太田省一『ジャニーズとテレビ史』第三十八回:ジャニーズと報道番組

嵐 櫻井&NEWS 小山の活躍から遡って考える なぜジャニーズは情報・報道番組に求められる?

 もう一方で、1980年代になるとニュース番組にも大きな変化があった。

 そのきっかけになったのが、1985年に始まった『ニュースステーション』(テレビ朝日系)である。この番組のメインキャスターだった久米宏もまた、それまで『ぴったし カン・カン』や『ザ・ベストテン』(ともにTBSテレビ系)など娯楽番組を主な活躍の場としてきたアナウンサーで、ニュース番組へのレギュラー出演自体が初めてだった。

 ただ久米は、そのことをむしろ番組の長所にしようとした。そこで彼が心がけたのは、「中学生でもわかるニュース」「テレビ的なニュース」そして「楽しめるニュース」ということだった(久米宏『久米宏です。ニュースステーションはザ・ベストテンだった』世界文化社)。

 つまり、ニュースは、テレビならではの視覚的な強みを生かし、わかりやすく、なおかつ楽しめるものでなければならない。この「わかりやすさ」と「楽しさ」を軸にするというポリシーの根底には、『ズームイン!!朝!』の場合と同じく「ニュースを伝える側」ではなく「ニュースを見る側」に立つという「視聴者目線」があった(同書)。

 特にニュースは楽しいもの、エンターテインメントであるべきという久米の考えは、ジャニーズのニュース番組への進出を理解するうえで一つのポイントになるだろう。

 舞台であれば観客、テレビであれば視聴者を楽しませることを常に第一に考えるのは、ジャニーズが始まって以来の一貫した哲学である。もちろんそれがニュース番組にも当てはまるとはさすがに思っていなかったかもしれない。だがテレビのほうが、『ニュースステーション』の登場などによって、「ニュース=エンターテインメント」という方向へと歩み寄ってきたのである。

 そんなテレビ自体の変化のなかで、ジャニーズがニュース番組に出演する道が開けたのではあるまいか。そしてそうなっていくなかで、少しずつではあるが、ニュース番組に出演するジャニーズたちも自分の特色を出すようになってきた。

 たとえば、櫻井翔は『NEWS ZERO』では話題のニュースをわかりやすく解説する「イチメン!」のコーナーを担当する一方、インタビュアーとして存在感を発揮している。元ソ連大統領・ゴルバチョフのような海外の要人、日本の政財界のキーパーソン、有名スポーツ選手など、その相手は多岐に渡っている。彼のインタビューを見ていると、話の流れを見ながらポイントをまとめていく力量の高さはもちろんだが、どんな相手でも話しやすくさせる空気のつくり方、そしてその根底にある彼の心遣いが感じられる。

 また小山慶一郎は、本職のアナウンサーにも劣らない滑舌の良さや原稿の読みの正確さがまず目につくが、一方で彼は、よく現場に足を運ぶ人でもある。災害などの現場はもちろんだが、学校などいまの若者たちが生きるさまざまな現場に行くことも多い。そのフットワークは、ニュース番組だけでなく『NEWSな2人』(TBS系)でも存分に発揮されている。そうした現場リポートの様子を見ていると、彼がその場の雰囲気や人々のちょっとした表情などから問題の本質をつかみとる直感に優れた人であるのがわかる。

 転換期を迎え、混沌とし始めている日本社会のなかで、視聴者本位に徹したよりわかりやすく、より楽しいニュースの必要性はますます高まっていくだろう。そうしたなかでジャニーズが魅力的な存在になりうることは間違いない。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント』(光文社新書)、『ジャニーズの正体 エンターテインメントの戦後史』(双葉社)、『木村拓哉という生き方』(青弓社)、『中居正広という生き方』(青弓社)、『社会は笑う・増補版』(青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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