『君にふれて』
安月名莉子×ボンジュール鈴木が『やがて君になる』OP曲に込めた“百合もの”特有の繊細さ
「ファンタジーの究極の形のひとつ」(ボンジュール)
――安月名さんはもともと、どんな曲を書いていたんですか?
安月名:たとえば、学生のときに書いていた曲だと、その当時感じていた「夢をあきらめたくない」という気持ちや、壁にぶつかっても負けたくない、という気持ちを歌ったものが多かったと思います。だから、今回の「君にふれて」を歌うときは、全然違う気持ちになるんです。この曲は歌っていて優しい気持ちになれる曲で、作品に寄り添って歌うことも大切にした曲で。この曲で新しいところに踏み出すことができました。デビュー曲なので、「こういう新しい発見が、これからもできるのかな。楽しみだな」と思わせてくれた曲でした。
ボンジュール:嬉しい! 安月名さんは、純粋でけがれがないですよね。歌が大好きで、歌に真摯に向き合っていることが、歌声を聴いてすぐに伝わってきました。歌い方にしても、色々考えたうえでこの表現にしているんだろうな、ということが、「君にふれて」でも手に取るように伝わってきて。曲に真っすぐ向き合ってくださって、本当に嬉しかったです。
――ボンジュールさんも、海外のアーティストからも影響を受けている人ですよね。
ボンジュール:そうですね。私はフランスに住んでいたこともあったので、映画音楽も手掛けているエミリー・シモンさんの可愛い雰囲気の曲に影響を受けたりしました。もちろん、他にも色んな音楽を聴くようにしています。
安月名:あの、ボンジュールさんは百合アニメ曲の世界では神様的な存在でもあると思うんですけど……百合に興味をもったきっかけって、どんなものだったんですか?
ボンジュール:私はもともとヨーロッパに住んでいましたけど、フランスって特に、性別をあまり気にしない、分け過ぎない雰囲気があったりしたんです。だから、「これが百合か……!」と思うような経験はなくて、「そういうこともあるよね」という、普通の感覚で接してきた感じです。百合って、ひとつの綺麗な世界観を表現できるものだと思うんですよ。
――ボンジュールさんと百合作品との繋がりというと、『ユリ熊嵐』の「あの森で待ってる」も人気が高い曲ですね。
ボンジュール:あの『ユリ熊嵐』も、百合作品という形を通して、それだけではない、すごく綺麗なものを描いていた作品ですよね。だから、私はある意味、ファンタジーの究極の形のひとつとして、「百合」というものがあると思っているんです。
安月名:私は今回の『やがて君になる』で初めて百合作品に触れたんですけど、想像していたものとは全然違って、「こんなに感情を揺さぶられるんだ……」と思いました。そのあと、『ユリ熊嵐』も観たんですけど、この作品もすごく面白かったです。
ボンジュール:百合作品って、男女の関係を描いた作品の繊細さとはまた種類が違う、別の繊細さが描かれていると思うんですよ。
安月名:確かに、私も『やがて君になる』の原作を読ませていただいたときに、百合作品だからこそ共感できる細かい気持ちの揺れがあるんだな、と思いました。女の子同士の恋愛だからこそ、「こっちの子の気持ちも分かるし、こっちの子の気持ちも分かる……」という感覚があって。侑ちゃんの気持ちにも、先輩の気持ちにも、色んな人の気持ちにも感情移入できるので、だからこそ読んでいて苦しくなりました。
ボンジュール:『やがて君になる』は、細かいシーンの描写がすごく丁寧で。ちょっとした目のキラキラから「この子は今どんなことを思っているんだろう?」と想像を掻き立てられるシーンが多くて、そこにキュンとしました。男女の恋愛だと、言葉での駆け引きが描かれることが多いと思うんですけど、百合の場合は「間」というか、言葉にならない「……」の部分をどう描くかが大事だと思うんです。普通に男女だったら言えることでも、女の子同士だと躊躇してしまうシーンがあったりするので。そこをどんな風に素敵に描いてくれるか、というところで「はぁぁぁ」となるんですよね。だから私は、百合が好きなのかも(笑)。
――もちろん、今回の『やがて君になる』は、百合作品としてだけではなくとも共感できるところがありますね。実際に触れてみて、本当に素晴らしい作品だと感じました。
安月名:私も本当に素敵な作品だと思いました。歌なしでもすごく魅力的な……。あっ、それはダメだ!!
ボンジュール:あはははは(笑)。
安月名:違うんですよ……。「私がOPテーマを歌わせていただいていることに関係なく、オススメしたい作品です」って言いたかったんです(笑)。友達が、私がOPテーマを歌っていることもあって「OPだけ観たよ!」と言ってくれたんですけど、「いい作品だから、私が歌っているのは関係なく、強制的に全部観て!!」って連絡しました。
――(笑)。改めて、「君にふれて」はお2人にとってどんな曲になりましたか?
安月名:歌っていてもそうなんですけど、この「君にふれて」は、物語が進むにつれて意味が変わっていくような曲になっていると思うんです。アニメと一緒に聴くにつれて、どんどん魅力的になっていく曲で、私自身の歌い方も、歌うたびにどんどん変わっているので、これから歌っていく中でも、どんな風に変わっていくのかすごく楽しみです。しかも、デビュー曲として歌わせていただいて、すごく大切な曲になりました。TVから自分の声が流れてきたのも初めてで……。これから頑張っていくための勇気を与えてくれた曲ですね。
ボンジュール:わぁ、嬉しい。私にとっても、これまでに書いたことがなかったタイプの、初めての曲で、安月名さんに歌ってもらえて光栄でした。実際に歌ってもらって、「こんなに素敵な曲になるんだな」って思って。安月名さんはすごく頑張り屋さんで、きっとみんなが応援したくなる人だと思うんです。だから、これからも(ベールの陰から)覗き見させていただこうと思います(笑)。改めて、本当にありがとうございました。
安月名:こちらこそありがとうございました! 嬉しくてずっと涙目です(笑)。
(取材・文=杉山仁/撮影=堀内彩香)
■リリース情報
『君にふれて』
発売:11月28日(水)
価格:¥1,296(税込)
<収録曲>
M1.「君にふれて」
作詞・作曲:ボンジュール鈴木
編曲:鈴木Daichi秀行
M2.「rise」
M3.「君にふれて」instrumental
M4.「rise」instrumental
■番組情報
『やがて君になる』(TOKYO MXほか)
<メインスタッフ>
原作:仲谷 鳰(『月刊コミック電撃大王』連載)
監督:加藤 誠
シリーズ構成・脚本:花田十輝
キャラクターデザイン:合田浩章
音楽:大島ミチル
アニメーション制作:TROYCA
<キャスト>
小糸 侑(高田憂希)
七海燈子(寿 美菜子)