けやき坂46、新アルバム『走り出す瞬間』の聴きどころはユニット曲? それぞれの組み合わせを解説

 けやき坂46(通称:ひらがなけやき)の1stアルバム『走り出す瞬間』が6月20日にリリースされた。全タイプを揃えると、リード曲「期待していない自分」のほか新曲18曲を含んだ計28曲を収録。ソロやユニットといった様々なチーム編成やジャンルの楽曲が聴ける、音楽のテーマパークのようなアルバムに仕上がっている。本稿では、同作の中からユニット曲に注目してみたい。

走り出す瞬間(通常盤)

 今回の作品でユニット曲は8曲。ひらがなけやきの元祖ユニットと言える“りまちゃんちっく”。「沈黙した恋人よ」(全タイプ収録)で結成された同ユニットは、1期生の「ひらがなおもてなし会」で披露されたコーラス部の中から、潮紗理菜、加藤史帆、齊藤京子、佐々木久美、高本彩花という歌唱力の高いメンバー5名が選抜されている。「沈黙した恋人よ」は、欅坂46の1stアルバム『真っ白なものは汚したくなる』Type-Aに収録された、ひらがな初のユニット曲。ちなみに、“リマ”とはインドネシア語で“5”、“チャンティック”とは“かわいい”を表す言葉をひらがなにした造語で、「可愛い5人の女の子にいつかなりたいという目標を込めたユニット名」(参考:高本彩花ブログ)である。今作のType-Aには、新曲「ハロウィンのカボチャが割れた」が収録されている。若い男女のすれ違いを切ない詞で歌い上げた「沈黙した恋人よ」とは異なり、ポップな曲調で痴話喧嘩を可愛らしく歌ったようなアイドルらしい曲となっているため、2曲を聞き比べるとそのギャップも楽しめる。

 次に注目するのは、「三輪車に乗りたい」(通常盤収録)の柿崎芽実と佐々木美玲。この2人は、『不協和音』Type-Aに収録されたペアPV「Magic Girl」でタッグを組んでいる。同PVでは、テクノポップ調の楽曲をバックに2人が日常生活の中で魔法を使う姿が収められている。ひらがな初期に長濱ねるとWセンターを務めることが多かった柿崎と、現在のセンターと言える美玲。ひらがなけやきの歴史を繋ぐ2人であり、1期生の中では年齢が近いという共通点も持っている。「三輪車に乗りたい」は、三輪車の視点から見た歌詞となっており、子どもから大人への成長を示唆するような表現が含まれている楽曲。そんな世界観の曲を、ひらがなけやきのメンバーとして思春期を過ごし、成長著しい2人が歌うことに感慨を覚えてしまう。さらに「Magic Girl」からの歌唱力の成長を感じられる曲でもある。

 また、今回のアルバム曲が発表された時に感じたのが、影山優佳の歌唱曲が少ないということ。歌唱力があり、ひらがなけやきが「世界には愛しかない」を歌う時のセンターを務める影山。ドラマでも重要人物を演じるなど、メンバーの中でも注目を集めていたためソロ曲がないのが不思議だった。しかし、先日学業に専念することが発表されたため、納得がいった。そんな影山が唯一入っているユニット曲が、井口眞緒、高瀬愛奈、東村芽依と一緒に歌唱する「夏色のミュール」(Type-B収録)。影山と井口は、1期生の中でしっかり者の最年少と天然の最年長といった、仲の良い姉妹のような関係。『不協和音』Type-Dに収録されたペアPV「ドーナツの変」でも、その関係性を映像化したようなドラマで共演し、名コンビぶりを見せている。影山が活動休止を発表した後のブログで井口は、「夏色のミュールと戦っています 夏色のミュールの練習をしてる時いつもゆうかちゃんのことを思い出します もう何回ゆうかちゃんを求めたことか」とコメント。今まで歌割りなどを影山に教えてもらっていた井口が、休業した影山の存在の大きさを語りつつも、彼女の歩む道にエールを送っているブログがファンの涙を誘った(参考:井口眞緒ブログ)。AKB48に通じる疾走感に溢れる同曲からは、影山の声の存在感が伝わってくるし、彼女の声が聴ける大切な曲となった。さらに、ダンスがうまい高瀬と東村に挟まれた井口が、ライブでどんなパフォーマンスを見せるているのかも気になるところだ。

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