平井堅「half of me」、なぜドラマ『黄昏流星群』主題歌に? 「even if」との関係性から考える
この「half of me」という曲で秀逸だと感じるのは、男の悲しみをこれ以上ないほど切なく狂おしく表現した、ボーカルとピアノのみによるアレンジだろう。どこかでもう彼女が戻ってこないことはわかっているのだが、それでも愛おしさを止められないといった平井の歌声。塩谷哲のピアノは、まるでそれをやさしく静めるかのように奏でられる。このピアノと歌だけによって生み出される緊張感は、今にも切れそうなほど細くピンと張り詰めた糸のようで、触れた途端にプツッと切れ、その瞬間から涙がとめどなくこぼれ落ちてくるんじゃないかと思うほどだ。間奏に出てくるゴスペル風のハーモニーもまた、「even if」へのオマージュが感じられて、亀田誠治の心憎い演出が冴え渡っている。シンプルだが、それゆえに隅々まで聴き応えのある楽曲だ。
20年にわたって愛され続ける「even if」と、約10年語り継がれてきた「half of me」。他にも1998年の「Love Love Love」や、2007年の「哀歌(エレジー)」など、平井のライブでは10年以上前の楽曲が歌われることは少なくない。新曲と並べてもまったく違和感がなく、むしろ時代を経たことで新鮮に聴くことができる。平井の楽曲の魅力は、時代を問わない普遍性のあるメロディと、時代ごとに形を変えて届く、聴く人のそのときにフィットする歌詞にあると思う。10年前に「half of me」を聴き、こんなに切なく狂おしくなる恋もあるんだと、そんな恋に憧れ、早くもっと大人になりたいと思った20代のリスナー。その人がさまざまな経験を経た現在、また「half of me」を聴いたら、きっと10年前にはこぼれなかった涙がこぼれ落ちるだろう。恋愛の機微を繊細に表現する巧みさがありながら、実に情感豊かな平井の歌声。心の奥底にしまってしまった想いを、そのときの痛みと共に引きずり出し、あたかも今のことのように追体験させる歌詞。リスナーは、平井が描く恋愛模様に引き込まれ、気づけば自分の経験と重ねてしまい、きっといつかの別れを思い出して、涙腺が崩壊してしまうのだ。
■榑林史章
「THE BEST☆HIT」の編集を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、これまでにインタビューした本数は、延べ4,000本以上。日本工学院専門学校ミュージックカレッジで講師も務めている。
■リリース情報
平井 堅『half of me』
配信日:10月11日(木)
レコチョク、mora、iTunesにて配信。
■ドラマ情報
フジテレビ 木曜劇場『黄昏流星群〜人生折り返し、恋をした〜』
10月11日スタート 毎週木曜よる10時〜10時54分(※初回は15分拡大)
出演:佐々木蔵之介、中山美穂、藤井流星(ジャニーズWEST)、石川恋/礼二(中川家)/八木亜希子、小野武彦、黒木瞳 ほか
原作:弘兼憲史『黄昏流星群』(小学館『ビッグコミックオリジナル』連載中)
脚本:浅野妙子
主題歌:平井 堅「half of me」(アリオラジャパン)
音楽:得田真裕
プロデュース:高田雄貴
演出:平野 眞、林 徹、森脇智延
■平井 堅ライブ情報
『Ken’s Bar 20th Anniversary Special !! vol.3』
料金:指定席(1ドリンク付)8,300円(税込)
※5歳以下入場不可/6歳以上チケット必要
一般発売日:10月27日(土)
11月23日(金・祝)北海道・北海きたえーる
開場16:30/開演18:00
12月2日(日)福岡県・マリンメッセ福岡
開場16:30/開演18:00
12月8日(土)広島県・広島グリーンアリーナ
開場16:30/開演18:00
12月15日(土)宮城県・セキスイハイムスーパーアリーナ
開場16:30/開演18:00
12月23日(日・祝)、24日(月・休)神奈川県・横浜アリーナ
開場16:30/開演18:00
■関連リンク
平井 堅 オフィシャルサイト