中居正広、平昌オリンピックで果たしたキャスターとしての役目 視聴者との“橋渡し”を振り返る
生放送で発揮する司会力
選手に対する敬意があり、テレビの前の視聴者を置いてけぼりにしない細かな配慮、それが中居流だ。
冬季の競技は野球やサッカーなどのメジャーなスポーツと異なり、普段報じられる回数は限られている。視聴者の中には「五輪だから観る」という人も多かったことだろう。
どんな人にも伝わるよう配慮したのか、会話をすすめる中で、対戦相手の実績や近況など、観戦に必要な情報を的確かつ手短かに差し込んでいた。「なるほど、対戦相手は日本チームよりも格上なのか」とルールのわからない競技でも参加しやすくなるような視点を与えてくれたのはありがたかった。
番組では試合の中継がメインであることから、キャスターや解説者らに割り当てられる時間は少ない。わずか数分つないではCM、少し喋っては再びCMと、小刻みな中継が続いた場面もあった。それでも中居は限られた時間の中で的確なコメントで場をつなぎ、特殊な状況に慣れていない解説者が同じようなコメントを繰り返したら、さりげなく別の質問を挟んで新たな言葉を引き出していた。トークのテンポも、難しい部分はゆっくり話すなど内容によって調節していた。
生放送の場数を踏んでいることもあるが、尺にあわせたコメントで時間ぴったりに番組を締めくくる。正確な時間感覚による仕事はお見事だった。
「メダルが取れなかったからといって、全てを否定してしまうことにはしたくない」と、メダルの有無に関係なく、常にフラットな姿勢を心がけていると会見で語った中居。アスリートに対する敬意、視聴者への配慮ーー中居を起用したプロデューサーが一貫した姿勢を高く評価していた。
「この瞬間、きっと夢じゃない」、「Moment」など、かつて同局のオリンピック番組のテーマソングにはSMAPの楽曲が起用されていた。今回、番組中耳にすることができなかったのは残念だが、中居の仕事ぶりに<この一瞬のための何千時間>、<この一瞬のためだけじゃないんだ>と「Moment」の一節が浮かんだ。
キャスターとしての中居がいる一方で、視聴者と同じように固唾を飲んで試合を見守り、時には勝利の喜びを隠しきれずに満面の笑みを浮かべるーー視聴者と同じ目線で楽しむ中居の姿に、五輪がより身近なものに感じることができた。
世界的な大舞台とテレビの前の視聴者をつなぐ「橋渡し」。中居らしいスタイルで役目を果たしていた。
■柚月裕実
Web編集者/ライター。企画、担当編集、取材・執筆してます。
日本の男性アイドルの頑張りを見ては涙する30代。
始まりはSMAP中居さん。 KAT-TUN、NEWS中心の事務所担。年中HDDの整理と原稿書きに追われています。