髭、“ホーム”のリキッドルームで祝った15周年 音楽への愛溢れるツアーファイナルをレポート

髭、“ホーム”で祝った15周年

 活動15周年を迎えた現在の髭が醸し出す、この独自性溢れる魅力の根源は何だろうか? そういったことを頭の中でぐるぐると考えながら、この日は彼らのツアーファイナルの地へと向かった。今年彼らが発表したオリジナルアルバム『STRAWBERRY ANNIVERSARY』、ベスト盤『STRAWBERRY TIMES』とともに、全国8都市を回ってきた秋旅の最終地点、東京でのツアーファイナルは、2018年11月23日、彼らにとっての“ホーム”ともいえる恵比寿リキッドルームで開催された。虹色に光るライトと妖艶なミラーボールの煌めきが彼らを迎え、まずは「アップデートの嵐だよ!」からスタート。今夜も髭特有といえるツインドラムの鳴りがズシズシと身体に響き、三連休最初の金曜日の夜、恵比寿に集った人々は一気にいつもの髭ワールドへと引き込まれていく。須藤寿(Vo/Gt)が「どうも〜、髭ちゃんだしー」と第一声を発し、さらに高まるオーディエンスからのハンドクラップ。さあ、今夜もパーティーを始めよう。

 『STRAWBERRY ANNIVERSARY』収録曲と、これまでのライブでもおなじみといえる「ブラッディ・マリー、気をつけろ!」「ドーナツに死す」「黒にそめろ」「ハリキリ坊やのブリティッシュ・ジョーク」などの数曲を立て続けに披露。最新曲とオールタイムベストを見事に織り交ぜながら、甘くもサイケなめくるめく髭的世界観へとオーディエンスを誘って行く。それを各々自由に受け止めるフロア。彼らのライブに集うお客さんには、真の音楽好きだと感じられる人たちが多いのもまた、この自由な空気の所以だろう。この日は、幾度となく「サンキュー」「ありがとう」という言葉を繰り返し伝えている須藤が印象的だった。それは単なるロックスター、あるいはショウビズの世界のお決まりの謝辞ではなく、振り返ればバンドにさまざまな出来事があった中での、15周年ならではの重みがずっしりと響いてくる言葉だった。また同時に、バンドとしての豊かなロックのバックグラウンドを評価し、ここまでの15年の間、彼らとともにパーティーを楽しみ続けてきた観客たちへの「これからもともに楽しもう」の意が存分に込められていたに違いない。だからこそ聴いているこちらとしても、ライブの中盤、10曲目に披露したスローでロマンチックな「せってん」などでは、彼らのようなバンドがきっちりと残り自由に活動し続けているということ自体に感謝したくもなった。

 15曲目には、彼らの15周年における代表曲ともいえる「きみの世界に花束を」。〈願い事は叶えるものさ〉という言葉がとても印象的な1曲でもある。

 「1(イチ)と5(ゴ)で、イチゴ、だからSTRAWBERRYなんだよねえ」とおどけてみせた須藤だが、今夜はまさに、苺のごとき甘酸っぱい瑞々しさを醸し出しつつ、しかも駄洒落が込められているタイトル通りの、彼らの甘さと少しのファニーさが存分に込められている幸せなアニバーサリーだ。

 曲間、「この瞬間て、本当に本当に現実?」と笑いながら幸せそうに話す須藤は、「このツアーではっきりしたのは、俺ってミュージシャンだなって。そしてふたつめの職業は、移動する人、つまり旅人です」と周年のツアーを振り返った。さらに最後に彼は「あ、もう1つ職業思い出したよ。こうやってみんなの気持ちを1つにできるってことは、魔法使いなんじゃないかって」と話し、彼らをマジシャンのようだと考えていたので、こちらとしてもさすがに驚いた。そうか、やっぱりロックのライブというのは“魔法”なのかもしれない。自由に楽しんでいるだけのつもりなのに、気持ちの一致度が半端ではない。それが髭のライブの最たる魅力だろう。

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