達成感というものがあって、一つ生み出しては、一つ終えてという繰り返しだったように思うんですが、出産というのは我が子の存在や自分の存在が丸ごと肯定されてそれがずっと続いていく感じかな。子供が生まれてからは当然物理的には音楽に向き合う時間は減るんですけど、LOVE PSYCHEDELICOは私一人ではなくNAOKIというパートナーがいて、時間がなければないなりの音楽の作り方でやり方でやろうと。

NAOKI:例えば、「この曲のこの部分にマンドリンを入れようと思うんだけど……」っていう話になった時、どういうニュアンスの演奏、どういう録音の仕方をすればいいかをKUMIはよく分かっているから、以前だったら一緒に演奏したり、作業したりするところを俺に任せてくれたり。それによって曲の仕上がりが変わるかといったら、変わらないんですよね。

KUMI:そして、時間が取れたら、スタジオに足を運んで、確認してみると、思った通りの音が録れているし、そういう意味でストレスを感じることは今のところ全くないかな。

NAOKI:今回の曲を聴いたら、作り方は変わっても、LOVE PSYCHEDELICOの音楽になっているでしょ?

ーーNAOKIさんのソロ作品にはなっていませんし、確かにその通りですね。

KUMI:不思議だね。

LOVE PSYCHEDELICO - Sally(Short Ver.)/span>

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