『Feat.ソニーミュージックオーディション』スタッフインタビュー
SNS時代、オーディションはこう変わる ソニーミュージックが築く、アーティストとの新たな関係
梶「レーベルやオーディションの立ち位置も変わっていく」
――そういった中には、先ほど平林さんからお話があったように、メジャーレーベルに所属していなくともすでに多くのフォロワーを抱えている人も多いですよね。SNSだけでなく、SoundCloudやBandcampなどの発信手段を持っている人もいる。そういった方は、わざわざオーディションに応募するモチベーションを感じないかもしれない。そういったあたりについてはどうでしょうか?
梶:もっと大きな話を言うと、レーベルの立ち位置もオーディションの立ち位置も、今後変わっていくと思うんですよ。たしかに、なんでも自分でやれちゃう人たちにとっては「レーベルなんていらないじゃん」と思うかもしれない。それはそれでいいと思うんですけど、じゃあ、そんな時に僕たちはレーベルとして何ができるんだろうということを模索していかなければいけない。そこで、やっぱりメジャーレーベルだと圧倒的に違うものがある。
ーーそれはなんでしょうか。
梶:簡単に言うと、組織力や資金力ですね。それを使って、アーティストの魅力を世の中にもっと広く伝えるお手伝いができる。特にソニーミュージックはできることが沢山ある。それを利用することができるのが、このオーディションの面白さだと思うんですね。たとえばインディーズで活動している人、すでに事務所に所属している人で、メジャーに興味ないと思っている人も、それを試すことができる。あとは、変な話、例えばお笑い芸人がたくさんいるプロダクションに所属しているような人に応募してもらってもいいし。そういった間口は広げたほうがいいと思っています。
平林:ただ、やっぱり音楽が主語になるのがこのオーディションにおいては大事になるとは思っています。TwitterやInstagramなどのわかりやすいSNSも指標にしますが、そこだけに捉われないで、音楽がいかに聴かれているのかを評価する。たとえば海外にはSpotifyで沢山再生されていてもSNSにそこまでフォロワーがいないアーティストも多いので。
梶:一時期は、僕も「いいコンテンツを作れば必ず届く、必ず世に認められる」と思ってたんですよね。でも今はそうじゃない。いいコンテンツと共に、いい届け方がないと届かない時代になっている。このオーディションはそれを探っていく実験の場でもあるんですね。だから我々としてもどう転ぶか見えていない、未知数のところがある。
ーーどういうことでしょうか。
梶:ファイナリストに残った人たちは、それぞれ違うコミュニケーションを探るようになると思うんです。同じお題を与えられるのではなく、どうやってトレンドを生み出すのかという手段が様々で、そこには各々のストーリーがある。そこに対して我々が何を手助けできるのかを考えてやっていかないと、このオーディションは面白くならない。そこのコミュニケーションの作り方みたいなことを僕らも勉強させてもらいながら一緒にやっていきたいと思っているんです。そういうことができたら、すごく面白いオーディションにできるのではないかと思います。
梶「トレンドとは“みんなが気にする定性的なもの”」
――このオーディションのキーワードとして「トレンド」というものがありますよね。音楽トレンドを作った参加者が優勝となる。では、みなさんはトレンドというものをどう捉えてますでしょうか。
梶:僕は普段マーケティングを生業にしてるので、その中で考えるならば、今の世の中の人が指標にしているもの、ということですね。かつてはオリコンのランキングやレコチョクやiTunesのチャートで1位になることがそれなりの指標になった時代もあるんですよ。でも、そういう定量的な指標だけでは昔に比べたら明らかに通用していない。若い子たちがランキングだけを信じているわけではないんですよ。でも、TwitterやYahoo!のトレンドは気にしている人が多い。これだけ情報が多い時代に、みんなトレンドだけは気にしてるんですよね。だから僕は「トレンドとは何か」と聞かれたら、「みんなが気にする定性的なもの」と言いかえるようにしています。
赤林:僕が考えるトレンドは、オリジネーターになる人ですね。流行を誰が生み出したのかを辿ってみると、そういう人が最初にいて、それを真似して広がっていくようなところがある。そういう流れを作った人がトレンド、すなわちオリジネーターなんだと思うんですね。たとえばSuchmosが出てきた後に、彼らのようなタイプの音楽が流行っていたりする。今回のオーディションでも、作った楽曲が真似されて広がっていくようなアーティストが出てくるといいなと思います。
高橋:さっきのオリコンの話もそうですけど、価値基準の指標としてきたものが通用しなくなってきている中で、SNSが唯一面白いのはそこにみんながわくわくするような何かがあるからだと思うんです。そういったわくわくする何かを作って、それを広げた人が勝者になっていくと思います。言ってしまえば、これはソニーの組織力と300万円の資金を使ってあなたの夢を広げましょうというオーディションなんですね。そういう中で、僕らも見たことのないようなものを見つけたいですね。
平林:今の日本にヒットチャートが不在であるというのはよく言われていることで、そういう時代にみんなが何を信頼しているのかというと、それは自分の身の周りに聴こえてくる音楽だと思うんですね。たとえばそれがTwitter上のフィードやタイムライン、もしくはYouTubeの関連動画だったりする。そこで聴こえてくる量が多いものがトレンドだと思います。ただ、そういったプラットフォームのアルゴリズムをハックして人の目に晒すことって、案外できたりするんです。そういうものでなく、生の声として耳に入ってくるものが本当のトレンドだと思います。だから、その過程のコミュニケーションをどうデザインするか、それをどんなストーリーにするかというのが大事になってくると思いますね。そういったことをできるような人と一緒に何かできたら面白いと思います。
(取材・文=柴那典/写真=向山裕太)
■オーディション情報
『Feat.ソニーミュージックオーディション』
グランプリ賞品:「あなたの叶えたい夢への応援券」プレゼント
※ソニーミュージックで応援できること、もしくは300万円以内でできることに限る。
応募スケジュール:1月22日(月)12:00~4月16日(月)17:00
1次審査[書類審査]期間:2018年5月中旬までに通過者にのみメールにてご連絡
2次審査[対面審査]期間:2018年5月中旬~6月中旬 通過者にのみご連絡
ファイナル審査期間:2018年7月~10月
募集要項:音楽でトレンドを作れるアーティスト、バンド、グループなど
※性別不問、年齢不問、特定のレコード会社との所属契約がない方に限る。
応募方法:「Feat.ソニーミュージックオーディション」特設ページに掲載されている応募フォームに必要事項を入力
※WEBのみで受け付け。