WANIMA、初のドーム公演で計7万人に見せつけたライブバンドとしての真髄
そして26日。正真正銘ツアーのラストとなる公演は、前日にアンコールで披露した「OLE!!」からスタート。2日連続でライブに参加した観客にとって、折り返し地点ということを告げるニクイ演出だ。「やっぱりファイナル最高!」と「Japanese Pride」では叫び、「THANX」では観客みんなと大合唱。バンドとファンの間に通う、ありがとうの気持ち。そこに嘘は一切ない。その後も映画の主題歌となった「Drive」、「CHEEKY」で加速度的に会場を盛り上げていく。
大仕掛けであるムービングステージは見ものだった。FUJIが某大物歌手のモノマネで、“ヨーソロー!”と出航の合図を叫ぶ。その姿はまさにキャプテン・オブ・ザ・シップ。今年一番の話題曲DA PUMP「U.S.A.」を歌いながら、ステージをアリーナ中央へと先導する。「いいから」を演奏し始めると、ステージが360度に回転。本人たちも楽し気で、その演奏はどんどん熱を帯びていった。
今回のツアーから披露している新曲「りんどう」は、観客みんなが携帯のライトで明かりを灯し、会場全体が美しくライトアップされる。これはファンが自然発生的に行った出来事で、メンバーみんなも驚いた模様。じんわりと心に沁みわたるようなバラードの美しさと、左右に揺れる光が相まって幻想的な雰囲気を演出し、「生きて生きて生き抜く」という想いが込められたメッセージをより際立てていた。
次に移動した畳のステージは、KO-SHINが上京して初めて住んだ西新宿の4畳半をイメージしているとのこと。なんでも鍵なし、エアコンなし、たまに知らないおじさんが室内にいることがある、という事故物件よりタチの悪い部屋だったそうだ。この場所で、「ここから」をアコースティックで披露。悔しさや辛い思いを乗り越え、不遇の時代を笑い飛ばせるようになった彼らが放つ〈はじめよう ここから〉、〈ダサいのは今だけだから〉という歌詞には、なんかグッとくるものがあった。
ファンからの支持も厚い「ともに」を、後半戦一発目に持ってきたのにライブ巧者の凄味を感じる。WANIMAとファンの間にある、同時代性というか共有性は、他のアーティストではなかなかお目にかかれない関係性だ。そういえば来ている大学生にWANIMAについて聞いたら、「今回のライブのために節約していた」と答えた。もはや何よりも大事な存在、自分の人生を共に歩める、そんな存在なのだ。その後も「ヒューマン」や「Hey Lady」、「オドルヨル」などで怒涛の展開を繰り広げていく。
「不器用でも、未完成でもいい。また戻ってくればいい。好きにやってダメだったら、いつでもWANIMAのところに戻ってこい!」とKENTAが熱いメッセージを放つ。
WANIMAを結成してしばらくの間、誰も自分の曲を聴いてくれないと嘆き、住んでいた近所の公園の草木に向かってベースをベンベン鳴らしながら歌っていたというKENTA。今では目の前で3万5000人もの観客が曲を聴き、共に歌っている。もし当時の彼へこの事実を伝えたら、信じてくれるだろうか。
そんなことを考えていたら、「シグナル」が鳴り響いた。この曲は昨年12月に放送されたNHK総合『WANIMA 18祭』のために書き下ろされ、1000人の18歳世代とともに披露したことで大きな反響を呼んだ一曲。その後も広瀬すず出演のロッテ“爽”のCM曲として起用されたこともあり、YouTubeで公開後、10カ月で2000万回再生を突破、ファンの間では新たなアンセムとなっている曲だ。この曲が始まるとアリーナはモッシュサークル、ダイブの嵐となり、「もっとWANIMA! もっとエビバデ!!」のコールに観客の熱気は最高潮に。ラストは「Everybody!!」で、ラーラララの大合唱の中、本編が幕を閉じた。
アンコールでは「花火」を披露した後、恒例のリクエストコーナーを開催。KENTAがアリーナに降りていって、挙手で演奏してほしい楽曲を募る。幸運にも選ばれたファンから要望されたのは、「TRACE」。「歌詞を覚えているか怪しいので、一緒に歌って!」と、観客発信で歌い出す。WANIMAは誰でも覚えられる簡単な言葉で、聴く人の心の奥底まで届けている。だからみんな自然と歌いだせる。これはすごく稀有な出来事だと感じた。
「これだけは」を最後の曲として、二日間に渡るライブが終了。「ありがとう! みんな本当に愛しとるよ!」、「みんなこれからもWANIMAが好き! WANIMAでした!」とKENTAが感謝の気持ちを述べ、KO-SHINの一丁締めで幕を下ろした。
ライブ後にはファンへ嬉しい報告が。この日の模様を収めたライブDVD『Everybody!! TOUR FINAL』の発売が決定し、さらには今回のツアーで行けなかった場所を中心に巡る『1CHANCE NIGHT TOUR 2018-2019』を11月から開催することを発表。ライブバンドとしての頂点を極めるべく、しばしの休息もとらない姿勢には感服するのみ。小バコや中バコ、アリーナ、ドームと演奏する規模は変われど、WANIMAの根本にあるものは変わらない。それはライブバンドである、ということ。彼らが演奏を始めれば、どこでもライブハウスと化す。そして演奏中の彼らの満面の笑顔からは心底ライブが好きなのが、嘘偽りなく伝わってくる。WANIMAの本質を観たいなら、やっぱりライブなのだ。
WANIMAが狙うワンチャンは、もっと崇高なところにある!
(文=中沢 純/写真=瀧本 JON... 行秀、岸田哲平)