欅坂46にユニット曲が与える影響は? 長濱ねる&尾関梨香&小池美波「音楽室に片想い」から考察

 欅坂46が8月15日、7枚目となるシングル『アンビバレント』を発売した。表題曲のMVでは、センターの平手友梨奈が人間関係などのしがらみから、メンバーの心を“解放”する姿を演出。これまでの彼女たちのMVとは一変し、全員が笑顔を見せる終盤のパフォーマンスには驚きの声が上がっている。

『アンビバレント』初回仕様限定盤(TYPE-C)

 前作『ガラスを割れ!』発売以降、欅坂46は逆境に立ち向かう時期を過ごしてきた。今年4月に、平手や活動休止中の志田愛佳を欠いて『2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE』を開催した際は、各曲で代打のセンターを立てて対応。また、音楽番組で「ガラスを割れ!」を披露した際には、今泉佑唯と小林由依がダブルセンターを務めた。残念ながら、今泉の卒業が先日発表になったばかりだが、平手が活動に復帰し、『欅共和国2018』を成功に収めたのは、まさに「アンビバレント」のMVで見せた“解放”の瞬間と重なるようだ。

 そんな新シングルには、長濱ねる・尾関梨香・小池美波によるユニット曲「音楽室に片想い」も収録。“可愛らしさ”と“ゆるさ”に焦点を当てた前作「バスルームトラベル」が好評を博していたメンバーの組み合わせだ。本稿では、「音楽室に片想い」が現在の欅坂46に与える影響について考えてみたい。

欅坂46 『音楽室に片想い』Short Ver.

 まず挙げられるのは、欅坂46を取り巻くパブリックイメージへの影響だ。“笑顔”を前面に押し出した「アンビバレント」のMV公開や、先述の度重なるトピックを乗り越えるなど、欅坂46は今、グループとして重要なタイミングを迎えている。そんな折、表題曲とは雰囲気を変えた「音楽室に片想い」を発表することは、新たなファンを獲得する間口の拡大に繋がるはずだ。また、6枚目シングルに遡れば、ロックサウンドの好戦的な「ガラスを割れ!」と、愛らしくもどこかシュールな「バスルームトラベル」が同一作品に収録されたことで、グループの表現の幅広さを伝える機能を果たしていた。

 そして特筆すべきは、グループに対する“内向き”な作用だ。ここで比較したいのが、渡辺梨加・志田・菅井友香・渡邉理佐・守屋茜によるユニット・青空とMARRY。彼女たちもグループのイメージと逆を突く、可愛らしい楽曲を発表してきた点で、長濱・尾関・小池と同様といえる。ただ、今でこそ『欅って、書けない?』(テレビ東京系)で豊かな表情を見せている渡邉や守屋だが、結成当初はクールな一面がどこか抜け切らない印象もあった。それを踏まえると、彼女たちが可愛らしい楽曲を発表した背景には、メンバーの“意外性”を打ち出すという意図があったとも考えられる。

 一方の長濱・尾関・小池は、グループ活動当初より“可愛らしさ”で注目を集めてきた。特に小池は、『欅って、書けない?』で『ガラスを割れ!』PRキャンペーンを行なった際、表題曲のMVを視聴したベッキーに「1人だけアイドル感が抜けきれていない」と指摘されたほど。そんな彼女たちの“可愛らしさ”を真正面から堂々と見せることで、アイドル的な表現のクオリティに追求を重ねたのが「バスルームトラベル」や「音楽室に片想い」なのだろう。

欅坂46 『バスルームトラベル』Short Ver.

 そんな「バスルームトラベル」のMVで、3人はジェラードピケ風のルームウェアを着てバスタブでじゃれあい、「音楽室に片想い」でも、フラワークラウンと共に花柄のクラシカルワンピースを纏い、メンバーカラーの花が装飾されたブランコに乗って戯れている。映像内の作り込まれた衣装や大規模なセットは、視聴者の心を射抜く一助となっており、制作陣があらゆる方法で、長濱らに内在する可愛さを“可視化”に導こうとする気概が感じられる。青空とMARRY、ならびに長濱・尾関・小池のユニット曲は、“可愛さ”を見せる点で共通しつつも、“意外性”と“深化された表現”のどちらに重きを置くかで、若干ベクトルの異なった作品に仕上がっているのだ。

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