AA= 上田剛士が先駆的存在としてロックシーンに与え続けた影響 小野島大が徹底解説

 そうして上田が蒔いた種は、意外なところで芽を出す。BABYMETALの楽曲「ギミチョコ!!」を上田が手がけ大ヒットとなったのは2014年のことだが、BABYMETALの海外進出が本格化し大反響を巻き起こす中、同曲のポップソングとしてのキャッチーさと完成度の高さは、改めて海外でTakeshi Uedaの名がクローズアップされ、彼や彼の音楽が再評価されるきっかけとなったのだった。

 2006年のマッド活動休止後、2年半のブランクをおいて、上田はAA=を始動する。彼がなぜAA=というプロジェクトを始めたのか、それは前述のボックスセット『(re:Rec) - SPECIAL BOX「OIO」』に同梱されるジョージ・オーウェルの小説『動物農場』の巻末に上田が自ら書き下ろした<あとがき>に記載されている。『動物農場』の一節「すべての動物は平等である(All Animals Are Equal)」をアーティスト名にした由来なども明らかにされているが、マッドの活動休止を経てAA=が始動するにあたり、何が起こり、それが上田剛士にとってどれだけの意味を持ったかがこの本には記されている。筆者はこのBOXセットに同梱のブックレットに携わった兼ね合いで、先に読むことができたのだが、衝撃を受けた。これを受け、筆者が上田に行ったロングインタビューでは、「AA=でシーンに復帰にするにあたって、一番注意したこと、心がけたことは?」という質問に対して「前のバンドみたいだと言われないようにすることです」と(冗談めかしてではあるが)答えていたりする。

 これは前述した、AA=のボーカル候補として降谷建志などがいた中で、BACK DROP BOMBのボーカリスト白川貴善が抜擢された理由でもある。つまりマッドの熱心なファンであり、ボーカリストとしてなんでもこなす実力を持った降谷がボーカルをやれば、心機一転新たなプロジェクトとして始めたAA=がマッドの焼き直しのようなものに受け取られてしまう可能性がある。それを避けるために、まったく異なるタイプのボーカリストである白川を起用したのである。

 白川は見た目のいかついイメージとは裏腹に、滑らかでソフトな美声の持ち主である。その声は、マッドと比べてのAA=の顕著な特徴である、ポップで美しく流麗で、まるでオールディーズポップスのようにキャッチーなメロディを際立たせ、上田剛士流のハードでヘヴィで激烈で緻密なデジタルハードコアサウンドと、劇的なまでに対照的な表情を描き出す。そしてマッドの初代ギタリストでありながら、マッドとは対極にあるようなキャッチーで柔らかいポップソングでこそ自分の持ち味が生かせると自認する児島実のようなギタリストが加わり、打ち込みのリニアなビート感覚とは一見相容れぬような跳ねるドラミングを得意とする金子ノブアキが参加することで、AA=の音楽は、上田のソロプロジェクトでありながら、それ以外の要素や感覚、センスを含んだ、より幅広く柔軟で自由なものとなったのである。そうしたAA=ならではの個性が十分に発揮された楽曲の一例として、1stアルバム『#1』収録の「STARRY NIGHT」や、『#4』収録の「HUMANITY2」、そして映画『ヘルタースケルター』の主題歌となった「The Klock」などが挙げられる。それらは再録され『(re:Rec)』にも収録されているので、ぜひご一聴をおすすめする。そこには進化し続ける上田剛士/AA=の最新型が記録されている。

 もちろんBABYMETALの「ギミチョコ!!」や「あわだまフィーバー」といった楽曲も、現在の上田だからこそ作り得たキャッチーで吹っ切れたポップソングであり、シリアスなロックアーティストがアイドルに楽曲を提供する先例となったのも、上田が残した功績のひとつと言えるかもしれない。

 『(re:Rec)』は4月4日発売。ボックスセット『(re:Rec) - SPECIAL BOX「OIO」』も同時発売だが、ボックスの方は完全受注生産で、申し込み受付は2月28日までとなっている。限定ボックスセットには『AA= BIBLE』というブックレットが同梱されるのは前述したが、そこには筆者が担当したAA=のメンバー全員の超ロングインタビューが収録されている。つまり上田剛士に加え、白川、児島、草間、金子、ZAX、YOUTH-K!!!という、ライブメンバー全員がAA=/上田剛士のすべてを語りおろしたインタビューというわけでだ。AA=/上田剛士およびTHE MAD CAPSULE MARKETSのファンは必読の濃密な内容になっている。これを読めばAA=という「バンド」の過去と現在がすべてわかるはずだ。もちろん他で公開する予定はないので、ここでしか読むことができない。興味のある方はぜひ手に入れてほしい。

■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebookTwitter

■リリース情報
『(re:Rec) – SPECIAL BOX「OIO」』
発売:2018年4月4日(水)
価格:¥13,000(税抜)
内容:1CD+4GOODS ※AA= OIO SPECIAL CLUTCH BAG仕様
・Best Album (re:Rec) 全19曲
・AA= OIO SPECIAL BE@RBRIC (©︎2018 MEDICOM TOY)
・AA= OIO SPECIAL “ALL ANIMALS ARE EQUAL” T-shirt
・AA= BIBLE
・“動物農場” AA= OIO SPECIAL EDITION
予約期間:1月22日(月)〜2月28日(水)18:00
VICTOR ENTERTAINMENT ONLINE SHOP
※『(re:Rec) – SPECIAL BOX「OIO」』は2月28日までの期間限定完全受注生産、ビクターオンラインショップのみでの取り扱いとなります。

『(re:Rec)』
発売:2018年4月4日(水)
価格:¥3,000(税抜)
内容:CD(1DISK) 全19曲

01. LOSER
02. 2010 DIGItoTALism
03. posi-JUMPER
04. KILROY WAS HERE
05. WORKING CLASS
06. GREED…
07. Such a beautiful plastic world!!!
08. HUMANITY2
09. ROOTS
10. meVIR
11. sTEP COde
12. The Klock
13. STARRY NIGHT
14. WARWARWAR
15. DREAMER
16. 4 leaf clover
17. ALL ANIMALS ARE EQUAL
18. FREEDOM
19. PEACE!!!

■ライブ情報
『AA= TOUR OIO 2018』
AA=(Takeshi Ueda and Takayoshi Shirakawa,Minoru Kojima,Nobuaki Kaneko)
5月2日(水) 新宿LOFT
5月5日(土) 心斎橋JANUS
5月13日(日) 仙台MACANA
6月8日(金) 福岡LIVEHOUSE CB
6月10日(日) 名古屋UPSET

オフィシャルサイト
AA=「OIO」Special Web Site

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