16thアルバム『INNER VOICE』インタビュー

真心ブラザーズが語る、時代の波を乗りこなす音楽哲学 「退屈に慣れておいたほうがいい」

「200まで生きるつもりだから、退屈なんですよ」(YO-KING)

――桜井さんの「Z」なんて、メロディがワンパターンしかないじゃないですか。ほぼ展開がない。

桜井:盛り上がらない(笑)。

――いやいや! それが盛り上がるんですよ。それがマジックだと思います。素晴らしいです。

桜井:これはね、8小節のパターンをずっとやってるだけだから。「こんな感じ」って途中まで作って、「じゃあやろう」ってすぐ録り始めて、だからゼロテイクですよ。音決めも、やりながら録って、これはもうこれでOK。一瞬で決まりました。

――これ、出だしが、『チューリップ』の歌詞じゃないですか。「咲いた、咲いた」「赤、白、黄色」って。まさかこれで来るとは思わなかった。

桜井:そうそう。僕ね、引用始めって好きなんですよ。

――はい?(笑)。

桜井:こういう実録シリーズの曲で、「あいつが夢所からやってくる」(2014年アルバム『Do Sing』収録)という曲があるんですけど。それも〈ちっちゃな頃からワルだった〉というのがチェッカーズで、〈盗んだバイクで〉というのが尾崎豊で(笑)。80年代の歌だから、その頃の歌を出すという遊びをやっていて。

――これもそのシリーズなんですね。

桜井:そうそう。気づいていただいてありがとうございます。一応スタッフに、著作権は大丈夫か、確認してもらいましたけど(笑)。

――このパターン、何千曲と作れますね(笑)。歌詞で言うと、「メロディー」に戻りますけどね、〈退屈を怖がるな。退屈と共に在れ〉というフレーズ、また出た名言がと思いましたよ。

YO-KING:ふふふ。そうねえ。

――これすごくいいです

YO-KING:俺ね、200まで生きるつもりだから、退屈なんですよ。たぶん。

――あと150年ぐらいある(笑)。

YO-KING:だいぶ退屈なんですよ。そしたら、ホリエモン(堀江貴文)が新作の前書きで、「僕は200まで生きると決めた」と書いてて、「わかってんなー」と思った。やっぱり、200まで生きると言ってる人が、120歳ぐらいまでやっと生きれるんじゃない? だから僕、実年齢を言わないほうがいいというのは、そういうことなんですよ。年齢を聞かれたら、半分ぐらいで言うのがいいよね。「俺は今25です」って、どこまで自分を騙せるか。心と体を。

――いいですねえ。

桜井:セルフ・マインドコントロール。

YO-KING:どこまで騙せるかで、細胞が変わってくると思うんで。そこの勝負ですよね。

――それはきっとある気がする。

YO-KING:なんでそんなに長生きしてるんだ? って言われちゃうだろうけど。500年生きろと言われたら、しんどいけど、200ぐらい生きれたら、楽しいなと思う。

――けっこう、いろんなもの見られますよ。

YO-KING:とはいえ、ですよ。天寿で1週間後に死ぬんだったら、それはそれで受け入れなきゃいけないなとは思ってます。受け入れられるかどうか、わかんないけど。その二つですよ。バランス。それはいつ来るのか、といってもわかんないからね。ただ、長生きの準備はしとかないと。退屈に慣れておいたほうがいいとは思うんですよね。退屈だから哲学って生まれるし、その退屈を、こういうスマホとかで埋めちゃうと、埋めるのは簡単なんですよ。でもそれが本当に楽しいかどうか。

――幸せは退屈にあり。そういう哲学だと受け取りましたね。基本、YO-KINGさんの詞って、全部、幸福論だと思ってるから。

YO-KING:そうですね。そうだと思います。

桜井:なるほど。

――どう生きて、どう幸せを感じるか。それをずっと歌っていると、僕は思ってるので。毎回「おお!」と思いながら聴いております。

YO-KING:ありがとうございます。それは自分にとっても、そうかな。すごい読書家の、外山滋比古さんという人の本を読んだら、いいこと言ってて。「いい歳こいたら、本なんて読むな」って。

――なるほど。

YO-KING::若い頃、ガーっと本を読む時期は絶対あっていいし、僕は死ぬほど本を読んできたけど、いい歳こいたら、空を見てぼーっとしてるほうが絶対幸せだ、みたいなことが書いてあって。

桜井:空だね。空即是色の空。空の域ですな。

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