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米津玄師の楽曲はなぜ何度も聴きたくなる? 「打上花火」や「Lemon」などの楽曲構造から紐解く

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 そして、最新曲「Lemon」。この曲は、松任谷由実の「Hello, my friend」(1994年)に大きく影響を受けて制作したことを、米津自身が公言している。が、この2つの曲の共通点も、「ピースサイン」と「Butter-Fly」のそれと同様、表面上はさほどないように思う。強いて挙げればサビのメロディの動き方が、少し似ているくらいだろうか。ただ、これまでの米津の楽曲の中でもこの「Lemon」は、昭和歌謡〜ニューミュージックの流れを汲む、しっとりしたマイナー調に仕上がっており、日本人の琴線に触れるという意味では、ユーミンからの影響を受けているのかもしれない。

米津玄師 MV「Lemon」

 コード進行を見ていこう。キーはBで、AメロはG#m/ F# – E/ B – E/ B – Dim/ D# – G#m/ F# – E/ B – E/ B – F#/ B。ここでは4小節目のDim/ D#がポイント。D#は続くG#mのセカンダリー・ドミナント・コード、DdimはD#のドミナントセブンスコード、すなわちA#の代理コードとなっている。通常であればE/ F#、あるいはC#m/ F#と進みそうなところを、敢えてDim/ D#にすることで、この曲をより哀愁漂う雰囲気にしているのだ。

 サビは前半がE/ B – F#/ G#m – E/ B – F#/ D#。サビが「サブドミナント・コード始まり」なのは、実は「打上花火」も「Flowerwall」も、「ピースサイン」も同じ。米津の楽曲の浮遊感は、この「サブドミナント・コード始まり」に起因している部分もあるだろう。ちなみに4小節目3、4拍目のD#は、続くコードをG#mに見立てたセカンダリー・ドミナント・コード。後半は、E/ B – A#dim・D#/ G#m – C#m/ G#m – E・F#/ Fdim – C#m/ G#m – E・F#/ B。1小節目3拍目1、2拍目のA#dim・D#は、続くG#mをトニックコードに見立てたツーファイブ(A#dimはA#mの代理コード)。目まぐるしく展開していくコード進行がまるでプリズムのように、シンプルなメロディに様々な色彩を与えているのである。

 以上、駆け足だが米津玄師の近作より4曲を解析してみた。彼の楽曲の、何度も聴き返したくなる魅力の秘密に少しでも近づくことができていたら幸いだ。

■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。

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