沢田研二と書いてロックンロールと読むーー80年代から現在に至るまでの活動を辿る

 そして、今回のツアーである。厳密にはこのツアーからは「60代」ではなく「70代の沢田研二」なのだが、そのツアー『OLD GUYS ROCK』は何と、沢田研二とエレクトリックギター(柴山和彦)という、たった2人だけの編成で回っているのだ。

 この点、週刊新潮(11月1日号)では「手抜きに見えた」と報じられたが、ある程度の音楽ファンであれば、バンド編成の楽曲を、エレクトリックギター1本にリアレンジして演奏することに、非常に高度な技術を要することが分かると思う。

 このツアーで、さいたまスーパーアリーナ「ドタキャン事件」が起こるのだが、その前の4カ月間に、関東地区だけでも、日本武道館、NHKホール、横浜アリーナなどを回っているのだ。それに加えて、さいたまスーパーアリーナなのだから、これはさすがに無茶だったのではないか。

 以上、「1980年代の沢田研二」と「60代の沢田研二」を見てきた。これらの情報は、今後ももう少しくすぶり続けるかもしれない「ドタキャン事件」報道を見るときに、頭の中で追記してほしいと思う事柄である。

 そして「70代の沢田研二」は――

 好きなメンバーと、
 好きなかたちで、好きな曲を歌う、
 好きな表現手段=ライブにこだわり続ける。

 話を半世紀ほど過去に戻す。「20代の沢田研二」が、タイガース解散後、PYG(ピッグ)というバンドを組んで、今で言うフェスのような催しに出演したとき、「お前らはロックじゃねえ!」「お前らは芸能界の回し者だ!」という罵声を浴びたという。

 そして半世紀後、私は思うのだ――

 「好きなメンバーと、好きなかたちで、好きな曲を歌う、好きな表現手段=ライブにこだわり続ける」――これがロックじゃなくて、何をロックだというのだろう?

 沢田研二と書いて、ロックンロールと読む。

■スージー鈴木
1966年大阪府生まれの音楽評論家。著書に『イントロの法則80’s~沢田研二から大滝詠一まで』(文藝春秋)、『カセットテープ少年時代』(KADOKAWA)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)など。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる