The Floorが見せた様々な景色 “第二の出発点”となった『In Train Tour』ファイナル公演
「みなさん、乗り心地はいかがですか?」(ササキハヤト)
The Floorが、3月23日に東京・渋谷WWWにて、『The Floor Presents「In Train Tour」』のツアーファイナル公演を開催した。2012年10月に北海道札幌市にて結成されたThe Floorは、ササキハヤト(Gt/Vo)、 ミヤシタヨウジ(Ba)、永田涼司(Gt)、コウタロウ(Dr)の4人からなるロックバンド。海外ロックの系譜を持ちつつ、J-POPの要素もブレンドした聴き心地の良いサウンドと、洗練された演奏をしながらも無邪気に“音”と遊ぶ姿、その絶妙なバランス感覚が、観る者に元気と幸福感を与える、まるで魔法使いのようなバンドだ。
以前、2月7日にリリースされたメジャー1stアルバム『ターミナル』についてインタビューした際に、ササキはこんなことを語っている。「ここから僕らの音楽が広がっていく出発点にしたかったというか。その気持ちを『ターミナル』というタイトルに込めました」(引用:「The Floorが語る、第二のスタートラインに立った今「どうせなら一番高い山を目指したい」」)。
3月9日から幕を開けた同ツアーは、地元・北海道にある札幌Sound Lab moleを“出発点”にし、大阪、そして東京と各地を旅しながら、The Floorの音を届けて来た。そして、“ターミナル”となったこの日は、『ターミナル』のリード曲「18」にちなみ、18曲(+アンコール2曲)をノンストップで演奏。
「In Train Tour」というツアータイトルにもあるように、まるで彼らが、観客を乗せた列車を明るい目的地へと先導していくようなライブであった。加えて、“準備は整った、ここから前へ前へ進んでいく”というようなメッセージ性と、彼らの“終着駅”が明るい未来であることを感じさせた。
1曲目に、アルバム『ウェザー』からピースフルな楽曲「Cheers With You」を披露したThe Floor。観客たちに向かって“乾杯”の挨拶を行なった。眩しいほどの白いライトが照らす中、<Hey! Cheers With You>というコーラスが会場を包み込む。そしてそれを追いかけるように、ササキの歌声<明けない夜なんてないんだ>が響き渡り、真っ直ぐと伸びていく。
続いて、新曲「ドラマ」が始まると、永田のキャッチーで弾むようなギターリフとともに、観客の体も動き出す。サビでは、一斉に手が上がり、その光景を見て永田とミヤシタがピョンピョン飛び跳ねながらも、丁寧に一つひとつの音を紡いでいく。そしてコウタロウもまた、笑顔全開だ。安定したドラムで基盤を築きながらも、こんなにもワクワクすることはないと言わんばかりに、軽やかにポップな音を打ち鳴らす。まさに“音”と戯れているような彼らの姿に、観ているこっちまで楽しくなる。
その後、『ウェザー』から「はたらく兵隊さん」、アルバム『ライトアップ』から「Toward Word World」「リップサービス」、そして新曲「POOL」と彼らの言葉を借りれば“青春性”溢れる前向きなキラーチューンが続く中で、会場の空気をガラッと変えたのが新曲「煙」だ。スモークが焚かれた暗闇の中、永田の情緒的なギターだけが鳴り響く。追って、コウタロウの乾いたドラムの音が添えられ、より一層もの悲しい雰囲気が漂う。そこから、まるでスタートの合図かのようにシンバルが4回打ち鳴らされると、ギター、ベース、ドラムが一斉に暴れ始める。激しさの中にもきっちりとグルーヴを生み出し、そこにササキの緊迫感と切なさ、そして芯にある温かさが心地よい歌声が混じり合う。