三代目JSBや『HiGH&LOW』の衣装はどう作られる? LDH apparel 小川哲史氏が語る、エンタメとファッションの連動

小川氏とEXILEの出会い

ーー小川さんはもともと、EXILEがデビューする前からメンバーと知り合いだったそうですね。

小川:BABY NAIL(MAKIDAI、ÜSA、MATSUらによる前身グループ)のメンバーのひとりが僕の友達で、高校一年生の時に彼らが新宿のクラブでショーケースをやるというので見に行ったのが、最初の出会いでした。日本人でこんなに黒いダンスをやっている人たちがいるんだって、衝撃を受けましたね。僕はもともと、当時Japanese Soul Brothersとして活動していたHIROさんに憧れてダンスを始めたのですが、BABY NAILもものすごくかっこよかったので、ほどなくして彼らのスクールに通うようになって、彼らの後輩チームという感じで、ショーケースの前座で踊らせてもらったりするようになりました。BABY NAILは、当時最先端のヒップホップを体現しているダンスチームで、僕は彼らの背中を追っているという関係でした。

ーーLDHで仕事するきっかけになったのは?

小川:2005年にMATSUさんがBOIS BOIS(ボアボア)というブランドを立ち上げることになって、共通の知り合いを通してお声がけいただいたのがきっかけですね。僕は当時、トミーヒルフィガージャパンでデザイナーをしていたので、その合間にお手伝いするような感じで、週に一回程度、LDHに行ってデザインの打ち合わせしていました。そこから段々とLDHの仕事の比重が増えていって、2006年には武道館で開催された「EXILE VOCAL BATTLE AUDITION」のステージ衣装も担当させていただきました。その後、MATSUさんが役者業に専念するタイミングで、HIROさんにお声がけいただいて、本格的に参加するようになりました。当時のEXILEはバラバラのリハーサルウェアで練習していたので、まずはチーム感のあるジャージを作って欲しいというところから、2007年に24karatsがスタートした感じです。今年でちょうど10周年ですね。

ーー2007年というとEXILEの第二章が始まるタイミングですが、すでに今のLDHのように、アパレル業や飲食業も含めた、広い意味でのエンタテインメント全般に携わるという構想が、HIROさんにはあったのでしょうか?

小川:そうだと思います。あの時はもうアリーナ公演などを成功させていて、EXILEの人気は昇る一方でしたから。ただ僕はまだ契約デザイナーで、24karatsのビジネス的な部分にはあまりタッチしていませんでした。当初はEXILEのグッズを作るコンテンツ事業部の部長がアパレルも担当していて、デザインや売り方がすごく物販っぽくなっていました。もちろん、携わらせていただくのは光栄だったんですけれど、物販の発想だと、その年によく売れたジャージを次のシーズンはより誇張したデザインにして売るようになっていくので、結果としてイナタいアイテムになっていくんです。これは一度、リブランディングしないとアパレルのブランドとして成立しないと思って、社員になってからは企画チームや会社ともいろいろと協議して、改善していきました。

LDH apparelの強み

ーー先日オープンしたJ.S.B.の新しい店舗は、裏原宿系のセレクトショップのようなイメージで、ロゴTシャツなども仕立てが良く、ファッションブランドとしても十分に楽しめるクオリティだと感じました。

小川:J.S.B.は三代目J Soul Brothersのメンバーが着てきたもの、着ていそうなものをイメージして作っています。ただ、実際にお客様にファッションアイテムとして着こなしてもらえるよう、メンバーと一緒にデザインや方向性を考えています。おかげさまで非常に好評ですね。

ーー24karatsはA BATHING APEやSOPH.といったブランドとコラボレーションしていて、そういう意味でも従来のアーティストグッズとは一線を画している印象です。

小川:mastermind JAPANやTimberland、VANSなど、様々なブランドとコラボしてきました。SOPH.は代表の清永浩文さんと黒木啓司がともに九州出身で関係があり、そこから話が繋がっていきました。メンバー自身がファッション好きで、LDH apparelに協力的なので、関わりがあるブランドとはどんどんコラボしていきたいですね。

 販売経路も、自社の店舗だけではなく、たとえばSTUDIOSや伊勢丹で取り扱ってもらったりすることで、よりファッションブランドとしての認知を高めていきたいと考えています。

ーー昨今のアパレル業界では、ファストファッションが主流になっていますが、そうした状況の中でLDH apparelとしてはどんな価値を提供したいと考えていますか?

小川:最近のファストファッションはクオリティも高くなっていますし、トレンドを捉えるのも早いですし、着るぶんには十分なんですよね。消費者の多くがファストファッションを求めるのも、自然な流れではあると思います。そうした状況の中、我々の提供できる価値となるのは、やはりエンタテインメントやカルチャーと連動したファッションであるという部分だと思います。先ほどのSOPH.の例だと、黒木啓司がディレクションを手掛けたことが話題となり、あっと言う間に売り切れました。VANSとのコラボではAKIRAくんがクリエイティブで参加してくれて、プロモーション用の映像まで作ってくれて、2000足が48時間くらいで完売しました。それを単にアーティストの物販のような感覚でやるとよくないと思うのですが、ちゃんとファッションの商圏で良質な洋服を販売していけば、コラボするブランドにとってもアーティストにとってもプラスになります。アーティストの発信力をただ活用するだけではなく、彼ら自身がさまざまな形で携わることで、特別な洋服を作り出していきたいです。

(取材・文=松田広宣/写真=石川真魚)

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