『ADVENTURE』インタビュー

SABANNAMAN 吉田涼&上田雄が語る、新たな冒険と変化「自分たちの曲をもっと共有したい」

「“不親切さ”ならではのよさがあると思う」(吉田涼)

――思えば『MAGIC MUTANT』の頃は、日本語が入っていても、それはかなりふざけたタイプのものでしたよね。

吉田:今思うと、あの頃は恥ずかしかったのかもしれないです(笑)。ある意味、照れ隠しみたいな感じだったんですよ。でも、今は日本語の曲も普段から聴いていて、そういう曲もやってみたいと思うようになりました。そもそも、『MAGIC MUTANT』の頃は、「SABANNAMANと言えば英詞」と自分たちでも思っていたし、ハードコアファンクっぽい何でもありのミクスチャーこそが自分たちだと思っていて。でも、ミニアルバム『Psychedelic Sox Funk』にも入れた「Light In Dark」(今回の『ADVENTURE』にも収録)ができてから、こういう歌っぽいものもやってもいいな、と思えるようになりました。

上田:自分たちの中でも、間口が広がった感じがしたというか。俺たちも普通に“いい曲”が作れる、ということに気づいたんですよ。


吉田:そしてその流れが、今回のアルバムに繋がってるのかなと思いますね。

上田:でも、「Light In Dark」にしても、激しい曲にしても、ベースになっているものは同じです。「Wandering」もそうで、「別のバンドみたいな曲を作ろう」と思って作ったわけではないんですよ。今のSABANNAMANがやりたいことを出した結果こうなったというか。「Wandering」ができてからは、ノリを大事にしてどんどん作っていったんですけど、僕がフレーズを用意して、その中で吉田が気に入ったものから曲に発展させていく、という感じでした。

吉田:あとは、「このバンドっぽいものを、俺たちがやったらどうなるだろう?」とか。たとえば12曲目の「Get Check Now」は、さっき話していたAtari Teenage Riotっぽい曲を作りはじめたら、最終的にこういう感じになったんです。

――なるほど。ほかの曲でも、たとえば7曲目の「THUNDER」は、『Evil Empire』や『The Battle Of Los Angeles』の頃のレイジのーー。

上田:ーーような曲にしたいと思っていたんですけど、できたものはそれよりAC/DCみたいになってしまって(笑)。それで「THUNDER」というタイトルになりました(笑)。

――今回のアルバムのタイトルにもなっている冒頭のインスト曲「Adventure」はどうですか?

吉田:この曲は最後の方にできた曲ですね。アルバムの中でもSEのような、オープニングのようなものにしようと思っていました。もともと俺はそういうものが好きで、ずっとやりたいと言っていたんですよ。たとえば、歌が入ってる曲ではありますけど、Foo Fightersの『In Your Honor』の1曲目(アルバムのタイトル曲「In Your Honer」)とかもすごく好きなんで。僕らのライブでも1曲目にやれたらいいかな、と思うこともあります。

――「SEのような曲」繋がりでいくと、逆再生を使ったトラックの中で「No.6……No.6」という声がループしている6曲目の「No,6」も印象的でした。これはThe Beatlesの『The Beatles』(通称『ホワイト・アルバム』)の収録曲「Revolution 9」へのオマージュですか?


上田:そうです。ちょうど制作中に、メンバーで『ホワイト・アルバム』をめちゃくちゃ聴いてたんですよ。それで、「サウンドコラージュをやりたいね」という話になりました。

吉田:もともと、俺がThe Beatlesの中で、なぜか『ホワイト・アルバム』だけ持っていて。「Cry Baby Cry」がめちゃくちゃ好きで聴いていたんですよ。

上田:吉田から薦められて聴いてみたら、サウンドプロダクションの実験をするような感覚がレッチリの『Blood Sugar Sex Magik』にかなり近いと思いました。その最たるものが「Revolution 9」なんで、オマージュで作ってみよう、となって。自分たちがファーストを出す前の自主制作盤の1曲目に入っていたデモのSEを持ってきて、そこに「No.6……No.6……」というセリフを入れていきました。俺たちが面白いと思えることなら、何でも入れちゃえ! と思ったし、こういうのもあるぞ、ということを聴いてほしかったんで。

吉田:その結果、ちょっと怖い雰囲気の曲になりました(笑)。でも、そういう曲ならではのよさって、あると思うんですよね。The Beatlesにしても「『Revolution 9』って、何で入れたん……?」みたいな話じゃないですか(笑)。そういうことって、日本の人はあまりやらないイメージがありますけど、「何でこの曲が入ってるんだろう?」って。最初は自分たちのジャムをベースにやれたらいいなと思っていたんですけど、意外とレコーディングする時間がなくなってしまって、自分たちの過去の曲を使うことになりました。意味は分からないと思うんですけど、そういう“不親切さ”ならではのよさがあると思うんですよね。

――リード曲の「The Way」はどうですか? この曲はSABANNAMANらしいミクスチャーでありつつ、同時に歌モノとしての魅力も感じられる曲になっていると思いました。レッチリのアンセムになるような曲にも近い雰囲気を感じますね。

SABANNAMAN「The Way」

吉田:元気なレッチリの新曲というか(笑)。この曲はもともと、ミニアルバムのときに作っていた元ネタがあって、でもそのときは曲として完成しなかったんですよ。

上田:すごくいいBメロができたんですけど、そのほかの部分がなかなかできなくて。

吉田:そのときのフレーズを基に、今回作っていった曲です。結構時間がかかったよね?

上田:そうそう。俺が「こういうリフがかっこいいな」と思っている曲と、吉田が「こういう曲にした」と思っていたことが違っていて、そこをすりあわせるのが大変でした。色んなリフを作って、「これは違うな」ということを繰り返して。

吉田:俺も、頭の中にあるものを上手く説明できなかったんで、ひたすらやるしかなかった(笑)。サビにもメロディを付けたいと思っていましたね。僕らのお気に入りの曲です。

――ほかにみなさんの中で思い入れのある曲というと?

吉田:それは全部になっちゃいますけど(笑)、でも「Wandering」はすごく思い出に残っているしーー。

上田:もちろん、「The Way」もそうだしーー。最後の「Get Check Now」も、改めて聴くと自分たちでは「よくできたなぁ」と思います。ハードコアテクノやデジタルハードコアを生バンドでやるという発想自体もなかなかないと思いますし、できて単純に嬉しかったですね。結果として、ハードコアテクノでも何でもない、“何か”になったというか。

吉田:「あの曲いいよね」「超やべえよな」って言って作りはじめたものが、それでもない“何か”になっていった(笑)。でも、それがいいと思うんですよ。「こんな感じの曲を作りたい」と思って作りはじめても、結局はそうならないし、なりたくてもなれないというか。

上田:それで出来上がった曲を聴いて、結局「これ、俺らだよなぁ……」って。

吉田:同じものになってしまったら、意味はないですからね。

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