UQiYOが語る“サブスク時代”の音楽の届け方 「ローカルな日本を土台に飛び出す時期が必ず訪れる」

UQiYOが語る“サブスク時代”の届け方

「“体験”というものの大切さは未だにある」

ーーなるほど。今回のプロジェクトを始める時、テーマやコンセプトはある程度考えていたんですか。

Yuqi:まったく考えなかったですね。

ーーじゃあどういうモードで始めたんです?

Yuqi:イケイケっていうか(笑)、よしやってやるぞ、と。これは新しい試みだし、自分にとっても挑戦だって気持ちもあったし。あとは毎月、その時の季節だったり世の中で起こってること、音楽的なムードだったり、そういうこともフレッシュに感じ取って曲に落とし込むようにしてました。なのでほんとガチャガチャで。毎月毎月、結構振り幅があったんじゃないかと思います。

ーー一貫性を持たせるよりも、その時点の気分とか感情とかコンディションに素直に作っていった。

Yuqi:そうですね。普通バンドだと絞るのが大事だったりするじゃないですか。これは僕らです、というカラーみたいなもの。そこをものすごく最低限のレベルまで下げて、自分で「やべえ、一番かっこいい」と思うものを出すことに、ひたすら終始しましたね。

ーーじゃあアルバムの設計図みたいなものもなく。

Yuqi:そうですね。数カ月前にアルバムにしよう、CDを出そうって話になって、初めて「どういうアルバムになるんだろう」って考え始めました。

ーーストリーミングで発表するなら、それをそのままプレイリストにすれば今回のアルバムと変わらないような気もしますが、CDにするとまた違うわけですね。

Yuqi:モノの価値ってまだあるのかなと思ってて。やっぱり最終的にはCDで出したいと今は思ってますね。

ーー以前『Black Box』(2016年)のインタビューの時は「ストリーミングは便利だけど感動がない」というようなことをおっしゃってたんですが、そのへんは考え方が変わった部分もあるんでしょうか。

Yuqi:そのころに比べると、自分自身の音楽の聴き方がだいぶ変わったんです。プレイリストの良さをだいぶ享受してるので。ただ「体験」というものの大切さは未だにあると感じてるんです。「プレイリストで聞くという体験」もあるけど、それ以外にもいちアーティストとしてお客さんに提供できる方法はいくつかある。その模索は諦めちゃダメで。そここそがクリエイティブな部分だと思ってるので。

ーー個々の曲から受ける印象と、その楽曲が一定の曲順に並べられ、ある流れのある固まりとして聞いた時に受ける印象は変わると思います。実際に今回の楽曲を制作した時と、アルバムとしてまとめる作業の段階では、ご自分の捉え方とか感じ方は変わってきましたか。

Yuqi:そうですね……アルバムって言っても今回は「連載の単行本化」という考え方なので、曲順も時系列にしようと思いました。従来の「アルバム」の概念だと、シャッフルして一定の流れを作って、みたいなのがあると思うんですけど、今回は1年間という時間の流れを曲を通して感じてもらえればいいのかな、と。お金をもらって音楽を作らせてもらってる、という立場である以上は、ある一定の水準以上の完成度の高いものにするのは大事なんですけど、その中で自分自身の成長とか進歩みたいなものが毎月あるわけですよ。ある月(の楽曲制作)に気づいたことが自分の学びとして次の月に活かされてたりする。結構「修業感」があって、それがだんだん強くなってる。

ーーああ、修行の塔をどんどん登ってるみたいな。

Yuqi:そうそう(笑)。ミックスでもマスタリングでも、やればやるほど奥が深くて。僕は独学なんで、いつも手探りだったんですけど、今回はずいぶん学びましたね。最後の「loTus feat.Pt. Ajay Pohankar」は集大成感があって。今までの曲で学んだことを全部注ぎ込んで作りました。

ーーなるほど。前作から今作までの変化というと、キーボード担当のPhantaoさんが辞めて、2人編成になったことも挙げられます。

Yuqi:彼はオリジナルメンバーだったし、すごく大切なメンバーだったんです。去年の頭ぐらいに辞めたいと言われて。なんとかしようと思った時期もありました。彼にとどまってもらうために、どういうことができるか。なるべく彼の存在感が引き立つような曲を作ったりとか。それはこのアルバムの前半の方に入ってたりするんです。

ーーなるほど。

Yuqi:でも彼なしにやっていかなきゃいけないんだって腹をくくったタイミングも途中であって。そこからは完全にキーボードを全く意識しない作り方になったんです。

ーーああ、そういう一種のドキュメンタリーにもなっているわけですね。

Yuqi:そうかもしれないですね。なので後半は完全にギターロックみたいになってる(笑)。毎月毎月、いっぱいいっぱいの状態でやってたので、その時に起こってたことや考えてたことがそのまま反映されてる。それが全体としてどう見えるかなんて、先月ぐらいまで考える余裕もなくて。

ーーでも、今何かを創作することのリアルってそういうことじゃないですかね。U2みたいに何年もじっくり時間をかけてアルバムを作るとか、今の世の中の流れからすると少し違う。その都度の状況や感情の流れにフットワーク軽く対応していくことが要求されてる。特にサブスクの時代になって。

Yuqi:そうですねえ、確かに。フットワークの軽さはあるかもしれません。

ーーやっている間の反響はいかがでしたか。

Yuqi:そうですねえ、わかりやすいのはSpotifyなんですけど、アーティストページというのがあって、かなり詳しくデータが見れるんですね。性別、年齢、どの国のどの都市でどの曲がどれぐらいの回数再生されてるか。人数単位で出てくるので非常に面白い。それが曲を発表するたびにわかりやすく増えていって、最終的には累計で150万再生とか、それぐらいきました。日本だけじゃなく欧米やアジアのいくつかの主要都市で意外に大きな数字が出たり。それも曲によって違いがあって、非常に興味深くて。詳しい解析はこれからしようと思ってるんですけど、非常に貴重なデータなので、次にやっていくアクションにはすごく参考にできると思いますね。なかでもプレイリストの影響は大きくて。イギリスのあるプレイリストに入った途端、どんどんどんと数万単位で増えたり。何回かそういう現象があって。

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