ロックンロールシンガー、リアム・ギャラガーの今を見た 20年ぶりの日本武道館公演

 “OASISの曲を10曲やって、新曲もブラッシュアップされていて、声の調子も機嫌も良くて、まさかのダブルアンコールまでやって。大満足のライブだったし、やっぱり最高のロックンロールシンガーだなと改めて思いました”。“リアムの武道館、どうでした??”という知人からのメールに対する返信がこれ。実際、細かいことをいろいろ説明するよりも、“リアム・ギャラガーはすごいシンガーなんだ”という当たり前の事実を再認識できたことが今回のツアーのもっとも大きな収穫だったと思う。OASISの『Be Here Now』ツアー(1998年)以来、20年ぶりとなった日本武道館公演でリアムは、自らの価値をはっきりと示してみせたのだ。

 開演前のBGMはThe Jam、T.Rex、The WhoといったUKのアーティスト縛り。The Stone Rosesの「I Am the Resurrection」で観客を盛り上げた後(すでに立ち上がって踊っている人も)、ついにライブが始まる。OASISがライブのオープニングで使っていたSE「Fuckin'in the Bushes」が鳴らされるなかリアムとバンドメンバーが登場。「Rock 'n' Roll Star」「Morning Glory」というOASISのアンセムを連発するオープニングは、去年の夏の単独公演とまったく同じ。爆音のバンドサウンド、それを上回る音量のボーカル、“モニターを上げろ”と指でPAに指示するところも同様だ。昨年と違うのは、リアムの状態。声量、パワー、ステージングを含めて、明らかにコンディションがいい。“サンキュー!!”と叫び、観客とコミュニケーションを取る姿も強く印象に残った。

 この後は昨年10月に発表したソロアルバム『As You Were』の楽曲が次々と披露される。ガレージ系ギターロックの匂いを振りまく「Greedy Soul」、単純明快なロックンロールと重層的なバンドアンサンブルが重なり合う「Wall Of Glass」、ファルセットを活かした美しいメロディラインが心に残る「Bold」。グレッグ・カースティン(アデル、BECK、Foo Fightersなどの作品に関わっているプロデューサー)をはじめとする複数のプロデューサー、ソングライターと作り上げた『As You Were』によって、リアムはロックンロールシンガーとしての才能と魅力を再び世に提示した。この日のステージからも、そのことがダイレクトに感じられた。なかでも素晴らしかったのが、「For What It’s Worth」。音数を抑え、メロディの良さを強調したアンサンブル、間奏パートのストリングス(この日はキーボーディストが演奏)など、初期のOASISを想起させるナンバーだが、ロングトーンを使ったリアムのボーカルはまさに絶品。やはり彼には、こういうデカい曲が良く似合う。

 ライブ中盤では再びOASISの名曲が降臨。曲が始まった瞬間に「おおっ!」という驚きの歓声が上がった「Some Might Say」(歌い終わった後、リアムは“アリガト”と日本語で感謝を伝えた)、そして、この日の最初のピークを演出したのは「Champagne Supernova」だった。アレンジはピアノと歌のみ。この曲の持つ美しいロマンティシズム、圧倒的なカタルシスをさらに増幅させるような歌いっぷりは、パワー一辺倒ではない、リアムの豊かな表現力を証明するに十分だった。シンガロングではなく、じっくりとリアムの歌を受け止めている観客の様子も印象的だった。

 「リアム! リアム!」というコール、そして、Beady Eyeの楽曲「Soul Love」から始まった後半は、リアムのロックンロール愛に溢れた楽曲が続いた。「Helter Skelter」(The Beatles)、「Gimme Shelter」(THE ROLLING STONES)の歌詞が引用された「You Better Run」、シンフォニックな音響とダイナミックなメロディが見事に融合した「I’ve All I Need」。そして本編ラストはOASISの名曲「Whatever」。Beady Eyeの楽曲、ソロの楽曲、OASISの楽曲を並べた構成は、リアムのキャリアを総括すると同時に、“2018年のリアム・ギャラガー”をダイレクトに感じ取ることができた。『As You Were』の楽曲はセットリストに並んでいても何の違和感もないし、“これが今のリアムなんだ”と心から納得できたことは、リアルタイムでOASISを経験してきた筆者にとっても大きな発見だった。

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