ナユタン星人、はるまきごはん、ピノキオピー……自らの意志が強く表れたMVを生み出すボカロP
MV(ミュージックビデオ)は、アーティストや、個々の楽曲のイメージを可視化させるために使われる映像作品だ。ネットでの活動を主とするボカロP、歌い手におけるMVも、年々花を咲かせており、いまやアーティストの世界観を印象付ける強力な武器の1つだと言っても過言ではない。初音ミクが誕生した2007年当初は、一枚絵で描かれるシンプルなMVが多かったが、いまではプロ並みのアニメーションを施したMVも生み出されるようになった。ほとんどの場合、ボカロPが絵師(イラストレーター)とタッグを組み、共同でMVを完成させるが、中には、作詞・作曲・編曲もさることながら、1人でMVの絵・動画までをも手がけるボカロPも存在する。1人でMVも含めた作品を完成させることで、自身の理想とする世界観を築き上げているのだ。今回はそんな自らの意志が強く表れているMVを生み出すボカロPを取り上げたい。
ナユタン星人
2015年7月に「アンドロメダアンドロメダ」でボカロPデビューしたナユタン星人。“地球から10の60乗光年(1那由他)離れたナユタン星に生まれた宇宙人”を自称している。2018年8月にリリースした3rdアルバム『ナユタン星からの物体Z』で、2016年、2017年と続けてリリースしたX、Y合わせて全三部作が揃った。一度耳にしたら病み付きになる中毒性あるバンドサウンドは、主に恋と宇宙がテーマ。MVには、赤・青・緑の背景にナユタン星人作の脱力感ある“アンドロメダ子”、“アンドロメダ男”の愛称で親しまれるキャラクターが登場し、主張の激しい文字が印象的な一枚絵のMVだ。ハイスペックなMVが生み出される中、あえてシンプルにみえるMVを手がける制作意図の裏側には、技巧を凝らしたアニメーションMVが作れないボカロPであってもシーンに参入できるようにという彼なりの思いが働いているという(参照:ナユタン星人『「ナユタン星からの物体Z』インタビュー/音楽ナタリー)。その理由を知れば、一枚絵がより輝き、より彼が魅力的に映ってくるだろう。
はるまきごはん
音声ファイル共有サービス・SoundCloudでVOCALOID楽曲の投稿をはじめ、2014年2月に初音ミクオリジナル楽曲「WhiteNoise」をニコニコ動画に投稿し、ボカロPとしての名を広めることとなったはるまきごはん。彼のターニングポイントは、2016年1月に投稿し、初の殿堂入りを果たした「銀河録」。同曲を皮切りに界隈で一気に注目を集める存在へと飛躍した。アンビエント寄りのエレクトロポップサウンドに、チャーミングな調声を施した初音ミクの歌声が、センセーショナルな歌詞をより一層リリカルに仕上げる。しかし、彼の最大の魅力を知る上では、MVが欠かせない。MVに描かれるのは、ファッショナブルな彩りで魅せた現実とは一線を画すバーチャルな世界。例えば、「アスター」のMVでは、オリジナルの手書きフォントを使うなど細かいこだわりも見える。新しい幻想的な価値観をもたらしてくれるのが彼のMVなのだろう。そんなはるまきごはんは12月26日にニューアルバム『ネオドリームトラベラー』をリリースする。それに付随して、コラボカフェ「ごはんキッチン 下北沢」、ミニライブ&サイン会発売記念イベントのほか、2019年3月2日には本人歌唱によるバンド編成、アニメーション映像による初のワンマンライブ『ドリーム シネマ』も開催予定だ。