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西廣智一の新譜キュレーション 第2回

スラッシュメタル、ブラックメタル、ジェント……“エクストリームメタルの進化”示す新譜5選

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 HR/HMに疎いリスナーからは、そのブラックメタルとよく混同されがちなのがデスメタル(Death Metal)。“ブラック”や“デス”などのネガティブワードが付くことから一緒くたにされてしまいますが、そもそもテーマもサウンドスタイルも異なるジャンルです。デスメタルの起源はスラッシュメタルをより過激にしたもので、歌詞で死そのものや死体、地獄などをテーマに扱うことから通常のスラッシュメタルから枝分かれしたサブジャンルとして独立。ボーカルスタイルも金切り声よりも“デスボイス”と比喩される低音のうめき声(グロウルやガテラルボイスなどと呼ばれる)が中心で、メロディが存在しないものが大半です。また、90年代半ばになるとIn FlamesやArch Enemyなどを筆頭としたメロディックデスメタルなる派生ジャンルが大躍進。王道ヘヴィメタルバンドのような、ギターのメロディアスなツインリードを取り入れることで、それまでデスメタルが苦手だったリスナーにもアピールするようになります。

Morbid Angel『Kingdoms Disdained』

 今回紹介するMorbid Angelはアメリカ・フロリダ州出身の大御所デスメタルバンド。結成は1983年とかなり古く、トレイ・アザトース(Gt)以外のメンバーは非常に流動的だが、3rdアルバム『Covenant』(1993年)はこのジャンルとしては異例の15万枚を超えるヒットを記録しています。昨年12月には、前作『Illud Divinum Insanus』(2011年)から6年ぶり、通算9作目となるオリジナルアルバム『Kingdoms Disdained』を発表したばかり。前作ではインダストリアルメタルに傾倒した、Morbid Angelとしてはかなりの異色作でしたが、最新作ではオープニングの「Piles Of Little Arms」から原点回帰といわんばかりの“これぞデスメタル!”と言いたくなる王道デスメタルサウンドを展開。メロディを無視したボーカルやリフワークは圧巻の一言で、無慈悲で無感情な楽曲群が次から次へと襲いかかり、メロディックデスメタルに慣れた耳で楽しもうとするとリスナーなら後頭部を鈍器で殴られたような感覚に陥るのではないでしょうか。ずっしりと腹に響くバスドラの連打は、ぜひとも大音量で堪能したいものです。

Morbid Angel – For No Master (Official Track)

 スラッシュメタルから派生したデスメタルではあるものの、この中にはデスラッシュと呼ばれる非常に厄介なジャンルも存在します。海外では「Death/Thrash Metal」と表現されるこのジャンルは、スラッシュメタルにデスメタル的なフレイバーを散りばめたもので、独自の進化を遂げたデスメタルよりはスラッシュメタルのシンプルさが目立つサウンドと言えるかもしれません。またボーカルスタイルはデスボイスを取り入れ、アレンジにブラストビートを多用するケースも見受けられます。正直、言葉でこういうものですというよりも、その音を聴いて「これがデスラッシュかな?」と感じてもらうほうが早いかもしれません。

Witchery『I Am Legion』

 このジャンルではスウェーデンのThe Hauntedが代表的バンドと呼ばれることが多いですが、そのThe Hauntedのギタリスト、パトリック・ヤンセンがThe Haunted結成と同時期にスタートさせたのがWitcheryというバンドです。The Hauntedにはストレートで疾走感の強いイメージがありますが、Witcheryはより緩急に富んだヘヴィメタルを表現しているように映ります。昨年11月に発表された7thアルバム『I Am Legion』はまさにそういった作風で、アルバム序盤は「Legion」「True North」「Welcome, Night」とミドルテンポのヘヴィチューンが並びますが、「Of Blackened Wing」あたりからスラッシーな疾走チューンが登場。これらの楽曲をデスメタルらしいデスボイスで表現することで、デスラッシュというジャンルの存在感を強くアピールすることに成功しています。また、各曲とも3~4分程度と非常にコンパクトにまとめられているのも特徴のひとつかもしれません。先に紹介したAnnihilatorやMorbid Angelと比較すれば、その違いは一目瞭然でしょう。

WITCHERY – Of Blackened Wing (OFFICIAL VIDEO)

 このようにエクストリームメタルは数々のサブジャンルが長い時間をかけて交配を繰り返し、さまざまな亜種を生み続けてきました。最後に紹介するジェント(Djent)も、エクストリームメタルが交配を繰り返した結果生まれたサブジャンルのひとつでしょう。スラッシュメタルの特徴のひとつに「ザクザクと心地よく刻まれるギターリフ」が挙げられると思いますが、ジェントではそのリフの刻み方が独特で、7弦もしくは8弦などの多弦ギターを用いて複雑なリズム(その多くが変拍子やポリリズム)を刻んでいきます。このジャンルではMeshuggahが先駆者と呼ばれており、特にここ10年はメタルコアからジェントに流れるバンドも多いようです。

Breath Of Nibiru『Skyline Bazzar』

 12月末に日本デビューアルバム『Skyline Bazzar』をリリースしたBreath Of Nibiruは、イタリア出身のギタリストであるジャンルカ・フェロと、日本でも知名度の高いメタルコアバンドUnearthのドラマー、ニック・ピアースが結成したジェント/プログレッシヴメタルプロジェクト。ボーカルが入らないインストユニットなのですが、複雑に絡み合うリズムとギターリフ、その上を華麗に舞うメロディアスなギターソロの相性は抜群で、この手のバンドに多いデスボイスが苦手というリスナーにもジェント入門編として受け入れやすい作品ではないでしょうか。このアルバムを起点に、プログレッシヴメタル度の高いPeripheryや、アバンギャルドなサウンドを信条としたSikTh、シンセサイザーを多用したドラマチックなサウンドが魅力のBorn Of Osirisなどに手を出すのもよいかもしれません。

Breath Of Nibiru – Nebularization

 もちろん、ここで紹介した以外にもエクストリームメタルの派生ジャンルは山ほど存在しますが、今回は直近リリースの新作からこの5枚(5ジャンル)をピックアップしてみました。今後もタイミングが合えば、改めて数々のサブジャンルの最新形を紹介できたらと思います。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

      

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