岡村靖幸のアーティストコラボはなぜ最高なのか? 小出祐介、DAOKO、KICKら楽曲から考察
さて、ここで改めて思うのは、最前段でも書いたとおり、とにかく岡村靖幸は岡村靖幸なのである。メロディ感、アレンジ、ボーカル、リリックの世界観、醸し出す空気……彼が作品に参加すれば、一声歌えば、ギターをカッティングすれば、一気に「岡村ちゃん」のカラーが広がっていくというのは冒頭でも書いたとおりだ。がしかし、彼がスゴいのは、そのように岡村ちゃんをズドンと作品の中で屹立させるにも関わらず、「岡村靖幸でござい」とふんぞり返るのではなく、まさに「コラボ」として、コラボ相手とのセッションや関係性から生まれる化学反応を、作品にしっかりと落とし込む。
たとえば、絵の具を混ぜる時に少しでも黒を混ぜると、黒の強さに他の色が負けがちになってしまうが、岡村ちゃんはそれぐらい個性の強い色を持ちながらも、他の色を際立たせ、自分の色との反応を楽しむことができる。
……とんでもなく普通のことを書いてるような気がしてきたが、どんなタイプのアプローチにも対応できるような、手の広いカメレオン型のアーティストではなく、とにかく個性の塊であるにもかかわらず、そういった化学反応を楽しめる貪欲さと好奇心、そして注意深さが、岡村靖幸を岡村靖幸たらしめる理由なのだと、改めて感じさせられた。
そしてそれには、彼のミュージシャンとしてのキャリアの原点が、ソロアーティストではなく、職業作曲家という裏方から始まっていることも理由になるだろう。裏方としてアーティストをどのように輝かせる曲が書けるか、どう映えるアレンジメントができるかというチャレンジが、彼の原点にはあるだろうし、それが「アクの強さ」と「俯瞰性」という、主観と客観のバランスになっているのだろうし、それがこういったコラボの中で明確に形になり、さらに研ぎ澄ませているのではないかと思った次第。
そういった化学反応をこれからどんなアーティストと繰り広げていくのか、本当に期待しています! 岡村ちゃん!
(文=高木 “JET” 晋一郎)