『Stones』インタビュー
UQiYOが語る“サブスク時代”の音楽の届け方 「ローカルな日本を土台に飛び出す時期が必ず訪れる」
「僕にとってのローカルは、東京じゃなく“日本”」
ーー一方で、アルバムを作ってCDで出して全国をツアーして、というのが旧来の日本的な音楽ビジネスモデルですが、UQiYOは今後どういう形の活動になりそうですか。
Yuqi:実は去年、『Young Cultural Innovator』という国際カンファレンスに呼ばれてオーストリアのザルツブルグに行ったんです。世界中のアートやクリエイティブなことに関わる人たちが一同に集まって一週間討論するというカンファレンスで、僕も日本代表として呼ばれて参加したんです。いろんな国の人と話してすごく面白かったんですけど、そこで一番感じたのが、アメリカの人もカナダの人も、そこのローカルでの音楽シーンなりアートのシーンをすごく大切にしていること。そこにいるアーティストがどう食べていけるか真剣に考えてる。結局世界で売るとかいう前にローカルがまず大事なんだってことを痛感させられたんですね。で、僕にとってのローカルは、東京とかじゃなく、「日本」じゃないかと思うんです。日本が僕のローカルで、日本人として日本でまずは受け入れられるのが大事じゃないか。そういう意味でCDっていうのはみなさんが持って大事にしてもらうものとして、出す必要があると思ってます。でも同時にサブスクみたいなものも、これだけ手応えを感じている。ローカルな日本というものを大きな土台にして、サブスクを武器にして飛び出していかなきゃいけない時期が必ず訪れると思ってますね。
ーーUQiYOのいいところって、国籍とか地域の呪縛からいい意味で解き放たれていると感じさせてくれるところだと思います。それでいて日本らしさは失っていない。
Yuqi:日本全土がローカルと考えて、日本人であるというルーツだけはすごく大事にするけど、地方性、地域性みたいなものはあまり気にしない。「日本」という括りで、和楽器の音を取り入れるとかそういうことじゃなくて、日本で暮らして日本の空気を吸っている、という実感だけあればいいんじゃないかなって思います。UQiYOっていうゆるいコミューンが日本全国に広がって、日本全国っていうゆるい、生暖かいコミューンができたら、それをベースに僕らは世界に旅立てればいいかなと思います。
ーーUQIYOにとって「日本らしさ」って何ですか。
Yuqi:僕からすると「細かさ」なのかな。全部細かいと思う。人間関係から、モノ作りの精密さまで含めて。僕はサラリーマンでモノ作りにも携わって6年ぐらいやってたんですけど、ちゃんときめ細かく丁寧に、最後まで諦めないで作る。それに加えて慎重なだけじゃなく大胆にやれれば、日本のモノ作りとして世界に旅立つことができると思うんです。だいぶ崩れかかってはいますけど、でもまだまだ精神性としては根っからの職人民族だと思うし、日本人って。そこはすごく素敵なことだと思ってます。
ーーそう考えるとひとりでコツコツ作っていく作業はYuqiさんに合ってますね。
Yuqi:確かに(笑)。ほんと職人なんですよね、ただの。
ーーいま曲を作るときに日本国内向けとか海外向けとか、意識するんですか。
Yuqi:基本的には全然意識しないようにしてます。日本人向けとか海外向けというよりは、こういうシチュエーションで聞くと楽しいとか、そっちの方で考えるようにしてます。その方が最終的には楽しい気がするし。ただ、これから作るものに関しては、ギアをひとつ変えていく可能性がある。いろいろデータがあるから。
ーー海外の最新の音楽動向と、日本人であるUqiyoの独自性のバランスも考える必要がありますね。
Yuqi:そこはいつも考えてます。今回の楽曲を作っていた時も、時間との戦いの中で今やれるベストを常に考えてました。ただ、これからに関していうと、「その先」に行かなきゃいけないと思ってます。日本の最新の音楽と世界の最新の音楽ではだいぶ開きがある。どっちが前とかじゃなく、違う方向にある。でも自分たちは「その前」に行かなきゃと思ってます。そろそろやる時期だなって。
ーー「その前」とは?
Yuqi:今起こってる現象の最先端ではなくて、その先を見越してやるっていう。それがまったく見当違いの可能性もあるけど、でもそれをやることが、日本っていう国から世界へ何かを発信するってことの本当の意味なのかなって思っていて。
ーーなにかに追従するんじゃなく、自分が先頭に立って新しい価値観を提示しなくちゃならない。
Yuqi:と思ってます。今までもずっと、なんとなくは思ってたんですけど、今になってそれをはっきり意識し始めてる段階かな、という。
ーーそのために一番重要なことってなんでしょう。
Yuqi:マーケティングみたいなことは、基本的に過去のことしか映し出さないので、その影響を受けすぎない。それをちゃんと理解したうえで、一旦脇に置いて、これから何をやるべきかゼロベースで考える、ということですかね。
ーーSpotifyのデータを分析しすぎてもよくないと。
Yuqi:そうなんですよ。なにか新しいものが生まれる時って……たとえばアフリカの音楽がなにかと融合したとか、ちょっとしたアクセントみたいなもので急に何かが変わることってあるじゃないですか。新しいものが生まれるきっかけって、その「何か」なのかもしれないし、そういうものを敏感に拾っていく時期かもしれないですね。僕もいろんな企画で人と一緒に曲を作ったりすると、その化学反応だけでめちゃくちゃ楽しくて、いいものができてるっていう実感があるんですね。それを作る過程にもいい影響がある。そういう意味で、何かと何かを掛け合わせることって、いいものを生む気がします。螺旋のように、繰り返し、ちょっと古いものに戻ったりしながらも、次のものになっていく。次のフェーズはそんな感じな気がしてます。
ーー最後に。タイトルの『Stones』とは、何を意味してるんでしょう。
yuqi:ジャケットの「Stones」って文字、nのところに点を打つと「Stories」になるじゃないですか。「Stones」ってそこらへんに転がっている石ころなんですけど、それぞれにストーリー、歴史がある。僕らがそれに気づいてないだけで。それってすごく素敵なことだと思うんですよ。僕はこうやって曲を出して、曲の一個一個にはストーリーがあるんだけど、聴く人は別に石ころぐらいに考えてもらってよくて。最後に買ってもらった皆さんに点を打ってもらって、自分のストーリーにしてもらいたいなって気持ちもあるんですね。音楽って皆さんの人生のストーリーのBGMだと僕は思ってて、そんなアルバムになったらいいなという気持ちで、このタイトルにしました。
(取材・文=小野島大)
■リリース情報
3rd Album『Stones』
発売日:2018年4月11日(水)
価格:¥2500
<収録内容>
1. U R M’Pocket
2. Sl(n)ow Land
3. 目日口O / 321O
4. Night Safari
5. ROYGBIV
6. 2 -memories-
7. CRYSTALLE feat.Zooey Wonder
8. Dry Dry Try
9. END of the DAY
10. TEQUNO
11. Modrý sen
12. ciRCle
13. loTus feat. Pt. Ajay Pohankar
■ツアー情報
『UQiYO Rolling Stories Tour 2018』
5月25日(金) 大阪Pangea(イベント)
6月2日(土)仙台 The Beatnic(ワンマン)
6月10日(日) 札幌 SOUND CRUE(イベント)
7月7日(土) 富士 world football bar KICKERS(ワンマン)
7月8日(日) 名古屋Live & Lounge Vio(イベント)
7月14日(土)渋谷 clubasia (ワンマン)