米津玄師はなぜ幅広い世代に支持される? 音楽やメディアとの“絶妙な距離感”に迫る
2017年も佳境に差し掛かっているが、今年の音楽シーンを語るうえで欠かすことができないのが、米津玄師の存在だ。オリコンが先日発表した「2017ブレイクアーティストランキング」(参考:ORICON NEWS)でも1位に輝き、最新アルバム『BOOTLEG』は初週売上16万枚を記録。Twitterのフォロワーは100万人を、YouTubeチャンネルの登録者数は100万人を突破した。特にYouTubeチャンネル登録者に関しては、音楽を主軸としたアーティストでは、ONE OK ROCKとGoose houseしか成し遂げていない快挙だ。
先述した「2017ブレイクアーティストランキング」は、10~50代の男女1000名にアンケートを取った結果であり、米津玄師は10代から50代の全世代で1位を記録、TwitterのフォロワーもYouTubeチャンネルの登録者も、幅広い年代の支持がなければ到達しない数字だ。なぜそこまで米津玄師は全方位的に、高い支持を集めるのか。彼の音楽やメディアとの距離感から、その理由について迫ってみたい。
米津玄師は、これまで主にインターネットを中心とした活動を続けてきた。当初は自身の歌唱曲をネットに投稿していたが、ボーカロイドプロデューサー・ハチとして2000年代後半に活動を始めてから、数々の楽曲が動画投稿サイトにて100万回再生以上を記録。当時プラットフォームを利用していた10代前半〜20代後半の若者を中心に人気を集めていった。ここで作った基盤は彼の支持層における大きな土台となり、後の活動以降も続いていく。
また、自身の歌唱する米津玄師名義でも、2012年以降に発表した楽曲はボカロファン以外にも拡散し、アルバム『diorama』のリリース時にはインタビューにも積極的に登場するようになるなど、自身の歌声や言葉で音楽について語ることも増えてくる。一人で完結させた内省的な作品にも関わらず、キャッチーなギターロックに仕立て上げた同作のクオリティも高く、発言も歯に衣着せぬものが多かったことから、業界やリスナーからも「とんでもない新星が登場した」とその評判が広がっていった。
以降もコンスタントに音源をリリースするが、その過程でバンドサウンドを求めた結果、他者と繋がることへの抵抗が薄れた米津は、2ndアルバム『YANKEE』の発売以降、いよいよライブを行なうようになる。しかし、ここまでの間、積極的な顔出しはなく、SNSでの発言やイラストの投稿、ツイキャスでの弾き語りなどがラフな彼を見れる機会ということもあり、ますますSNS上で米津を見守るファンは多くなっていった。
そして、3rdアルバム『Bremen』がオリコンの週間CDアルバム売上ランキングで1位を記録すると、その名前はテレビなどマスメディアでも取り上げられるようになり、以降も『3月のライオン』や『僕のヒーローアカデミア』といったアニメの主題歌(「orion」「ピースサイン」)では、ハチをリアルタイムで知らなかった若い世代にも浸透。中田ヤスタカ楽曲に米津が作詞とゲストボーカルで参加した「NANIMONO (feat.米津玄師)」(映画『何者』主題歌)や、作詞・作曲・プロデュースをした「打上花火」(映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』)と、映画主題歌にも関与するようになり、本人のテレビ露出はないまま、お茶の間にもその名前と実力を轟かせていった。そういった作品を入り口に米津に関心を持った人々が彼の姿を見る数少ない手段としてのメディア=MVへ集中的にアクセスしたことから、YouTubeチャンネルの登録者も一層増加していったということだろう。
そして、その決定打とも言うべき作品が、先日リリースしたアルバム『BOOTLEG』の「灰色と青(+菅田将暉)」だ。大人気俳優の菅田将暉をゲストボーカルに迎え、世界の最先端で鳴っている音楽も取り入れながら作られた同曲は、リリース前の1,500人限定試聴会で発表され、毎日のようにニュース番組、Webメディアでも続々と取り上げられた。MVは公開より24時間で100万再生を突破し、現在2,000万回再生を記録。iTunes等での配信ランキングは、初週23冠での首位を獲得し、今でもロングランし続けている。フィジカルでは30万枚出荷を超えたとの情報があり、年末までまだまだ勢いは加速していきそうだ。
以上のように、音楽のクオリティも高めながら、巧みにメディアを乗りこなす彼の活動が、現在の名実ともに幅広い支持基盤を作り上げたと言っても良いだろう。このバランス感覚こそ、米津玄師が新世代のスターたる所以だ。
(文=中村拓海/アーティスト写真撮影=Jiro konami)
■リリース情報
『BOOTLEG』
発売日:2017年11月1日(水)
価格:ブート盤(初回限定 / CD+12inchアナログ盤ジャケット+アートイラスト+ポスター+ダミーレコード) ¥4,500+税
映像盤(初回限定 / CD+DVD)¥3,700+税
通常盤(CDのみ)¥3,000+税
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<収録内容>
<CD>(全形態共通)
01. 飛燕
02. LOSER
03. ピースサイン
04. 砂の惑星 ( + 初音ミク )
05. orion
06. かいじゅうのマーチ
07. Moonlight
08. 春雷
09. fogbound ( + 池田エライザ)
10. ナンバーナイン
11. 爱丽丝
12. Nighthawks
13. 打上花火
14. 灰色と青 ( + 菅田将暉)
<DVD>(映像盤 / 初回限定のみに収録)
1.「LOSER」MV
2.「orion」MV
3.「ピースサイン」MV
4.「ゆめくいしょうじょ」MV
■ライブ情報
『米津玄師 2017 TOUR / Fogbound』※終了分は割愛
2017年12月07日(木)宮城県 仙台サンプラザホール
2017年12月09日(土)福島県 郡山市民文化センター 大ホール
2017年12月14日(木)神奈川県 パシフィコ横浜国立大ホール
2017年12月16日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
2017年12月17日(日)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
2017年12月23日(土・祝)岡山県 岡山市民会館
2017年12月24日(日)広島県 上野学園ホール
『米津玄師 2018 LIVE / Fogbound』
2018年1月09日(火)東京都 日本武道館
2018年1月10日(水)東京都 日本武道館
■関連リンク
米津玄師 Official Site
米津玄師 Official Twitter