渋谷の中心で音楽の解放を叫ぶ 『RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO 2018』のメッセージ

 ライブだけでなく、ライブストリーミングで楽しめるイベントもある。10月2日に配信される『LOST IN KARAOKE』ではカラオケ館西武新宿駅前店を丸ごとジャックして、あっこゴリラ、ゆるふわギャングをはじめとしたアーティストたちが、パフォーマンスやトークを行い、10月6日配信の『plug (24 Hours)』では24時間ノンストップでライブ中継を行うなど、東京から全国に向けて、日本最前線の音楽が届けられる。

 この他、Zeebraがキュレーターとして、1本のマイク、シンプルなビートのみという極限までそぎ落とされた環境で、一人のMCがどのようなフリースタイルを生み出せるのかを試みる『64 Bars』が渋谷のSOUND MUSEUM VISIONでライブギグとして行われたり、上野にある東京国立科学博物館では、やくしまるえつこによるインスタレーションと相対性理論が「わたしは人類」を演奏する100名限定のライブパフォーマンスが行われたりと、シチュエーションによってどんな科学変化が起こるのかと胸を踊らせてしまうような企画も満載だ。

 かつて音楽は街と強く紐付いていた。地域の文化が音を生み、そのメロディが都市を彩っていた。人が集まり、その分だけ多様性を手に入れた都市の中心には音楽が鳴っていて、レコードショップの近くにはファッションやフードがあり、人はそこを循環してカルチャーを構築していった。しかし、再開発や音楽文化の衰退と共に、いつしかその環は切れてしまった。レコードショップは姿を消し、ファストファッションやフードチェーン店が立ち並ぶのが、今の渋谷の姿だ。ここでなくても手に入るものしか、ここにはない。

 その渋谷が街一丸になって、今一度「音楽の解放区」になろうと叫んでいる。もし、この叫びがあなたの胸に響いたのであれば、ともにこのイベントを楽しもうではないか。開催期間だけでなく、この先もこの音楽が鳴り止まないように。音楽を解放する街にできるアクションは、ここからきっと起こせるはずだ。

(文=石川雅文)

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