『10』インタビュー
高岩遼が語る、ソロ作『10』の音楽的挑戦と男の生き様 「無理してでもかっこつけた方が良い」
SANABAGUN.、THE THROTTLEという2つのバンドのフロントマンにして、表現者集団・SWINGERZの座長も務める高岩遼が、待望のソロアルバム『10(テン)』を10月17日にリリースした。Tokyo Recordings所属の小島裕規ことYaffleをプロデューサーに迎え、ビッグバンド編成で最新のビートミュージックからジャズスタンダードにまで挑戦し、まさに高岩遼の集大成にして新境地と呼べる仕上がりとなった同作。468日に渡って制作されたというこのアルバムに、高岩遼はその歌声でどんな“男の生き様”を刻み込んだのか。ユニバーサル ミュージックの新社屋に悠々と現れた高岩遼は、自信に満ちた眼差しでその手応えを語り始めた。(編集部)
ソロデビューを飾って、故郷に錦を飾る
ーー待望のソロアルバム『10』について、まずはタイトルに込められた意味を教えてください。
高岩:僕は岩手県の宮古市から上京してきて音楽活動を本格的に開始したのですが、ちょうど上京して10年が経過したタイミングで、アルバムのリリースも10月になったので、その意味を込めて『10』というアルバム名にしました。
ーー高岩さんにとっては、音楽活動10周年という記念碑的な意味合いもあると。高岩さんは、SANABAGUN.をはじめ、THE THROTTLEやSWINGERZのメンバーとしても活動しています。改めて、ソロ活動の位置付けを教えてください。
高岩:僕はもともと、ジャズのボーカリストとして天下を取ってやろうと思って上京してきたのですが、東京の音楽シーンに触れて、その状況を知れば知るほど、ジャズのスタンダードだけでスターになるのは難しいかもしれないと考えるようになりました。ジャズが生まれたアメリカとは、お国柄も違えば言語も違うし、いまジャズのスタンダードを歌っても、それは焼き直しにすぎなくて、いまの日本の音楽シーンにインパクトを与えるような表現にはなりにくいと。ではどうしようかと考えて、僕の才能をフルに発揮するための器を作ることにしたんです。
その一つが、2013年にスタートしたSANABAGUN.で、僕がもともと好きだったスケートやダンス、ヒップホップの要素と、ジャズの要素を掛け合わせた表現でした。そしてもう一つ、ロックのショービジネスへの憧れもあったので、ジャズとロックを掛け合わせた表現ーーより体育会的で身体的な表現として、同年の5月からTHE THROTTLEをスタートさせました。さらに、2015年7月には13人の表現者集団としてSWINGERZを始めました。SWINGERZは「浪漫維新」というコンセプトのもと、いまの時代にかっこよく、粋に生きていくにはどうすれば良いのかを提示する集団で、現代版の桃太郎みたいな劇をやってみたり、ジャズを爆音で流しながら原宿や表参道を歩いたりしました。
そうしたグループの活動が軌道に乗るのと並行して、水面下ではジャズのスタンダードを歌い続けてきました。僕は故郷を出るときに、宮古の仲間たちに「いつか必ず、ビッグバンドのフル編成でソロデビューを飾って、故郷に錦を飾る」と約束してきたので、今回のソロ作のお話をいただいたときに、いよいよだと思いました。
ーー念願のビッグバンドでのソロデビュー作ということですね。
高岩:SANABAGUN.、THE THROTTLE、SWINGERZでも本当にやりたいことはできているので、それぞれ大事なんですけれど、ソロではより個人的な音楽性を全面に出して、ずっと寝かせていた夢を形にしたという感じです。上京当時とは違って、今は一緒にやろうって協力してくれるバンドメンバーというか、兄弟たちもいますし。高岩遼というアーティストの最前線がこの作品であることには間違いありませんが、今後はソロだけに注力するということではなく、この作品を通じて、各バンドもまた勢いに乗せることを目指しています。各バンドのフロントマンとして、ソロでもバリっとかっこつけてみせたいんですよ、男としてね。
ーーRed Bullのホームページで公開されているショートドキュメンタリー「高岩遼、おまえは誰だ?」では、高岩さんと関係性の深いアーティストや著名人が、その印象などについて語っていました。例えばデザイナーのミハラヤスヒロさんは、今回のソロデビューについて「パズルがハマった感じ」と表現していて、今のお話を聞くと、すごくしっくりくる言葉だと思いました。
高岩:あのドキュメンタリーは、自分からRed Bullに企画を出させていただいたところ、多くの方々が快く協力してくださって形になったんです。僕みたいなペーペーのために時間と手間をかけて、あんなに素敵な映像を撮ってくれたことに対しては、本当に感謝しかないですし、改めて皆さんが高岩遼という男に期待してくれているんだと実感しました。いつかスターになってやるって、これまでビッグマウスでやってきたんですが、いよいよこれはマジでやらなきゃいけないなって、良い意味でプレッシャーにもなりましたね。
ーー皆さん、口を揃えて高岩さんのことを「待ち合わせに便利な男」とも称していましたね。
高岩:誰かが言わせたとしか思えないですけれど、まあ、この顔ですからね(笑)。