橘慶太の「composer’s session」:KREVA
w-inds. 橘慶太×KREVA対談【後編】 “オタク”が最強の時代? 突き詰めることの重要性を考える
“オタク最強説”のキーワードは「検索を超えろ」
KREVA:そういえば、DJはしないの?
慶太:僕全然やらないんですよね。すごい変な話なんですけど、どっちかというとクラブが苦手なんです。だけどクラブトラックが好きっていうので一時期悩んだことがあって。
KREVA:これでいいのかと。
慶太:クラブにはいられないけど、こういう曲を作って本当に説得力があるのかって。すごい悩んだ時期がありました。
KREVA:でも実際にその曲で自分で踊るわけだからさ。全然リアルダンスミュージック。リアルサウンドだよ(笑)。
慶太:リアルサウンド、作れてますかね(笑)。
KREVA:うん、全然関係ないと思う。
慶太:そういうことをいろいろ考えてる時期に、4、5年前ぐらいから「オタク最強説」が自分の中で出てきたんです。昔はアグレッシブに行動力がある人が現場に行って音を聞いて、トレンドを押さえて、みたいなことが最先端の鍵だったと思うんですけど、今はオタクが最先端をそれよりも早くググれるじゃないですか。
KREVA:間違いない。
慶太:そうなってくると、逆転してきてるんじゃないかっていう。YouTuberがどんどん上がってきてるのとかも含めて。僕もどっちかというとオタク気質なんですけど。
KREVA:プラグインオタク(笑)。
慶太:(笑)。だからこれでいいんだっていう風に途中で思えたんですよね。
KREVA:ただ、ぬるいオタクには言いたいんだけど、突き詰めないとダメだよね。「全部僕プラグイン持ってますよ」って言えるくらいじゃなきゃやっぱダメだと思う。
慶太:確かに。中途半端はダメですよね。
KREVA:本当にダメ。検索しても出てこないレベルのところまでいかないと。キーワードは「検索を超えろ」。
慶太:それは本当に間違いなく言えることだと思います。
KREVA:俺はある時期から自分が探したい情報を「MPC3000」で検索して、俺の情報がまず出てくるようになった時に超えたなと思ったね。検索超え完了。
慶太:検索を超えろ、これは名言ですね。
KREVA:そうなってくると自分で突き詰めるしかないから。
慶太:トライアンドエラーは本当に大事。検索結果とか雑誌に載ってるルールばかりに捉われないのも僕は結構大切なことだと思います。それこそ90年代にひずみがいい音って言われたのも、もともとダメな音だったものがすごくいい音とされたわけで。今だと位相が狂っちゃダメって言われてますけど、もう位相なんて関係ないぐらいのミックスをしてることもあるし。時代によって新たに自分がいい音と思えば、それがトレンドになることってありますよね。
KREVA:間違いない。だからMP3のコピーのコピーを誰かが昔溜め込んだUSBから録った音がいいってなる可能性も十分あるし、最高のオーディオで聞いていいと思えるようなものを突き詰めるのももちろんアリだし。
慶太:自分がいいと思うかどうかが一番大切なんだなっていうのは、最近ミックスしててもそうですし、曲を作ってても思いますよね。
KREVA:そういう時にコンピュータの中の世界って本当に無限だよね。それに対する一つの自分への納得というか、そういう意味でアナログとかハードとか外の機材があるんだと思う。俺たちでいうと、レコーディングにおける発売みたいな締切、この時期でこの作業は終わりっていうものがあるというか。
慶太:僕の性格上、それが本当に大切なんですよね。なんでもやり直したくなっちゃうタイプなので……。最近はPro Toolsもいったんコミットしようかなって。そうするともう戻れないじゃないですか。
KREVA:わかるかな、これみんな。ふつうの状態だといつまでも音をいじれるわけ。5だったのを4に変えて、こっちを4に変えたからこっちを3にしてとか。でもコミットはそれを1回写真でいうところのプリントしちゃうみたいな感じだよね。
慶太:いじれなくするっていう。
KREVA:a.k.a 諦め。
慶太:(笑)。最近はそういう風に考えるようにしてます。やっぱり時代的にスピード感も大切じゃないですか。そこに追いつけるようになるためにも、どんどんプリントしてやっていくっていうのも大事ですよね。
KREVA:もちろん直したい時にすぐに直せたり戻れる良さもあるんだけど。やっぱり部分的にでもしっかり、ある程度色濃く残していかないとダメなのかなとは思う。
2人が関心を寄せるビンテージリズムマシンの良さ
慶太:音楽制作に関するKREVAさんの今後の夢はありますか?
KREVA:今、リンドラム(80年代、サンプリング黎明期に多用されたリズムマシン)がスタジオにあるんだけど、いわゆるビンテージリズムマシンを増やしていきたいかな。カルヴィン・ハリスが『Funk Wav Bounces Vol. 1』でビンテージマシンをものすごく使ってたんだけど、例えばYAMAHA DX7(80年代に一斉を風靡したシンセサイザー)の音をエミュレートしたプラグインって今では山のようにあるし、便利だからそれを使えばいいわけで。でも、サウンドをチョイスする時に、本物を持っていて本物の音を知っている人と、リアルタイムで体感していない人だとチョイスが違うと思う。それぞれ面白いとは思うんだけど、説得力を出したい時はやっぱり本物なんじゃないかって思ってるんだよね。
慶太:リンあるんですか?!
KREVA:あるある。
慶太:僕、実はKREVAさんのスタジオが家から近いことは知ってるんです(笑)。
KREVA:(笑)。来てよ。
慶太:僕、実はKREVAさんのスタジオにムジークのスピーカーがあるって知ってますよ。
KREVA:いいこと知ってるね(笑)。
慶太:いろいろ知ってるんですよ(笑)。
KREVA:鳴らしてみたいでしょ。ずっと俺もDAWでやってきたけど、最近になって特に古い機械をちょっと一個取り入れるとサウンドが今っぽくなるなと思ってるんだよね。
慶太:めちゃくちゃいいですよね。それこそ僕もずっとデジタルで作っていたけど、アナログをみんなが使い始めたタイミングで、何がいいんだろうと思っていろいろ聞き比べてたんです。細かいこと言うと、音の出る階層が違うというか。デジタルでいろいろな音を一緒に出して奥行きが狭い中に、アナログの音が一個入ることによって……。
KREVA:遠くにいる感じが出るよね。
慶太:そうなんですよ。奥行きが出るし、その立体感がどうしてもデジタルだけじゃ出ないなと思っていて……欲しいんですよね……。
KREVA:だから、だいぶビンデージドラムは集まってきたけど、もうちょっと集めてみようかなと思ってる。「あれ持ってます?」って言われたら「あるよ」って言えるくらいには。
慶太:近所でよかった!(笑)。ビンテージドラムが揃うのは半端ないですね。それこそカルヴィン・ハリスが出した時、僕は相当ショックだったので。
KREVA:「あいつ、いいな」って言ってね。
慶太:どうやってもこのサウンドは家ではできないなって。
KREVA:これからは借りにきてくれれば。チャリで背負って帰って。チャリ限定ね。
慶太:積めそうなチャリ買います(笑)。
KREVA:うちのスタジオで何か挑戦してみる?
慶太:アナログとデジタルの融合はまだやったことがないので、チャレンジさせていただきたいです!
KREVA:MPCは2台あるよ。1台のMPC4000はRHYMESTERのMummy-Dに貸してたんだけど、4年ぐらいしてアルバム2枚くらい出てから返ってきた(笑)。
慶太:むしろよく返ってきましたね(笑)。
KREVA:なぜかオーディオテクニカのオーディオタップと一緒に(笑)。よかったら借りに来てください。
慶太:ありがとうございます! ぜひ行かせていただきます!
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・w-inds. 橘慶太×KREVA対談【前編】 トラックメイカー視点で語り合う、楽曲制作のテクニック
■KREVA
国民的人気を誇るHIP HOPアーティスト。HIP HOPの殿堂「B-BOY PARK」のMCバトルで3年連続日本一の栄冠に輝く実績を持ち、現在に至るまでその記録は未だに塗り替えられていない。2004年9月08日(クレバの日)に「音色」でソロメジャーデビュー。
2ndアルバム「愛・自分博」でHIP HOPソロアーティストとして史上初のオリコンチャート初登場1位を獲得。リリースされる楽曲は常にチャート上位にランクイン。9月08日は”クレバの日”と日本記念日協会に正式認定される。これまでに23枚のシングルと7枚のオリジナルアルバムをリリース。2018年、新作『存在感』 が8月22日に発売。そして、今年のKREVA主催の”音楽の祭り”『908 FESTIVAL 2018』は、8月31日日本武道館で開催。HIP HOPシーンのみならず、日本の音楽界最重要人物のひとり。
■橘慶太(w-inds.)
1985年12月16日生まれ。福岡県出身。
3人組ダンスボーカルユニットw-inds.のメインボーカリストとして、2001年にシングル『Forever Memories』でデビュー。同年、第43回日本レコード大賞最優秀新人賞に輝く。その17年の活動において、いままでにw-inds.として12枚のオリジナルアルバムと40枚のシングルをリリース。
国内外でそのアーティスト性、パフォーマンス、そしてセールスは高く評価され、デビュー当初より日本のみならずアジア各国で数々の賞を受賞。その活躍は、台湾・香港・韓国・中国・ベトナム・タイ・マレーシアなど東南アジア全域に拡がっている。
2017年、「We Don't Need To Talk Anymore」からは、橘慶太が作詞・作曲・編曲をセルフプロデュースするなど、世界の音楽のトレンドをいち早く取り入れながら、グループ独自の音楽を追求し、常に進化を遂げている。
(構成=久蔵千恵/写真=下屋敷和文)
■KREVA リリース情報
『存在感』
8月22日(水)発売
【初回限定盤(CD+DVD)】¥2,300(税抜)
【通常盤(CD)】¥1,500(税抜)
※初回限定盤はスペシャルパッケージ(デジパック仕様)
<CD収録曲>
1. INTRO
2. 存在感
3. 俺の好きは狭い
4. 健康
5. 百人一瞬
<DVD収録曲>
1. 存在感 (Music Video)
2. 存在感 (Making)
■KREVA ライブ情報
『クレバの日 スペシャルライブ ~大阪編~』
9月08日(土) Zepp Osaka Bayside
開場17:45/18:30
1Fスタンディング(スペシャルプレゼント付)¥9,080(税込)
2F指定席(スペシャルプレゼント付)¥9,580(税込)
一般公演チケット発売日:9月1日(土)
お問合せ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00~18:00)
クレバの日~大阪編~特設サイト
■KICK THE CAN CREW リリース情報
『住所 feat. 岡村靖幸』
8月29日(水)発売
初回限定盤(2CD)¥2000+税
通常盤(CD)¥1000+税
<CD収録曲>
1.住所 feat. 岡村靖幸
2.Keep It Up
3.住所 feat. 岡村靖幸 (Inst.)
4.Keep It Up (Inst.)
<BONUS CD> ※初回限定盤のみ付属
昨年発表した最新アルバム『KICK!』ライブ音源を全曲収録
01. 全員集合
02. 千%
03. 今もSing-along
04. SummerSpot
05. なんでもないDays
06. 完全チェンジTHEワールド
07. また戻っておいで
08. また波を見てる
09. I Hope You Miss Me a Little
10. タコアゲ
KICK THE CAN CREW HP
KICK THE CAN CREW New Single「住所 feat. 岡村靖幸」スペシャルサイト
■w-inds.リリース情報
13th Album『100』(読み方:ワンハンドレッド)
7月4日(水)発売
シングル「Dirty Talk」「Time Has Gone」他を収録
●初回盤 [CD+Blu-ray+スペシャルフォトブックレット(76P予定)]¥4,630+税(税込¥5,000)
※封入特典…「個別サイン会参加券(メンバー事前登録制)」 or 「プレゼント応募券」
※Blu-ray…「Time Has Gone」「Dirty Talk」Music Videoの他、本アルバムに収録する新曲のMusic Videoや撮り下ろしの特典映像を収録予定
●通常盤 [CD Only]¥2,778+税(税込¥3,000)
■w-inds. ライブ情報
『w-inds. LIVE TOUR 2018 “100”』
※終了公演は割愛
9月2日(日)埼⽟・ ⼤宮ソニックホール ⼤ホール OPEN17:00/START18:00
9月7日(金)東京・ 東京国際フォーラム ホールA OPEN17:30/START18:30
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