ケツメイシ、「夏のプリンス」が描いたもの 夏歌の変遷にみるグループの変化と成長

 ケツメイシのニューシングル『夏のプリンス/風は吹いている』が8月8日にリリース。「夏のプリンス」が6月27日に先行配信された。同曲は彼らの十八番ともいえる王道の夏歌だ。プリンスホテルのCMタイアップ曲ということもあって、タイトルは「夏のプリンス」。これ以上ないというほどのストレートなネーミングには思わず笑ってしまうが、そんな遊び心も彼ららしい。1993年の結成から25年、2001年のメジャーデビューから数えても早17年というキャリアを持つケツメイシだが、彼らが発表する楽曲は常にポップで新鮮だ。

プリンスホテル 2018 Do!夏プリ テレビCM 30秒

 思い返せば、ケツメイシのレパートリーには夏歌が目立つ。シングルヒットした楽曲だけでも「夏の思い出」、「男女6人夏物語」、「また君に会える」、「お二人Summer」、「LOVE LOVE Summer」、「RHYTHM OF THE SUN」、「ヤシの木のように」などがあるし、他にも「サマーデイズ」、「リゾラバ」、「少年と花火」、「君との夏」と挙げていけば続々と名曲がある。主に夏の恋をテーマにした楽曲が多いが、曲調としてはアップテンポからバラードまで様々。まさにバラエティに富んだ夏歌を生み出してきたと言ってもいいだろう。

 では、今回の「夏のプリンス」はどのような楽曲だろうか。アコースティックギターやピアノのリリカルな音色から始まるが、ソカっぽいアッパーなビートにスティールパンやハンドクラップなどを重ねたサウンドは、爽快でサマーチューンらしさを演出している。ただ、アップテンポでありながらも、どこか憂いのある雰囲気を作り出しているのが、これまでとは違うところかもしれない。そして特筆すべきはその歌詞だ。〈浴衣〉、〈スイカ〉、〈カブトムシ〉、〈蝉〉、〈花火〉といった夏ならではのキーワードを多数散りばめつつも、〈思い出よ 想い出を 君と作ろう〉というサビのフレーズでノスタルジックな印象を与えている。ただ単に元気いっぱいという楽曲ではないのだ。

 このノスタルジックということで真っ先に思い浮かぶのが、彼らの代表曲でもある「夏の思い出」だ。2003年にリリースされたこの曲は、携帯電話のCMで使用されたこともあってヒットしたが、ビキニ姿の女の子たちが次々とプールに飛び込む様子を逆回転スローで再生するという一風変わったミュージックビデオを覚えている方も多いだろう。この曲も、夏のノスタルジーを描いた一曲だ。ただ、「夏の思い出」はあくまでも男女の夏の恋愛にフォーカスされていたが、「夏のプリンス」は友人や子どもなどに対する気持ちを描いたとも捉えられ、対象が恋人に特定されておらず普遍的である。単純なラブソングにせず、誰にとっても共感できる夏歌へと昇華した結果が「夏のプリンス」となっているのだ。

 こうやってケツメイシの夏歌の変遷を知ると、彼らの成長ぶりがよくわかる。青臭くちょっぴりエッチなお兄さんたちというイメージがなくなったわけではないが、人間味や奥深さがじわじわと歌詞ににじみ出てきている。この少し大人びた感覚は、両面A面で収められた「風は吹いている」にも感じられるはずだ。ゆったりとしたレゲエ風のリズムに乗せて語られるのは、人生の喜怒哀楽を「風」に例えた歌詞である。また、少し前に沖縄限定/CLUBケツメイシ会員限定でリリースされたオリオンドラフト オリジナルCMソング「カンパイの唄」も、単に盛り上がろうという乾杯ソングではなく、乾杯という行為の裏にある人の思いが描かれていた。これもまた、彼らのキャリアが蓄積されたからこその一曲といえるだろう。

 デビュー当時は20代だったケツメイシのメンバーも、今では全員40代となった。天真爛漫でごきげんなパーティーソングを歌う彼らのパブリックイメージは、大幅に方向転換するのではなく、少しずつ年相応にアップデートされており、それは彼らのお得意の夏歌からも伝わってくる。こういったケツメイシの変化と成長を象徴する楽曲が、今回の「夏のプリンス」ではないだろうか。おりしも、10月には初のドームライブが決定したというニュースも入ってきたばかり。まだまだ彼らは進化し続けるのだ。

■栗本 斉
旅&音楽ライターとして活躍するかたわら、選曲家やDJ、ビルボードライブのブッキング・プランナーとしても活躍。著書に『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS)、共著に『Light Mellow 和モノ Special -more 160 item-』(ラトルズ)がある。
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■リリース情報
6月27日(水)より新曲『夏のプリンス』が各種配信サイト、サブスクリプション型音楽配信サービスにて配信開始
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ケツメイシ オフィシャルHP

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