Reolが語る“音楽を続けていく”という強い思い「辛くても曲を書き続けたことがプラスになっている」

Reolが語る、音楽に対する強い思い

 Reolが、3月14日にミニアルバム『虚構集』をリリースした。今作は、ビクター〈CONNECTONE〉に移籍後初のソロとしての作品となる。今回のインタビューでは、今作に至るまでの経緯とReolとしての創作意欲、収録曲に込めたそれぞれの思いについて聞き、さらに音楽への向き合い方やリスナーとの関係についても語ってもらった。(編集部)

これまでの人生自体、嘘だったんじゃないか

ーー「REOL」の解散から間を置かず、ソロアーティスト・Reolとしての作品が届きました。あらためて、ここに至る経緯を教えてください。

Reol:REOLの解散は発展的なものだったのですが、私は最後まで反対派だったんです。だから、ひとりではすぐに次の展開に、という気持ちになれなくて。でも、決して創作意欲が尽きたわけじゃない。だから、ソロとして新しい受け入れ先があれば続けるし、なかったらもう、潔く辞めようと思っていたんですよね。それでマネージャーに相談していたときに、〈CONNECTONE〉というレーベルを紹介していただいて。調べてみたら、音楽にすごい情熱を持っていて、数字だけで判断しない、今の時代に本当に珍しいレーベルだと思って、ヘッドの高木(亮)さんに会ってみることにしたんです。そこで、「この人にだったらついていける」と思ったので、昨年11月から所属させてもらって、今作の楽曲自体は年内に全部書き上げました。

ーー「REOL」のデビュー時にインタビューさせてもらったとき、「本気で打ち込んできた部活」のようなたとえが印象的でした。それを考えると“卒業”というイメージが近いのかなと。今作でもギガさんがアレンジを手がけていたり、お菊さんがクロスフェード動画を制作していたりして、“進路”は違っても刺激を与えあって、また道が重なることもあるというか。

Reol:本当に部活的な勢いできていた感じはあって、そこをビジネスとして、メジャーアーティストとして、というなかで、理由付けがうまくいかなかった、という部分もあったんです。“卒業”という捉え方は正しくて、これからは各々がたまに再会しながら、スキルを磨いていければいいな、という感じですね。

ーーそのなかで、『虚構集』という名付けられた本作のテーマ、“虚構”、“虚像”というものについても聞かせてください。ネット上でリスナーの想像を拡げる“ファンタジー”な存在だったReolさんが、ライブも重ねてどんどんリアルな存在になっていく過程とも重なると思いました。

Reol:そうですね。そもそも「れをる=Reol」という存在は、嘘から始まっていると思っていて。リアルに存在しているただの田舎の高校生だった私が、ネットの世界にそれとは違う偶像を作って、それがいままでずっときているという。あとはユニットが解散して、いきなりソロになって、曲を作るというときに「これまでの人生自体、嘘だったんじゃないか」と、世界線を移ってきたような感覚もあって。そこで虚勢を張ってポジティブなことを書いても、それこそ嘘じゃん、という感じで、『虚構集』というタイトルに決めました。『極彩色』(2015年7月にリリースされた、「れをる」名義の1stソロアルバム)からの流れで、ソロとしてリリースする音源集は漢字三文字で統一したかった、というのもありましたね。

ーー全体の歌詞について、強い言葉が並びますし、いらだちや疑心暗鬼も感じますが、その裏に愛があるな、という感じがします。1曲目の「エンド」はそうかなと。

Reol:確かに、執着って愛だと思いますよね。「音楽で食べていく」ことにはそんなに執着はないんですけど、音楽を好きなこととしてずっと続けていきたい、という気持ちはすごく強くて。そういう部分は出ているかな。私、けっこう脳みそで音楽を作るんですよ。ギガなんかは本能的に、脈略なく作りたいものを作って、それが魅力的なんですけど、私は「次に出すならこの曲じゃないよね」って、ボツにしたり(笑)。今回、「エンド」という楽曲のMVを「自分の葬式」というテーマで出したのも、その流れのなかでのことですね。

[MV] Reol - エンド

ーーユニット解散への思いも含めて、言葉の外にある情報量がとても多い曲だと感じました。どんなふうに作っていきましたか?

Reol:最初にできた曲で、本当に1~2日くらいで完パケみたいなかたちになったんです。「平面鏡」もほぼ同時進行だったんですけど、1番だけ書いて、2番に手をつけるまでけっこう時間が空いたので。考えたのは、ユニットもそうだし、その流れで音楽をやっていた自分を、一度弔ってあげたい、ということで。弔うとか葬式って、ネガティブなイメージを持たれがちだけれど、すごく愛情のある行為だと思うんです。なので、そこから次のステップにいきたいと思って。

ーーそれまでの道のりをちゃんと認めてあげて、その上に立って表現していくと。

Reol:そうです。第1弾というより第0弾、という感じで。そこからスタートしているので、次の作品が挑戦的なものになると思います。

ーーミトさんのアレンジもすごく効いていて、尖ったロックの部分と耳馴染みのよさのバランスが絶妙ですね。

Reol:ミトさんとは初めてやり取りさせていただいたんですけど、ミュージシャンの選定の時点で、「これはいいものにしかならないな」と思いました。LiSAさんのサポートもされているギタリストの山本陽介さんもそうですし、ミトさんのベースもめちゃめちゃカッコよくて。

ーー重要なメッセージを伝える曲として、説得力のある音になっています。同時進行で進んでいた「平面鏡」は、周囲のものが空虚に見えてくるような冷めた感覚を、音に乗って転がるような軽快な言葉で表現しているのが印象的でした。2番の歌詞を書くまで時間が空いた、ということでしたね。

Reol:そうですね。いつも勢いで書き始めるので、1番はけっこうバラバラで、2番あたりからやっとまとまりを意識し始めるんです。「平面鏡」はそういう部分が顕著に出ているかもしれません。編曲はギガで、解散前に出した『エンドレスEP』がシティエレクトロ寄りの音だったので、そことの差別化は図りたいな、と思っていたんです。ユニットとしては温かみがあるというか、暖色系のイメージがキーになっていたけれど、私個人のイメージは、もともとあまり温度のない、寒色系だと思うんですよね。まさに「冷めた」感じというか。そういう部分も音に落とし込みたいと思ったら、ああいうスタイリッシュな音になりました。

ーー続く「ミッシング」ですが、ボーカルにも少し自暴自棄感がありますが、<正気の沙汰じゃないさ>と、振り切るような強さも感じます。

Reol:「エンド」は<僕は一人で此処に突っ立っている>というフレーズだったり、わりと“もう取り返しの付かないところまで来てしまったから、がんばるしかない”という感じですが、「ミッシング」はそのあと、何でも好きに作れる時期だったので、自分の世界に逃避しちゃっている感じがありますね。<四十九の遊戯をしていれば>という歌詞は四十九日のことを言っていて、“死ぬまでの暇つぶし”じゃないけれど、閉じた世界で逃れられない葛藤、みたいなことを言葉にしました。

ーー「カルト」も面白い曲で、エスニックな音もそうですし、「信仰しろ」と言いながらなにかにすがりつくような歌詞も印象的でした。

Reol:宗教というのは依存の突き詰めたかたちだと思うんですけど、無宗教でも、みんななにかにすがっていますよね。そんなことを「カルト」という言葉からの広がりに委ねて、1曲作ってみようと。アレンジも私の打ち込みの時点で詰めていて、最初からハープだったりシタールだったり、エスニックな楽器を使っています。

ーー般若心経の引用も効いていますね。

Reol:私、子どものころに最初に覚えた歌が、「チューリップ」とかじゃなくて、般若心経だったらしいんですよ(笑)。2歳のときに、おばあちゃんがずっと唱えていたのを覚えたみたいで。リズム遊びっぽいところもあるというか、けっこうラップ的なんですよね。お経には興味があって、一時期調べたりしていました。

ーー般若心経はニコ動でも流行りましたが、ポップス、ロック、ハードコアなど、アレンジによって歌詞の解釈が変わっていて面白かったですね。

Reol:そうですよね。私としては、仏教はけっこうひねくれたところがあって、それがいいなと思うんです。許しを乞うのではなく、解釈によっては自分に降りかかる嫌なことを、人を見下して許す、みたいなことにも捉えられて。歌詞としては般若心経そのものではなく〈観自在菩薩ニハ非ズ〉としていて、「私は神様ではないから、すべてを許すことはできない」という意味にしています。

ーーそして、最終曲は「あ可よろし」。“この上なくいい”という、最高にポジティブな言葉がタイトルになっていて、葛藤もありながら、それでも前を向いてしまおうぜ、というエンディングになっています。

Reol:スタッフさんから「前向きな曲もあるといいよね」と言われて、デモを作ってみたんです。そういう言葉がなければできなかったですね。当初は本当に精神的に落ちていて、ユニットで行動していたときと、ひとりで打ち合わせにくる気持ちのギャップにもやられていて。そんなときに、「明るい曲も書いてみたら?」という言葉があって、振り切ることができたんです。

ーーただ、取ってつけたような感じはしなくて、〈あなたが向いている方角こそ 前と言いきってよろしい〉など、Reolさんらしい言葉だなと思いました。

Reol:そうですね。この曲は“自分対街”というか、このミニアルバムのなかで一番社会的で、ちゃんと人と人とのつながりに目を向けようとしている曲だと思います。みんな自分が向いている方向が前であればいいな、と思っているはずで、それをちゃんと肯定してあげたい。そう思って、「すばらしい」という意味がある、花札の「あ可よろし」という言葉をタイトルにしたんです。

ーー「それでいいんだよ」みたいな言葉ではなく、強く肯定して背中を押している感覚が、再出発の一枚によく合っています。

Reol:クロスフェード動画を出したときに、一

番「聴いてみたい!」と言われた曲なんですよね。ネガティブに落ちていかなくてよかったと思います(笑)。

ーーこの曲もミトさんのアレンジです。

Reol:ミトさんは私の曲について、「いまの若い子がつくらなそうな曲だよね」って言ってくださるんですよ。この曲は最初に聴いていただいたとき、「シューゲイザーっぽいね」と言われて。それで、「ギターはNARASAKIさんに弾いてもらったら面白そう」という話になって、ちょっとノイジーな感じのアレンジにしてもらっています。

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