『アイリス』インタビュー

藍井エイルが語る、『SAO』新EDテーマに込めた思い「私の人間性が詰まっている」

 約1年半の休養を経て、今年2月に活動を再開した藍井エイルが活発な動きを見せている。6月にはアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』オープニングテーマ「流星」と、ファンとの再会への思いを込めた「約束」を収録した14枚目のシングル『流星 / 約束』をリリースし、8月には活動休止前の最後のライブとなった2016年11月の日本武道館公演以来、約1年9カ月ぶりとなる日本武道館でのワンマンライブを開催した。そして、早くも復帰第2弾となる通算15枚目のシングルとして、藍井エイル×「ソード・アート・オンライン」シリーズの最強タッグによって制作された新曲『アイリス』がリリースされる。「お休みをして、自分と向き合って考えたことがあったからこそ出てくる言葉たちが並んでる」という彼女に、休養中の心境を中心に、新作に込めた思いを聞いた。(永堀アツオ)

休養が“自分”という人間性を知るきっかけに

——少し前になりますが、復帰後初のワンマンライブとなった武道館公演を終えた心境から聞かせてください。

藍井エイル(以下、藍井):リハーサルが始まる前からすごい緊張感ある中で武道館のステージに向かっていきましたね。お休み中はすごくのんびりした時間を過ごしていたので、たくさんの人に会う機会もなかなかなくて。その中に、非日常が戻ってきたというか。それまでのゆったりしていた時間とは別の空気感を再び感じることができてよかったなと思ったし、待っていてくれた人がこんなにもたくさんいたんだっていう感動もありましたし、この日の為に準備してきたことを全てやりきったなと思いました。

——1年半のお休みはご自身にとってどんな日々でした?

藍井:自分と向き合う時間だったなって思います。自分のこと、意外と自分でわかってなかったんだなって思うことが多くて。

——例えば、どんな自分に気づきました?

藍井:すごい強がりの性格だったんだなとか、自分ルールが多かったんだなとか。しかも、そのルールは勝手に自分で作ったもので、柔軟にいろんなことを考えることができてなかったんだなとか、こうでなければいけないとか、縛りがすごくいっぱいあった中で生きてたんだなって思って。あと、同時に何かをやることが死ぬほど苦手だったんだなとか。そういう些細なことから、自分という人間性を知るきっかけになりましたね。すごく貴重な時間だったし、有意義に過ごせたのかなって思います。

——世の中には藍井エイルさんと同じように体調不良や育休などで一旦、お仕事をお休みする人も多いと思います。その期間は焦ったり、不安になったりしませんでした?

藍井:めちゃめちゃ焦ったりしてましたよ。忘れられちゃうかもって思ったこともあったし。今、焦っても意味がない、焦らないほうが一番いい休養が取れるっていうことがわかってても、なかなか考え込んじゃって、眠れなくなっちゃう日もあって。そういうときは、ひとり旅で青森に行ったり、ヨガをやったり、ギターを弾いてみたりとか、いろんなことに挑戦しながら、ゆったりとした時間を過ごすようにしてましたね。仕事と離れつつも、仕事と向き合うっていう、難しいけど絶妙なバランスでいると、不安定な心も少し楽になったりしてました。ずっと仕事をしてきた人って、仕事から離れることへの恐怖がすごい強いと思うんですけど、私は仕事してる自分じゃない自分と向き合って、新しい発見ができたからこそ、形にできるものもいっぱいあったなって思ってます。ニューシングルのカップリング「Liar」の歌詞にも書きましたけど、それこそ〈必要なパズルのピースだった〉なっていうことがわかりました。

——悩みや葛藤の真っ最中にいるときはなかなかそう思えないんですよね。

藍井:そうですね。私も割り切るのはすごく難しかったし、考え込んじゃうことも多かったんですけど、そういうときはとにかく外に出ました。興味のあること、仕事以外で一番やりたいことはなんだろうって探して。仕事をしてない自分と向き合って、見つけるというか。

——仕事以外で一番やりたかったこと、楽しかったことってなんでした?

藍井:やっぱり青森旅行ですね。

——海外旅行に行こうとは思わなかった?

藍井:最初は沖縄でライセンスをとって、スキューバをしようと思ったんですよ。……これもお休み中に気づいたことですけど、私はコミュニケーション能力が高いと思ってたんですよね。でも、ある日、犬の散歩に行った時に、知らない飼い主さんに「こんばんは」って言われても、目が合わせられなくて。おどおどしながら、「こんばんは」って言いつつも、知らない人と話すのは苦手なんだって気づいて。だから、いきなり沖縄への一人旅はちょっと敷居が高いなって思って、青森の白神山地っていう世界遺産に行って、一人でのんびりしてました。温泉入って、ご飯食べて、ずっと一人、みたいな。そこから、ちょっとずつ人と会う頻度が上がっていく感じで。

——歌ってない自分に対してはどう感じてました?
 
藍井:正直、価値がなくなっちゃったかもって思ってました。ご飯を作ろうとしても、みんなは30分くらいで作れるものを、要領が悪すぎて、1時間半とかかかっちゃって。あと、収納も下手というか、綺麗に並べることができなくて。今、思えば意味不明なんですけど、収納がうまくできなくて泣いたりしてたことがあって。どうして自分は、こんなにいろんなことができないんだろうって本気で悩んだりしてましたね。あと、お休み中はお家にいる時間が長かったので、ドラマを観たりしてたんですけど、うまく聞き取れなくて。頭に入ってこないんですよ、セリフが。だから、同じ回を7〜8回観て、ようやくわかってくる感じで。これじゃ、全話見るのは無理だなって思ったりして。結果的には、日本のドラマでも字幕ありにすると理解ができたんですけど、当時は、本当にいろんなことができない自分にびっくりして。でも、そうやって欠けてる部分がいっぱいある私をいろんな人たちが支えてくれたからこそ、藍井エイルっていう形を作ることができてたんだって感じたし、改めて感謝だなって思いましたね。

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