『POWER』インタビュー

HER NAME IN BLOODが語る、バンドの進化と新たな挑戦「シンプルな楽曲は強い武器になる」

「印象的な言葉を自然とタイトルに選んでました」(IKEPY)

ーーシンプルといえば、今回はアルバムタイトルのみならず、曲名も全11曲中10曲がワンワード。しかも、そのタイトルには非常に象徴的な単語が使われています。

MAKOTO:言葉の意味も、ものによっては意味深だったりして。例えば「IDENTICAL」は同一性というような意味だし、「SAVIOR」は救世主であるとか、ワンワードで耳に残りやすい、覚えやすいところは意識しました。

HER NAME IN BLOOD - SAVIOR [Official Lyric Video]

ーー曲名は歌詞ができてから決めるんですか?

MAKOTO:曲によって違って、例えば「KATANA」は歌詞より先に“刀”というワードが出てきて。刀っぽい曲だなと思ったんです(笑)。

TJ:リフが刀っぽいなと。

MAKOTO:じゃあ「KATANA」ってタイトルにしようか、と。そこから、IKEPYが刀をテーマにして歌詞を書いて。

IKEPY:今回のアルバムに関しては、どれもワンワードでいこうと決めたわけではないんですけど、印象的な言葉を自然とタイトルに選んでました。

ーーワンワードの曲名が並ぶところや、それこそアートワークも含めてシンプルかつキャッチーに統一されているなと。

TJ:ジャケも含めて、一回見ただけで覚えちゃいますし。

DAIKI:アー写もね。

TJ:そうだね。一発で俺たちだってわかるという(笑)。

MAKOTO:あのアー写を使ったアドボードを、渋谷の地下コンコースに使ってもらった時期がありまして。実際、自分で足を運んで観に行ったんですけど、すごすぎて近寄れなかったです(笑)。

IKEPY:変な感じだったよね(笑)。

ーーそこも含めて、今回はすべてがアイコン的な作りになっていて、すべてキャッチーさにつながっている。ヘヴィなバンドにとってキャッチーさというのは、日和ったとかマイナス要素として見なされることも多いですが、このアルバムに関してはキャッチーさはあるけど、ヘヴィさは損なわれていなくて。

TJ:全然ですよね。

ーーそうなんです。むしろ、お互いの要素を高め合っていると思いました。

DAIKI:まあ、そこ(ヘヴィさ)は絶対に変えないですよね。

MAKOTO:全然うるさいですよ。アルバムタイトルも『POWER』ですし(笑)。

IKEPY:一見シンプルにはなったけど、僕らがやってることが別にシンプルになったわけではないし、むしろ増えている要素のほうが多い気がするし。それを、ごちゃごちゃ聴かせないテクニックが身に付いただけなのかな。

「いろんな聴き方があるから、そこまで制限したくなくて」(MAKOTO)

ーーそれと、今作で興味深いのがミキシングエンジニアを3人起用したことでして。

MAKOTO:ロックだと少ないかもしれないですけど、ポップスでは普通にあることですよね。

ーーこの手のサウンドだと非常に珍しいことですよね。この人選は?

MAKOTO:まず、トム(Tom Lord-Alge)は前作、前々作もやってくれていて、僕らのことを結構気に入ってくれているみたいで、今回もやりたいと言ってくれたんです。ザック(Zakk Cervini)は、レーベルの制作チームと関わりがあったこともあって、彼から申し出があったらしくて。HNIBが今までリリースした作品を聴いて「自分だったらこうできる」と言ってくれたようで、僕自身も最近の彼のプロデュース作品やミックス作品がすごく好きだったので。

ーージャンル的にも幅広くやられている方ですよね。

MAKOTO:そうなんですよ。ただ、メタルとなると珍しくて、その組み合わせがちょっと面白いかなと思ってお願いしました。で、3人目の松金(昭治)さんにはいつも録音をやってもらっているんですけど、ずっとラフミックスを作ってもらっていたんです。その音がすごく良くて、だったら今回は曲のタイプによっては本ミックスをお願いしようかなということで、満を持してオファーしました。

ーー曲の振り分けは、どういう基準で決めたんですか?

MAKOTO:特にスタジアム系の曲はトムにお願いして、モダンなタイプはザック、その中間は松金さんにやってもらいました。

ーークレジットを見ると、ザックはアレンジにも関わっていますよね。

MAKOTO:自分たちとしてもフルアルバムは4枚目で、今までずっとセルフプロデュースでやってきたので、ここでちょっと新しい風というか、自分たちが思いつかないようなことを第三者目線でアプローチしてもらったらどうなるんだろう? と思って、数曲お願いして。

DAIKI:こちらが送ったものに対する戻しの中から、良いと思ったところはそのまま取り入れて。

MAKOTO:なかなか面白いアプローチも多くて、面白い作業でしたよ。

ーーいろんなタイプの曲がある中で、僕が気になったのはクラシックの名フレーズをギターソロに取り入れた「MASK」でした。

DAIKI:ああ(笑)。絶対にみんな「これ、どこかで聴いたことある!」と思うはずなんです。以前からああいうオマージュはやってみたくて。とはいっても、今回は適当に弾いたらハマっただけで、これも面白いかなと思ったんです。

ーーギターソロはキャッチーですけど、楽曲全体としては非常にブルータルというアンバランスさも面白いですし。

MAKOTO:「舐めんなよ!」って感じだし。歌詞も一番攻撃的だと思うんですよ。

DAIKI:こういうハードコアでバイオレンスな世界観がすごく好きだからね。

ーーそういう曲がありながら、ラストの「SIMPLE THINGS」ではさらに驚かされます。

TJ:これは挑戦しましたね。

MAKI:やっぱり前のめりっすね(笑)。

MAKOTO:今回のアルバムインタビュー、「SIMPLE THINGS」になると全部……。

DAIKI:TJが前のめりに答えるという。

MAKI:大先生、お願いします(笑)。

TJ:まあ簡単にいうと(笑)、終始メロディを歌う曲が今までなかったし、そこに特化したチャレンジをしたいなと思いまして。IKEPYはQueenの明るいメジャーキーのバラードとか好きだし、その要素をうまく引き出せたらなと思って、ちょいちょい2人で作り込んでいたら、そこにザックからのアイデアも入って。結果としてすごく良いものに仕上がったと思ってます。

TJ

ーーIKEPYさんにしても、ここまでがっつり歌うのは大きな挑戦ですよね。

IKEPY:そうですね。結構前からTJとはこういうメロディを歌うだけの、なおかつシンプルなロックをやってみたいねって話はしていて。それが今回ようやく実現できました。

ーーこの曲でアルバムが終わると、すごくホッとするんですよ。

TJ:映画でいうとエンドロールみたいな感じですかね。

MAKOTO:こういうアメリカのラジオでかかってそうな、カラッとしたハードロックを自分たちがやってみたらどうなるんだろうと。バンドとしても、今までにないアプローチだったので、大きな挑戦でしたね。

ーーここまで新しいことに挑戦していると、アルバムの広がり方次第では今までアプローチできていなかった層を掴めるかもしれませんね。

MAKOTO:いろんな聴き方があると思うから、僕たちとしてはそこまで制限したくなくて。例えばプレイリストで自分だけのHNIBベストとか作って聴いてくれてもいいし、アルバムの曲順が好きだったらそのまま聴いてくれたらいいし。まずはいろいろ試してみてほしいですね。

(取材・文=西廣智一/写真=下屋敷和文)

『POWER』

■リリース情報
『POWER』
発売:2018年4月4日(水)
価格:¥2,600(税込)
〈収録曲〉
01.POWER
02.DARK
03.KATANA
04.SAVIOR
05.MASK
06.KINGSLAVE
07.IDENTICAL
08.CALLING
09.FALLEN
10.FORSAKEN
11.SIMPLE THINGS
https://Japan.lnk.to/HINB_powerwe

■ライブ情報
『FULL POWER TOUR 2018』
5月4日(金祝) 仙台MACANA
Guest:NOISEMAKER
5月10日(木) 名古屋CLUB UPSET
Guest:打首獄門同好会
5月11日(金) 心斎橋THE LIVE HOUSE soma
Guest:ANOTHER STORY
5月13日(日) 福岡Queblick
Guest:GYZE
5月17日(木) 渋谷CLUB QUATTRO ※ツアー・ファイナル・ワンマン

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