Do As Infinity、『十二大戦』主題歌に見るアニメとの親和性 澤野弘之が与えた影響を紐解く

Do As Infinity、アニメとの親和性を読む

 2017年に入って『進撃の巨人』や『機動戦士ガンダムUC』『キルラキル』『Re:CREATORS』といったアニメ/ドラマ/映画の劇伴を多数担当する音楽家・澤野弘之とのコラボレーションを開始し、2枚のシングル『Alive / Iron Hornet』、『To Know You』を立て続けにリリースしたDo As Infinity。その2作同様、澤野弘之をサウンドプロデューサーに迎えた最新シングル『化身の獣』表題曲が、現在オンエア中のTVテレビアニメ『十二大戦』(TOKYO MXほか)のエンディングテーマに起用されている。この楽曲はいわば、デビュー18周年を迎えた彼らが、外部から迎えた新たな才能とのコラボレーションを経て踏み出したユニットの新章を象徴する楽曲のひとつ。と同時に、『十二大戦』というアニメ作品の本質となるテーマが丁寧に描かれた楽曲にもなっている。

Do As Infinity「化身の獣」MV

 『十二大戦』は「〈物語〉シリーズ」などで知られる西尾維新が原作のTVアニメ。複数の漫画雑誌をまたいで彼の原作ネームを漫画化する『大斬(オオギリ)』の中で中村光がイラストを担当した『どうしても叶えたいたったひとつの願いと割とそうでもない99の願い』の前日譚として、2015年に刊行されたファンタジー小説のTVアニメ化作品となる。物語は様々な特殊技能を持つ干支の名前を冠した12人の戦士が、願いをかなえるため最後のひとりになるまで殺し合う「十二大戦」の様子を描写。特定の主人公は存在せず、平和主義者、快楽主義者、理想主義者……と異なる信条で戦う各戦士の巧みな心理戦や、それぞれが戦いに向かう理由、過去のトラウマ、「十二大戦」そのものの意義が明らかにされていく。

 西尾維新らしい非常にテクニカルな物語構造の中で、どうしても逃れられない人間の業や欲望が様々な角度から描かれた、濃厚な人間ドラマとしても楽しめる群像劇だ。そうした物語の魅力を表現するため、TVアニメ『犬夜叉』シリーズや『ヒカルの碁』といったヒットアニメとのタイアップや、『テイルズオブ』シリーズ、『戦国BASARA』といったゲームのテーマ曲を担当し、2015年にはアニメ/ゲームのタイアップ楽曲を集めた配信限定作『Anime and Game COLLECTION』を発表したことも記憶に新しいDo As Infinityに白羽の矢が立った。

 澤野弘之とのコラボレーションがはじまって以降のDo As Infinityの楽曲は、大きく言って2つのタイプに分けられる。ひとつはクラブミュージックからの影響も取り入れてユニットの新たな姿を見せてくれる楽曲。そしてもうひとつは、ユニットのもともとのロック志向をデジタルテイストと融合させた「Iron Hornet」などに見られるデジタルロックタイプの楽曲。だとするなら、今回の「化身の獣」は後者のタイプで、ハードな戦闘シーンや戦士たちの残虐性/苦悩を映すような重厚なディストーションギター、まるで戦闘時の胸の鼓動を伝えるようなドラムのアタック感、そして澤野弘之によるどこか映像を喚起させる緻密なコーラスやアレンジによって、作品の世界に寄り添いながら、同時に2017年以降のユニットの充実ぶりを伝えるようなサウンドを手に入れている。

 また、フルバージョンではディストーションギターと電子音が絡み合うイントロがより印象的に配置されているほか、大渡 亮によるギターソロがさらなる熱を追加。伴 都美子の歌声も芯の通った力強いものになっていて、たとえば胡弓の響きも加えた『犬夜叉』のTV版エンディング曲「真実の詩」や、サビに向けてぐんぐん盛り上がって壮大なスケールを表現する映画『犬夜叉 紅蓮の蓬莱島』の主題歌「楽園」などにも顕著な“作品テーマを壮大に表現する力”を楽曲に込めつつ、同時に音と言葉がぐっと作品に寄り添っていくことで自らの音楽も新たな扉を開いていくような、作品とアーティストとの理想的な相乗効果が生まれているように思える。

 また、この楽曲がOP→本編→EDというオンエア時の流れに沿って届けられたとき、作品そのものの魅力をより高めてくれる構造にも触れておきたい。というのも、パノラマパナマタウンが担当するオープニング曲「ラプチャー」では戦士たちが大戦の先に夢見る「希望の光」や「手にしたい/掴みたいものへの気持ち」が歌われ、本編では様々な戦いの風景や、彼らがそこにかける想い、彼らの過去が具体的に明かされる。そしてED曲となるこの「化身の獣」では、人の欲望について歌われた楽曲に戦士たちの平和な日常のカットが重ねられ、ここで物語のタイムラインが「戦場」と「日常」を含む大きなものに変わっていく。これによって、戦いを入り口にしながらも、実は普遍的な人間の業や欲望を描き出す=誰にもその欲望があることを描く『十二大戦』のテーマそのものを表現するような雰囲気が楽曲に生まれているのではないだろうか。また、群像劇にすることで様々な立場の違いを見せる作品同様、伴 都美子が手掛けた歌詞も、あくまで物語を俯瞰した視点で「欲望」に焦点を当てている。そこで描かれるのは、程度の違いこそあれ、誰もが「化身の獣」であるということ。だからこそ、視聴者がハッと自分のことを顧みるような効果が生まれているのも魅力だろう。

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