『ボヘミアン・ラプソディ』『アリー/ スター誕生』の意外な共通点とレディー・ガガの歌唱力
サウンドトラックも魅力的
『アリー/ スター誕生』のサウンドトラックも爆発的ヒットを続けている。2018年10月に発売されると、全米アルバム・チャート「Billboard 200」で3週連続1位を獲得。同チャートでサウンドトラックが3週連続1位となるのは、2007年9月に4週連続で1位となったTV映画『High School Musical 2』以来、じつに11年ぶり。さらに世界83カ国のiTunesで1位を獲得するなど、『ラ・ラ・ランド』『グレイテスト・ショーマン』を上回るセールスを記録している。
『アリー/ スター誕生』のサウンドトラックはもちろん、映画のストーリーと強くリンクしている。劇中でアメリカを代表するシンガーとして描かれるジャクソンの楽曲は、オーソドックスなブルースロックが中心。制作にはガガ、クーパーに加え、ウィリー・ネルソンの息子、ルーカス・ネルソンなどが参加し、“ロックスター・ジャクソン”にふさわしい楽曲を作り上げている。
もっとも印象に残るのはやはり、アリー(ガガ)とジャクソン(クーパー)のデュエットによる「シャロウ〜『アリー/ スター誕生』愛のうた」だ。ブルージーなアコースティックギターから始まり、ストリングス、ピアノを伴いながらドラマティックに展開していくバラードナンバー。特に〈I’m off the deep end,Watch as I dive in/I’ll never meet the ground〉というサビのフレーズにおける、ガガのダイナミックな歌唱は圧巻だ。10年代前半に先鋭的なダンスチューンと奇抜な衣装、ド派手なパフォーマンスでスターダムを駆け上がったガガが、“ベタな”ロックバラードを熱唱するこの曲は、『アリー/ スター誕生』のもっとも大きなポイントのひとつだろう。また、アリーとジャクソンが出会う場面で歌われる「La Vie En Rose」、アリーがスターへの階段を駆け上がるシーンで披露されるポップなエレクトロチューン「Hair Body Face」など、シンガーとしての彼女のポテンシャルの高さを改めて実感できるのも、本作の意義だ。
全34曲のうち13曲の作詞・作曲に関わったガガにとって『アリー/ スター誕生』は、女優としての才能を証明すると同時に、アーティストとしての完全復活をアピールする作品と言えるだろう。映画、サントラの両方を鑑賞することで、『アリー/ スター誕生』の世界をさらに深く味わってほしい。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。
■作品情報
『アリー/ スター誕生 サウンドトラック』
発売中
価格:¥2,700(税込)
品番:UICS-1344
サントラの試聴はこちら