『Cinema Song Covers』インタビュー
May J.が語る、“映画主題歌”カバーで開いた新たな扉 「自分の殻がどんどん破けていっている」
May J.が、2年4カ月ぶり第4弾となるカバーアルバム『Cinema Song Covers』をリリースした。
2017年秋、初のフルオーケストラ単独コンサート『billboard classics May J. Premium Concert 2017 ~Me, Myself & Orchestra~』を開催し、自身の表現により磨きをかけたMay J.。『Cinema Song Covers』のテーマは“映画音楽”となっており、過去の名画から近年のヒット作まで、洋画と邦画からセレクトされた映画主題歌がオーケストラや弦楽四重奏、 アコースティック演奏で収録されている。
リアルサウンドでは、オーケストラとの共演によって歌手として新たな一歩を踏み出したMay J.にインタビュー。『Cinema Song Covers』の制作秘話をはじめ、過去のカバーソングシリーズとの違い、シンガーとしての変化やビジョンを聞いた。(編集部)
「ショートヘアは自分の性格に合ってる」
――かなりバッサリと髪を切られたんですね。
May J.:ここまで短くしたのは人生初です。私は今まで長い髪に対してこだわりをすごく持っていたんですよ。ある意味、長い髪は自分のお守りみたいな存在でもあったから、短くしちゃダメだと思っていたんです。ただ、年齢を重ねていく中で徐々にそこへのこだわりがなくなっていったところもあって。最近はむしろ「なんか髪の毛が邪魔だな」って思うことも多かったし(笑)。そんな中、30歳になる手前、20代のうちにやり残したことはあるかなと考えた時に、じゃあこのタイミングで髪を切ろうかなって気持ちになったんですよね。
――実際ショートヘアにしてみて何か変わりました?
May J.:髪が短くなったことで気持ちも軽くなった気がしますね。肩の重荷がなくなって、より自分らしくなれたんじゃないかなって。ショートヘアは自分の性格に合ってるなって思うんですよ。私はそこまでガーリーな性格じゃないし、いろいろと適当な人なので(笑)。
――軽やかになった気持ちは音楽活動にもいい影響をもたらしてくれそうですよね。
May J.:うん。歌う時の気持ちにもきっと影響はあると思う。あとは、ファンの方が実際にどんな反応なのかが気になりましたね。SNSのツイートなんかでは「長いほうが良かった」と言ってる人もいるし、逆に「すごく似合ってる」っていうありがたい反応もありました。
――先ほどお話にも出ましたが、May J.さんは6月20日で30歳になられて。そこでも何か変化を感じるところはありますか?
May J.:どうだろうなぁ。20歳になったときに想像していた30歳はもっとずっと大人な感じだったと思うんですよ。でも実際に30歳になってみると……まったく何も変わってない。全然大人になってないよなって思っちゃいますよね(笑)。
――それは言い方を変えれば、ピュアでフレッシュな気持ちを持ち続けながら年齢を重ねているということなのでは?
May J.:あ、そういえば以前、つんく♂さんに「May J.ってデビューから10年経ってる感じがしないよね」っておっしゃっていただいたことがあったんですよ。それがいい意味なのか悪い意味なのかはわからないんですけど(笑)、私としては変にこなれた感じがなく、フレッシュさを保てているということなんじゃないかなって受け止めたんですよね。だから確かに私自身、そういう気持ちを大事にしているところはあると思います。
――でもフレッシュさを保つことは難しいことでもありますよね。
May J.:長く活動をしているとツアーとレコーディングが交互にやってきて、ある種、ルーティンになってしまうこともありますからね。だから私はなるべく自分にとっての新しい挑戦を積極的にするようにしたりとか、刺激になることを探すようにはしていて。過去の音源や映像を振り返って、あらためて自分と向き合うような反省会を1人でやったりもしますし。
――過去の自分と向き合うと新たな発見があったりするものですか?
May J.:基本はすっごく落ち込むんですけどね(笑)。「うわ、このときの自分ってこんなこともできてないんだ」みたいな。でも、そこで見えた課題が次につながるヒントになることもあって。「次のライブではこんなことを試してみようかな」「こんなこともやってみたいな」っていろんなアイデアが出てきたりもするんです。ほんとはね、できていない自分を見るのはイヤなんですよ。でも、まだまだやれることがあるっていうのは大事なことでもあると思うので、そことしっかり向き合って進んでいかなきゃなって。それが新鮮な気持ちを維持することにつながるとも思うので。
――過去の自分の姿を見て落ち込むのは成長している証でもありますしね。
May J.:うん、確かに。満足してたら落ち込んだりはしないはずですもんね。30歳を迎えてもなお、いろんな刺激を求めながらどんどん成長し続けていきたいなって思います。
「弦楽器と自分の声の相性の良さを感じた」
――そんなMay J.さんから届いたニューアイテムは通算4枚目となるカバーアルバム『Cinema song Covers』。今回のテーマは映画音楽ですね。
May J.:カバーアルバムは2年4カ月ぶりのリリースで。その間、私はオリジナル楽曲の制作に集中していて、それはすごく楽しい時間だったんですよ。インプットしてきたものを自分の曲としてアウトプットできる楽しさがすごくあった。そんな中、ここ最近はイベントなどでフルオーケストラと一緒にに歌う機会もすごく増えていて、新たな世界を感じることもできていたんですよね。弦楽器と自分の声の相性の良さも感じていて、もっと成長していきたいなって思うようになっていたんです。
――昨年の11月5日には、ご自身にとって初のフルオーケストラコンサート『billboard classics May J. Premium Concert 2017 ~Me,Myself&Orchestra~』を開催されましたね。
May J.:オーケストラをバックに歌うとなると、そこと親和性の高い映画音楽がレパートリーに入ってくることも増えていくわけですよ。自分が小さい頃から好きだった映画の曲や、最近観た映画の中で気に入った曲なんかを歌いたいと強く思うようにもなったし、実際歌う場を与えてもらうことも増えました。
――なるほど。そういった流れが今回のカバーアルバムのリリースにつながっていったわけですね。
May J.:そうなんです。映画音楽をまとめた新しい作品を作っている感覚でした。自分の気持ちとして、今回はカバーアルバムだっていう意識もあんまりないんですよ。フルオーケストラで歌う経験の中で映画音楽のレパートリーが自然と増えていって、その流れから生まれたアルバムなので、今までのカバーアルバムとはまったく違った新鮮な感覚がそこにはあるんですよね。4枚目ではあるけど番外編だと思ってる(笑)。
――カバーではあるけど、オリジナル曲に近いモチベーションで制作されたところがあるのかもしれないですね。
May J.:そうそう。今の私が一番やりたい音楽、それがフルオケと壮大感のある曲の組み合わせで、その思いを一番いい形で発揮できるのが映画音楽だったっていうことですね。
――で、アルバムを聴かせていただくと、その内容がとにかくもうすごくて。J-POPからオペラまで、とんでもない振り幅で楽曲の世界を表現しつくせる歌い手はなかなかいないと思うんですよね。
May J.:私はJ-POPを歌うシンガーだし、元々はR&Bをやってきたルーツがありますからね。そんな私がオペラやミュージカルソングを歌うのはすごく難しくて大変なチャレンジでした…ただ、May J.が歌うとこうなるんだよっていうのはしっかり表現できたと思いますね。頑張ってオペラの人になりきろうとしても、それは絶対に無理だし、自分の色を良い意味で出していけたらと思って歌いました。
――モノマネではなく、May J.のオリジナルとしてカバーするということですよね。
May J.:そうですね。どの曲もそこまでどっぷりやりすぎず、May J.らしさを大事にしながら歌っていった感じでした。自分が思うオペラ、自分が思うミュージカルソングを思うがままに歌っていくっていう。