キーパーソンが語る「音楽ビジネスのこれから」 第11回
FM802 栗花落 光社長が語る、“クラスメディア”としてのFMラジオと音楽の可能性
「時代の空気を適切に吸収しながら、ラジオも変化していくべき」
ーーでは、他社やインターネットサービスとの連携についても伺います。『MINAMI WHEEL』は2017年から「Eggs プロジェクト」(ドコモ・タワーレコード・レコチョクによるインディーズ及び新人アーティストの活動を支援するプロジェクト)と連携していますが、タッグを組むようになったきっかけを聞かせてください。
栗花落:「新しいアーティストを発掘していこう」という考え方が一緒だったこともあって、3年前より「Eggs」さんにはFM802の番組『ROCK KIDS』の提供をしていただき、そこからご縁が始まりました。
ーー『ROCK KIDS』ではEggs登録アーティストの楽曲紹介も行っていますよね。
栗花落:『ROCK KIDS』は徹底的に高校生・大学生をターゲットにしていこうという番組で、これから出てくる若手・新人アーティストにフォーカスを当てています。「Eggs」のコンセプトと非常に近く、紹介するEggs登録アーティストもリスナーのニーズに合致しているかと思うので、かなりいい関係が構築できているのではないでしょうか。
ーーリスナーとラジオ、ひいてはアーティストを繋ぐという意味で、今は「Web」や「アプリ」が大きなキーになっています。その点についてどのようにお考えですか。
栗花落:インターネットが出てきた時に、FM802の戦略にとって、ものすごく大きな武器になったんですよ。インターネットというのは双方向でコミュニケーションを深められたり、ビジュアルを使えたり、ユーザー側の積極的なアプローチを生んだりしますよね。そういったネットの素晴らしい部分とFM802が持つクラスメディアとしての特長には高い親和性があったんです。だから実は、radikoが配信開始されるずっと前にFM802では、インターネット放送を一度やっているんですよ。
ーーそれは初耳でした。
栗花落:もう15年くらい前になりますかね。コマーシャルの権利関係でいくつかの問題があったため半年足らずで配信をストップしてしまいましたが、それくらい早くから、インターネットは「競合」ではなく、「ラジオを補完してくれるもの」と捉えていました。そういう新しいものを吸収しながら、今の時代に合うコンテンツメディアになっていかないと、ラジオはとっくに終わってしまいますよね。
ーー早くからラジオとインターネットに親和性に着目していたのですね。
栗花落:「ながらメディア」というのは、ラジオのストロングポイントなんですよ。何かをしながら聴ける……そういうことは昔から「カーラジオ」として親しまれてきましたし、今はラジオを聴きながらネットサーフィンする時代ですよね。その「ながらメディア」としての個性が、今のラジオを支えている大きなポイントだと思います。
ーー新しいものを吸収するという意味で、最近ではレコチョクが運営する「WIZY」との連携でチケット販売なども行っていますね。
栗花落:新しいサービスについては、どんどんコラボレーションさせてもらいたいと思います。その上で大事なのは、システムや機能以前に「人」なんですよね。クラウドファンディングも似ていると思うんです。思いを同じにしている人が集まって、何か一つのものをつくるとか、一つのものを生み出すとか、今はデジタルの時代ですけど、信頼感を持った人同士が何かをやることで、システムやインフラを超えた化学反応をもっと起こしていけるところもあると思うので、さらに結果を出していけたらいいですね。
ーーそれでは最後に、FM802としての今後の展開をお聞かせください。
栗花落:音楽でいうとレコードの良さが見直されていたり、映画を観ていても『カメラを止めるな!』みたいな極端にアナログな手法で撮られた低予算の作品が大ヒットしていたりもします。変わってはいけないもの・変わらなければいけないものの線引きを明確にした上で、新しいテクノロジー・時代の空気を適切に吸収しながら、ラジオも変化していくべきだと私は考えます。
(取材=中村拓海/構成=こじへい/撮影=竹内洋平)
■イベント情報
『Eggs presents FM802 MINAMI WHEEL 2018 ~20th Anniversary~』
2018年10月6日(土)~8日(祝・月)
会場:大阪 ミナミエリア一帯
Eggs presents FM802 MINAMI WHEEL 2018 ~20th Anniversary~公式HP
Eggs公式HP
Eggs presents FM802 MINAMI WHEEL 2018 OPENING FLASH! AUDITION