ミニアルバム『虚構集』インタビュー

Reolが語る“音楽を続けていく”という強い思い「辛くても曲を書き続けたことがプラスになっている」

これまでの作品とは別のジャンルとして確立できた

ーー強い音なのに、街角で流れていても違和感がないような、さすがのアレンジになっています。アレンジについては最初と最後がミトさん、2&4曲目がギガさん、真ん中の3曲目が瀬恒啓さんという、バランスの取れた構成ですね。

Reol:先に5曲というのを決めていて、埋めていったときにすごく聴きやすい並びにできたかなと思います。「エンド」と「あ可よろし」が曲としても対極的ですし、「エンド」で始めるというのは、『エンドレスEP』を出した時点でもう決めていたので、曲順はわりとすんなり決まりました。ただ、ギガには5曲とも少しずつ触ってもらっていて、例えば「エンド」から「平面鏡」につなげるために、「エンド」の最後の部分を少しいじったり。ちゃんと繋がりを意識したものにはなっていて、アルバムを通して聴いたときに、すごく気づきがあるような作りになっていると思います。

ーー歌詞も音も尖って響く部分がある作品のなかで、やはりどこかイノセントな印象があり、素直に刺さる歌声の魅力をあらためて感じました。今作はすべてReolさんの作詞・作曲ですが、ボーカルについてはどう考えましたか?

Reol:客観的に聴いたときに、私の声で特徴的なのは、ロングトーンの響きだと思うんです。高いキーで張って出したときに、倍音がすごく鳴るんですよね。そこを名刺代わりにしよう、みたいな気持ちがあって、サビにそういうメロディを持ってくる、みたいなことは意識しました。

ーー「エンド」もまさにそうですね。ちなみに、歌入れで一番、苦労した曲は?

Reol:「あ可よろし」のAメロがとにかく滑舌命で、練習ではできていても、グルーヴに乗せて歌うのに苦労しました。ミトさんと沼にハマってしまって、自分で作ったのに「すごい曲つくったね」って(笑)。そもそも、人に聴かれながらレコーディングする、というのが『極彩色』の「約束の蒼」以来、3年ぶりで。宅録だったら自分のペースでいいんですけど、最初は歌い直すのが申し訳なくて。ただ、かなり早い段階でいつもの感じがスタジオでも出せるようになりましたし、マイクも質が高いものを使えるので、すごくよかったと思います。エンジニアさんと馬が合ったのが大きかったかもしれませんね。

ーー全曲自分で背負う、というのはプレッシャーもあったのでは?

Reol:そうですね。これまでの作品よりもいいものを作らなければ「落ちた」と思われてしまうし、その水準はわりと高いと自負していて。結果として、落ちることなく、これまでの作品とは別のジャンルとして確立できたかなって。

ーーあらためて、この一枚をリスナーにどう届けたいですか。

Reol:これまで作ってきた作品よりもさらに愛情は深くなりましたし、本当に捨て曲がないと思います。5曲というボリュームにしたのも、まんべんなく手の込んだことをするためで、一つひとつの楽曲を丁寧に作れたかなと。あまり共感を求めて曲作りをすることがないので、聴いてくれた人それぞれの解釈が正しいと思うのですが、リアルタイムで一緒に楽しんでくれる人が増えていくといいな、という気持ちはすごくあります。メンバーを失って寂しいところはあるけれど、同時に、これからはリスナーの人ともっと1対1の関係になって、近い存在になっていくと思うんです。音楽の提示の仕方も、作品の内容もすごくいろんな方向に振れているけれど、それでも振り落とされずについてきてくれるファンの方々の存在は本当にありがたいと思うし、「媚びなくていい人たちなんだ」と思わせてくれるから、好きなものを作り続けられるんです。それは心強いですね。

ーー充実した一枚が届き、この先の活動にも期待が高まります。

Reol:やっぱりフルアルバムを出したいですね。今回は私のソングライティングで5曲、というのがこれまでのリスナーにとっても実験的だと思うので、次のアルバムがどんなものになるのか、というのが勝負というか。もちろん、常に勝負だと思ってやってきているんですけど、いまの自分がパッケージするとこうなる、というものをフルアルバムで示せたらいいなと思います。マイナスに偏っていた気持ちがゼロになって、無垢というか、好きなものを作れる、という気持ちになっていて。

ーー気持ちはマイナスに触れても、そこで得られたものが確実にあったということですよね。今作はそれを弔って認めてあげた、という一枚で。

Reol:そうですね。音楽の一番いいところだと思うのが、嫌なことがあってひとりで部屋で腐っていても、それを抽出して曲にしてしまえば、愚痴っぽくなっていた日々も無駄にはならない、ということなんです。失恋をしても、そのこで名曲ができればまあOK、みたいな(笑)。やっぱり、辛くても曲を書き続けたことがいまの自分にとってプラスになっていると思うので、この先も自分のペースを崩さずに、アルバム制作に臨んでいきたいですね。

(取材・文=橋川良寛/写真=竹内洋平)

■リリース情報
『虚構集』 
発売日:3月14日(水)
価格:【通常盤】1,800円(税抜) 
【初回限定盤】2,500円(税抜)/CD+ブックレット
<初回限定盤特典>
・『虚構集』オリジナル・コンセプトブック封入(全40P)
<収録曲>
M1.エンド
M2.平面鏡
M3.ミッシング
M4.カルト
M5.あ可よろし

ライブ情報
『刮目相待』
「刮目相待 -六の宴-」
6月1日(金)東京・EX THEATER ROPPONGI
開場18:00/開演19:00

「刮目相待 -八の宴-」
6月8日(金)大阪・Namba Hatch
開場18:00/開演19:00

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