DEAN FUJIOKAが見せたライブでのモード変化 過去の遺産×最新を組み合わせた音楽の魅力

 2月4日名古屋からスタートした『DEAN FUJIOKA 1st Japan Tour “History In The Making 2018”』パシフィコ横浜国立大ホール公演が行われた。DEAN FUJIOKAがこの会場でライブをするのは、2016年末の『DEAN FUJIOKA Special Live InterCycle 2016』以来約1年2ヶ月振り。この日のライブには、その間にアーティストとしてさらなる進化を遂げた、今の彼ならではの魅力が全編に詰まっていた。

 まず印象的だったのは、オープニングの演出にも反映されていた“ライブでのモードの変化”だろう。2年前のライブでは、冒頭にスクリーン上で、彼自身がこれまで辿ったキャリアを世界地図で表現し、ライブにストーリー性を加えていたが、この日は暗転したままのステージに金網が用意され、その奥に横山裕章(Key)、神宮司治(Dr)、マーリン・ケリー(Ba)、佐田慎介(Gt)からなるバンドメンバーが登場。暗いままのステージを赤、緑、青など様々なライトが照らし、その中で超絶技巧のジャムがはじまって、一気に会場を盛り上げる。その後急に音が止まり、手を天に掲げるDEAN FUJIOKAのシルエットが現れると、会場からはいきなり特大の大歓声。こうしたオープニングからも分かる通り、この日は以前よりも演奏の熱量をダイレクトに伝えるような構成で、それは全編のモードにも言える変化だった。ここには、レビューショーのようでもあった以前のライブよりも、「楽曲やバンドの演奏にしっかりと耳を傾けてほしい」という、彼の思いが込められているように感じられる。

 実際、ここ最近のDEAN FUJIOKAのリリース作品には、彼自身の新たな興味が反映されたと思える刺激的な楽曲が多数収録されていた。たとえば、2017年7月の1st EP『Permanent Vacation / Unchained Melody』では、「Permanent Vacation(EP ver.)」で近年人気に火が付きつつある最新のクラブミュージック、フューチャーベースの揺れるシンセを導入。また、2017年12月に発表した2nd EP『Let it snow!』では、「Let It Snow!」でフューチャーベースとムーディーなAORとをブレンドしたかのような、洒脱で刺激的なサウンドを鳴らし、そのリミックス曲「Let it Snow! YUC’e Remix」では、実際にフューチャーベース系の若手注目トラックメイカー、YUC’eを起用。そういえば、この日の開演前のSEでもYUC’eの「Night Club Junkie」「Future Cαndy」を始め、いろいろなトラックメイカーが作ったフューチャーベース系アンセムが多く流されており、ここからも彼の今の興味が伝わるようだ。また、『Let it snow!』に収録された「DoReMi」や「Speechless」では、合いの手やラップパートで2017年に米音楽シーンの台風の目となったトラップ勢にも通じるフロウを導入。とはいえ、流行を取り入れつつも決して流され過ぎることはなく、絶妙なバランスで間口の広いポップソングとして成立させているのが印象的だった。

 そうした楽曲群を従来の楽曲と合わせて披露したこの日のライブでは、彼の音楽の多様性がますます大きな広がりを見せていく。たとえば「Speechless」では、トラップ的なラップのフロウで観客を魅了し、アウトロでは自身がシンセでノイズを出してバンドの演奏とともにぐんぐん熱を帯びていく。また、「カモン、横浜!」と呼び掛けはじまった「Permanent Vacation」では、矢継ぎ早に繰り出される映像のカットアップに合わせて大箱仕様のEDMサウンドやフューチャーベース直系の揺れるシンセを展開。それら最近の楽曲群によって過去曲の魅力もより際立つ効果が生まれ、定番曲「Sweet Talk」では、自ら泣きのギターソロで会場を盛り上げていった。また、「みなさんチャイニーズニューイヤーはご存知ですか?」というMCを皮切りに、中華圏の春節(旧正月)に合わせて、フェイ・ウォンのカヴァー「紅豆」も披露。ここでは自身のピアノの弾き語りから、徐々にバンドが加わってドラマティックな展開を見せるなど、曲ごとに様々な楽器/音楽性を駆使するのも彼のライブの特徴だ。

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