『Beverly 1st JOURNEY「AWESOME」』

Beverly、桁外れの歌ヂカラで観客を圧倒 純粋な気持ちを届けた初のワンマンライブ

 ライブは後半戦に突入し、ここからさらに聴き応えのある曲が次々に。まず小室哲哉と浅倉大介による新ユニットのPANDORAがBeverlyをフィーチャーする形で録音し、『仮面ライダービルド』(テレビ朝日系)の主題歌として既に流れてもいるEDM調の「Be The One」。Beverlyのパワフルで突き抜けるようなハイトーンが最大限に活かされた曲であり、小室哲哉楽曲ということもあって、どこかglobeをイメージさせるところも。それにしても、とてつもない高音を少しの濁りも感じさせることなくパーンと弾けるように出せるBeverlyの歌ヂカラは、まさしく桁外れだ。一転して、次はピアノバラード「Just once again」をじっくり歌唱。それからファンキーな「Mama Said」へ。この曲の途中ではバンド全員のソロを挿みながらメンバー紹介がされたのだが、それぞれの演奏テクニックがまた並外れたもので、だからこそBeverlyも生き生きと歌えていたのだなと改めて思ったりもした。そしてダンサブルかつポジティブな「Never Ever」を歌い、アルバムの最終曲でもある「Sing my soul」で本編を締め。「Sing my soul」の終盤では「ここでみなさんの声を聴かせてください」と呼びかけ、〈My life〉〈Your life〉の部分を全員でシンガロング。その部分はゴスペルっぽくもあり、歌詞の通り“みんながいるから”踏み出せるのだという希望の光がそこに満ちているようにも感じられた。

 アンコールに応え、Beverlyのネームロゴが入った黒Tに着替えた彼女がステージに再登場。映画『ライオン・キング』の楽曲でエルトン・ジョン作曲による「Can You Feel The Love Tonight」をパワフルに堂々歌い上げたあと、続けて「Do That」に雪崩れ込んだ。「Do That」。この曲を自分が聴いたのはこのときが初めてだったのだが、実はこれ、2016年の配信限定EP『Tell Me Baby』に収録されていたもの。この6曲入りEPのうち4曲はアルバム『AWESOME』にも収録されたのだが、この「Do That」は未収録なのだ。だが、ファンキーなキーボードで始まるこの「Do That」がびっくりするくらいにかっこいい。ブリブリと唸るスラップベースとドラムによるリズムはぶっとく、プリセット音ではあるもののホーンが高らかに鳴り、最強のグルーヴがそこに生まれているのと同時に、メロディも都会的に洗練されている。さながら80年代の吉田美奈子の名曲(例えば「TOWN」)のようなファンキーさなのだが、何より驚いたのはBeverlyが実に気持ちよさそうにそのグルーヴに軽々とノって歌っていたことだ。そこに力みは微塵もなく、ボーカルそのものにグルーブが宿っているかのよう。抜群の歌唱力と異次元を思わせるハイトーンの威力は、ここまでのどの曲からも伝わってきていたが、こういうタイプの曲を、それこそ吉田美奈子を想起させるぐらいの声の弾力性と伸ばし方で軽々と、しかもソウルフルに歌えるということには本当に驚き、唸ってしまった。そしてこの曲でも彼女は「ここでもう一度みんなの声を聴かせてください」と言って、〈Do This〉〈Do That〉のフレーズを観客に歌わせたりも。個人的にはこのアルバム未収録曲「Do That」がこの日もっとも昂り、衝撃を受け、彼女の実力に改めて感じ入ってしまった場面だった。

 ピアノだけ残してほかのメンバーたちがステージを去ると、「最後まで本当にありがとうございました。また忘れられない思い出ができました」と言い、「これからもたくさんの人に私の歌を聴いてもらえるように頑張っていきます」と挨拶するBeverly。そして最後のもう1曲を歌う前にこう話した。「最後の曲は、みなさんと、そして世界中の人々に笑顔と平和が訪れますように……という気持ちで歌います」。そうして、ピアノが静かに鳴ってはいたものの、ほぼアカペラに近い形で「Amazing Grace」を熱唱。今こうして日本に来て活動し、こうして単独ライブをしていること。たくさんの人に支えられながら、ここで歌っていること。そうした様々なことへの感謝の気持ちがその曲の歌唱にこもっているようだった。

 こうしてBeverlyは初めてのワンマンライブで、カバーやアルバム未収録曲を含む全16曲を歌った。観る前はもっとハイエナジーなダンスポップ系の曲ばかりが目立つ構成のライブをイメージしていたのだが、そんなことはなく、歌われた曲は思っていた以上に多様だった。ヒップホップR&B的な曲があれば、ピアノバラードもあり、80年代や90年代的なアーバンポップもあれば、ロッキッシュな曲もあった。ファンキーな曲もあったし、EDM調もあったし、ソウルフルな曲もあったし、ゴスペル的な昂揚感を有した曲もあった。そのように様々なタイプの楽曲を歌いこなせる対応力と柔軟性のあるシンガーであることを、この日彼女は証明してみせた。それと、例えば「Tell Me Baby」のMVのように何人ものダンサーが登場して華やぎを見せる、そういう演出なんかもあるのではと予想していたのだが、そのような場面は一切なく、気持ちいいくらいにシンプルなステージングだった。あったのは、素晴らしいテクニックを備えたバンドメンバーたちの演奏と、Beverlyの歌だけ。Beverly自身、もちろん曲にノってカラダを弾ませたり揺らせたりはするものの、決められた振付のダンスをすることはなかった。どういうことかというと、つまり徹頭徹尾、彼女は歌を聴かせていたのだ。歌うことだけで勝負し、歌うことだけで圧倒し、歌うことだけで聴く人たちの心を揺さぶっていたということだ。エイベックスの歴代の女性ポップスターたちとの、そこは明確な差異であり、それこそがBeverly最大の個性かつ魅力。題の通り、このライブは彼女にとって記念すべき1st JOURNYであったわけだが、2nd、3rdと旅を重ねていくなかで、一体どこまでスケールアップしていくのか。予測ができないだけに楽しみでしょうがない。


(文=内本順一/写真=田中聖太郎)

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