太田省一『ジャニーズとテレビ史』第三十九回:2018年期待のジャニーズ
玉森裕太、小瀧望、中島健人、滝沢秀明……2018年期待のジャニーズメンバーは?
次に、歌手、俳優としても活躍中だが、最近バラエティで特に印象深かった2人を取り上げたい。
Sexy Zoneの中島健人は、昨年12月に出演した『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)での完璧な「モテ仕草」が出色だった。番組企画で女性と疑似デートした際に見せた自撮りツーショットの撮り方、手をつなぐときの恋人つなぎへの流れるような動作など、「モテ仕草」が専門の評論家も絶賛。さらにスタジオで母親の年齢を聞かれた際には、「言えませんね、ちょっとその年齢は」と徹底した女性への気遣いを見せ、MCの明石家さんまや出演者のマツコ・デラックスらを感服させていた。
その一部の隙も無い振る舞いは、ファンにとっては十分知っているものだろう。しかし、さんまやマツコを代表として、世の中からいわば“お墨付き”を得たことの意味は大きいはずだ。
さんまとマツコがそこまで感心したのは、一連の振る舞いが無理につくられたキャラには到底見えない自然さがあったからだろう。その完璧さにアイドルとしての並々ならぬプロ意識を感じ取ったのに違いない。
「世間が中島健人に追いついた」とでも言いたくなる状況だが、今年はこの機会を生かして、さらに知名度を上げていってもらいたい。“王子様アイドル”はジャニーズの王道でもあるが、そこにも時代の流れに合わせたアップデートが必要だろう。その点、NHKの『ニュース シブ5時』の時事問題を学ぶコーナー「ニュースがわかるようになる検定」でも地頭の良さを感じさせる彼なら安心のはずだ。また彼の躍進が、“王子様アイドル”の結晶のようなグループ・Sexy Zoneにも相乗効果をもたらすに違いない。
その中島健人の先輩として、同じ“王子様アイドル”の系譜にいるのがタッキー&翼の滝沢秀明だ。ところが最近のテレビ出演では、そのイメージを覆すような特技や趣味を次々に披露して、私たちを驚かせている。
まず、『有吉ゼミ』(日本テレビ系)では、同じ東京・八王子出身のヒロミの弟子として、部屋のリフォームなどDIYの技を披露している。登場したのは2016年からだが、いったんはまるととことんやる凝り性の彼らしく、みるみる腕を上げているのが伝わってくる。昨年末の放送では「子ども食堂」の大規模なリフォームに二人で挑んでいた。滝沢は、店のテーブルやディスプレイ棚を独力で作るだけでなく、装飾などにも細かいこだわりを見せていた。
さらに驚かされたのは、今年初めの『クレイジージャーニー』(TBS系)に「火山探検家」として出演したことである。はじめは番組のロケでその魅力に取りつかれたそうだが、現在はまったくのプライベートでマグマが噴出する世界中の「溶岩湖」を訪れている。番組ではその旅にスタッフが同行し、過酷な道のりを踏破して、巨大な溶岩湖の傍に立つ彼の姿をとらえていた。
滝沢秀明と言えば、ジャニーズJr.の黄金期のリーダー的存在であり、NHK大河ドラマ『義経』の主役、舞台『滝沢歌舞伎』の主演・演出と、ジャニーズの王道中の王道を歩んでいるイメージも強い。その彼が、DIYや火山探検で見せる姿は、そうした華やかな印象とのギャップという点でまず興味を引く。と同時に、そこで発揮される高い集中力や的確な判断力、さりげない気配りは、滝沢秀明の豊かな人間的魅力を垣間見せてくれる。そうした素の部分が知られるようになってきた今年は、彼の活動にもより大きな広がりが生まれる予感がする。
以上、昨年末から今年初めにかけて印象に残った4人を挙げたが、こう書いてきたところで、早速中島健人が『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ系)の新しいゴチメンバーになるというニュースが飛び込んできた。つい先日King & Princeの今春CDデビューも発表されていろいろと動きがありそうなこの一年、彼ら4人の活躍に注目していきたい。
■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント』(光文社新書)、『ジャニーズの正体 エンターテインメントの戦後史』(双葉社)、『木村拓哉という生き方』(青弓社)、『中居正広という生き方』(青弓社)、『社会は笑う・増補版』(青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。