のんが音楽で表現したい“明るい怒り”とは? 「感情が激しく動いたときは書きたくなる」

 女優、創作アーティストとして活動している“のん”が、11月22日に1stシングル『スーパーヒーローになりたい』をリリースする。2017年夏に自身の音楽レーベル<KAIWA(RE)CORD>を設立。その後『WORLD HAPPINESS 2017』に出演、『オヒロメ・パックEP』(サディスティック・ミカ・バンドの「タイムマシンにおねがい」、RCサクセションの「I LIKE YOU」のカバーを収録。カセットテープ、アナログ盤にQRコードを付けた形態で発売)を発表するなど音楽活動に力を入れてきた彼女は、このシングルによって本格的なデビューを飾ることになる。

 今回のインタビューではシングル『スーパーヒーローになりたい』の制作を軸にしながら、彼女の音楽遍歴、アーティストとしての将来像などについてたっぷりと語ってもらった。(森朋之)

のんが「ギター」を選んだ理由

ーー11月22日に1stシングル『スーパーヒーローになりたい』がリリースされます。「ここから本格的なデビュー」という実感はありますか?

のん:そうですね! 10月に『オヒロメ・パックEP』という名前でカセットやアナログ盤を出したんですけど、「やっとデビューシングルなの!?」というツッコミどころもあって(笑)。すごく嬉しいし、スタートだなって感じてます。

ーーここまでの経緯も順番に聞いていきたいのですが、まず、自身の音楽レーベル<KAIWA(RE)CORD>を立ち上げようと思ったのはどうしてなんですか?

のん:自分で曲を作り始めたのがきっかけですね。1曲できたらメキメキ意欲が湧いてきて、その後もババババと曲を作って。そうしてるうちに「これを発表したい。音楽活動を本格的にやりたい」という気持ちが強くなってきたんです。もともと中学生のときにバンドを組んでいて、そのときからバンドが大好きだったので。

ーーそのときのパートは?

のん:ギターです。小6のときにちょっとやってたバンドはボーカルだったんですけど、中学のときにギターの担当になって。いちばん目立つと思ったんですよ、そのときは(笑)。女の子バンドで、大塚愛さんの曲とか、「学園天国」とか(映画)『NANA』の曲とかをコピーしてました。あとはWhiteberryとか。何度が“組んでは解散”を繰り返していて、3つめのバンドではGO!GO!7188のコピーをやって。そのバンドがすごくお気に入りでした。みんなで衣装を決めたりとかして。

ーーなるほど。いまもギターがいちばん好きですか?

のん:そうですね。他の楽器ができないっていうのもありますけど(笑)、レコーディングしていても「ギターの音!足したい!」と思ったりするので、好きなんですね……。私の声がキンキンしているから、細い弦の高い音に親近感を持つのかもしれない!(笑)

ーー今年の夏の『WORLD HAPPINESS 2017』でもギターを弾いてましたよね。のんさんにとって初めての大舞台だったわけですが、手応えはどうでした?

のん:『ワーハピ』に出演することが決まったときは「やべー!」って思いました(笑)。(高橋)幸宏さん、(鈴木)慶一さんをはじめ錚々たる方々がいらっしゃるし、嬉しさと同時に「どうしよう?」って。でも、ライブはめっちゃ楽しかったですね。すごく気持ち良かったです。

ーー恐竜をモチーフにした衣装もすごいインパクトでした。

のん:「タイムマシンにおねがい」の歌詞に出て来るものを詰め込んだんですよ。鹿鳴館みたいなドレスとか、ポンパドールの髪型とか。タップダンスという歌詞もあるんですけど、フレッド・アステアが靴に白いカバーをかけていたから「同じようにしましょう!」って。そうやってみんなで作っていけるのも楽しいですね。

ーー女子美術大学の学園祭ライブも、すごくエネルギッシュでした。ギターが似合いますよね、のんさん。

のん:あ、嬉しい! ギターのことをほめられるのがいちばん嬉しいです(笑)。バンド(若森さちこ/Dr 岩崎なおみ/Ba ヒグチケイ/Gtによる「のんシガレッツ」)もめちゃくちゃ楽しいので、できればこれからも同じメンバーでライブをやっていきたいですね。

ーーやっぱりバンドが好きなんですね。

のん:ふだんもバンドの音楽を聴くことが多いのかもしれないです。REBECCAを研究したり、バンドじゃないけどシンディ・ローパーが好きですね! かわいくてエネルギッシュな女性に憧れているので。あとはやっぱり忌野清志郎さんですね! 『ワーハピ』のときに「衣装と髪型が清志郎さんっぽいね」って言われて、調子に乗っちゃったのもあるけど、憧れます。

ーー清志郎さんの存在を知ったのはどんなきっかけだったんですか?

のん:「ひとつだけ」という曲で矢野顕子さんとコラボしている映像を観たのが最初ですね。ずっと矢野さんの研究をしていたんですけど、その後、清志郎さんの研究をはじめて。おうちでずっとマネしてました(笑)。

ーーではシングルの表題曲「スーパーヒーローになりたい」について。作詞作曲は高野寛さん。記念すべきデビュー曲ですが、どんな曲にしたいと思っていましたか?

のん:みんなと話しながら決めていきました。まず「派手な曲がいいね」って。基本はロックで、あまりハードになり過ぎず、ポップな感じも入れて。高野さんともいろんな話をしました。「(のんに)インタビューして、曲のイメージを固めていきたい」とのんのイメージも汲んでくださって、「REBECCAやシンディが好きです」とか「ロックがいいです」みたいなことをお話して。スタッフから「沢田研二さんの『TOKIO』みたいな感じもいいよね」っていう話も出てたんですよ。私は「TOKIO」を知らなかったんですけど、調べてみたら、パラシュートをなびかせて歌ってるのがめっちゃカッコよくて。

ーーいろんなアイデアが詰まっている曲なんですね。「スーパーヒーロ—になりたい」を聴いたときはどう感じました?

のん:「最高! 完璧!」と大興奮でした。「これがデビューシングルだ」って盛り上がったんですけど、最初は「真夜中の野生」というタイトルだったから、「これだと夜っぽいイメージになっちゃうね」という話になって。私はスーパーヒーローが好きだから、高野さんにお願いして、「スーパーヒーローになりたい」というタイトルを付けていただきました。

ーーのんさんにとってスーパーヒーローとは?

のん:いちばんはアイアンマンですね! 子供っぽくて、性格が良くないところが好きなんですよ。絶妙な人間としてのダメさ加減がツボです。私もこの仕事をやってなかったらと考えるとヒヤヒヤしちゃうとこがあるので、アイアンマンを見てると、それを笑い飛ばせてしかもカッコイイし元気になりますね。

ーーアイアンマンが理想?

のん:ダメなやつになりたいわけではないんですけど(笑)、おもしろおかしく、好き勝手にやってるところはいいなって思いますね。キャプテンアメリカみたいに使命を感じて行動しているのも素敵だけど、「好きだからやるぜ!」という感じに憧れるので。ツッコミどころがいっぱいあって、笑えるところも好きです。

ーー「スーパーヒーローになりたい」のボーカルからも「好きだから歌ってる」という意思が伝わってきました。上手く歌おうとしないで、とにかく思い切り歌う! というイメージもあって。

のん:ありがとうございます。思い切りの良さで歌っているところはありますね、確かに。じつはボーカルのレッスンも受けてるんですよ。SMOOTH ACEの重住ひろこさんに教えてもらっていて、節まわしや歌いまわしについて「こういう感じはどう?」と話し合ったりしました。でも、レコーディングのときは教えてもらったことを一旦忘れて、「自由に」って言われているんですよ。だから、元気な感じで解き放って歌ってます(笑)。高野さんからは「肩の力を抜いて歌って」と言ってもらいました。すごく素敵な曲になって嬉しいです。

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